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妹と旅する曰く付き異世界  作者: 智慧じゃこ
31/33

パランルーナを後に

ミミとの模擬戦を終え、店に帰ってくると何やら騒がしい。


「あのお金が無いと村の食べ物が、妹の薬が買えないんだ!拾いにいかせてくれ!」


「お、落ち着いて!もう結構な時間経ってるから流石に無いと思うよ…」


「そ、そんな…俺はどうすれば…くそ、なんでいきなり…完全に安定していたはずなのに、なんでだよ…」


冒険者に攻撃されている間、お金を守ってた理由はそういうことか。食べ物の調達と薬を買いにきて不自然に魔物化してしまったと…


「あ、ソウタさん!ほら、この人が助けてくれたんだよ。」


「あ、初めまして。助けてくれてありがとうございます。あのまま姿を見られていたら殺されてたかもしれません…本当に助かりました。」


「流石に子供を見捨てることは出来ないからね。それで…食べ物と薬代だっけ。これで足りるか?」


とりあえず大銀貨を3枚程渡す。村の人数も分からなければ薬代もどんなものか分からないのでテキトウだ。


「こ、こんなに…!どうして…貴方は、見たんですよね?オレの姿を。…その、怖くないんですか?」


確かに普通の人からしたらいつ魔物化して襲ってくるかも分からない人が居たら怖いと思うだろう。まぁ結衣の前でいきなり魔物化とかされたら焦って斬りかねないがそんな事にはならない気がする。こんなに余裕で居られるのはスキルのおかげかな?それに、妹を助ける為動く兄に悪いやつはいないはずだ、うん。


「大丈夫だ、俺はそこそこ戦えるからな!村までは帰れるか?」


「はい。人間の歩く速度だと6日はかかるけど、なんとかなるかと思う。途中で寄れるような街は無いから6日分の食料が必要だけど…」


6日か、結構遠いな。街や村は結構点々としてるんだな。人間の歩く速度でっていうんだから行きは魔物化して来たのだろうか。


「魔物の姿で行けばもっと速いってことか?」


「あの姿なら2日程で行けるんだけど、魔力の回復が遅いんだ。帰り分は残しておいたんだけどさっきので…」


「なるほど…人の姿で戦闘は出来るのか?外は魔物が出るだろ」


「…正直この姿だと普通の人間の子供と変わらないけど…なんとかなるさ。」


いやなんとかならないだろ…

よし…丁度いいか。この街でポイントを貯めるのは正直きつくなってきた。この子を護衛するついでに移動するか。突然だけど店ももう大丈夫だろう。


「よし、んじゃ俺らが街まで護衛しよう。」


「え!いいのか!?あ、いや、ありがたいけどそこまでしてもらうには…」


「食べ物運ぶんだろ?村の分って相当な量だと思うんだけど…俺なら【次元袋】もあるしな」


そもそもおかしい。1人で村の食料を買いに行かせるってどうなんだ…?それで着いたらいきなり魔物化の制御が出来なくなり冒険者に討伐されかかる。まるで最初から殺す為に送ったような気がしてならない。それが杞憂ならいいが万が一俺の考えが合っていたとすると、村に帰った後何されるか分からない。


「そういえば考えてなかった…分かった。報酬は払う!村に行けば何かあると思うし。」


「よし。それじゃ出発は明日の朝でいいか?」


「ああ!必要なもの買ってくるぜ!」


何回もこの街に来てるのか迷わず走っていった。すぐにツンツンした青髪が見えなくなる。魔法ってすごいな…あんなボロボロだったのにあそこまで回復するのか?イーヤが術者が優秀なのだろうか。イーヤに感謝だな


「とまぁそんな訳で…急だけど明日この街を出るよ。」


「うん、分かったよお兄ちゃん。下でお手伝いしてるシエラに伝えてくるねっ!」


スイスイと手慣れた感じで階段を降りてく結衣。目が見えないのに凄いな…もうこの家に慣れたのかな?旅は危険だしここに置いて行くという手もあるが…絶対ついてくるだろう。うん、というか俺も結衣とは一緒の方が安心する。


「か、覚悟はしてたけどもう行っちゃうんですね…寂しくなります…」


「あー、まぁ、うん。店もあるしまたそのうち戻ってくるよ。セーラには色々お世話になったね。ありがとう」


「い、いえいえ大したことはしてないですよ!…あ、最後だし今日は泊ってこうかな?なんて…」


「ああ、そうしてくといいよ。」


セーラに会えてよかった。もし会ってなかったらまだ野宿していたかもしれない…。まぁあれはあれで楽しかったけどな。


「シャロも元気でな。ってまぁ後1日あるし別れの挨拶は早いか。ははっ」


「え、あ…うん…いろいろ…色々迷惑かけたわね、ありがとうございました。」


「いやいや、ニナちゃん助けられて本当に良かったよ。」


「本当に、感謝してるの…そ、それと」


「それと?」

「ワワタシもとま、泊まっても・・・いい?」


「ああ、もちろんどうぞ。今更遠慮するなって。」


「うん・・・」


それからイーヤ、セラ、ルナにも説明をしてこれからも宜しく頼んでおいた。因みに3人はギルドに入れてある。商品に捺す印も複製して渡してあるので問題ない。

その後フェンリル?のラルシェルクがドタバタと戻って来て「は、運ぶの手伝って下さい…」と頭を下げて来た。考えなしに走り去ってったんだろうな・・・絶対戻ってくると思った。


時間が進まないという事でフルーツや生野菜もある程度買い、8割以上は日持ちする食べ物を購入した。ラルシェルクの妹に飲ませるという薬も買ったが、これ飲むのか・・・何種類もの薬草を混ぜてあるのかヘドロみたいな液体が小さい壺に入っている。到着まで10日もかかって大丈夫なのか聞いたが、昔から良く熱を出して寝込むのでストックしてたものがまだあるらしい。今回は予備を買いに来たってことね。


ラルシェルクも…もうラルシェでいいか。ラルシェも泊まる場所決まってないというので誘ったが…流石に人数が多く、うちの狭い2階じゃすし詰め状態で寝る事になってしまうのでお世話になったお礼するのも兼ねて温泉宿で泊まる事にした。


「お兄ちゃん、今日はお風呂…一緒に入りますか?」


なんで敬語なんですか結衣さん。


「み、皆と入っておいで。俺はラルシェと入るからさ」


「ええー!ニナ、そーたおにーちゃんと一緒が良かったで()…」


「な、なに言ってるのニナ。そういうのは…だめなのよ!」


「どうしてダメなんで()か?」


「どうしてって…だ、駄目なものは駄目なの。ほら行くよ」


「ええーー」


はあ…危なかった。流石の結衣も他の男が居たら一緒に入らないだろう。ナイスだラルシェ!持つべきものは男の仲間だな。

いや全然残念とか全く思ってない。本当だ。


入浴が終わると宿屋の女将さんが自ら夕飯を持ってきてくれた。もちろん1人で運べる訳がないので後ろに何人も浴衣のお姉さんお兄さんが一緒に来ている。


「蒼汰ちゃん本当に寂しいわぁ、必ずこの街にまた帰ってくるのよ?帰ってきたらここの宿使ってね!蒼汰ちゃんなら貴族用の部屋も使いたい放題だからね!?皆には内緒よ!!料金は負けないわよ!ただそうね、新作のお菓子とか差し入れしてくれたらタダで泊まれるかもしれないわね?なーんちゃってあっはっはっは!あ、姫様も頑張るんだよ!あっはっはっは!」


「な、なにを頑張るんですかっ!」


「何ってもう決まってるじゃないの――」


貴族用の部屋は広く、全員まとめて寝られる。なんか…色々な人が集まったもんだ。

妹の結衣。

目が見えないので大体俺の隣に居るが、この世界に来てから結構自由に動けてる気がする。実際あんまり外に連れまわして会いから分からないが…シエラもセーラも面倒がらずに手引きしてくれるのでとても嬉しい。勝手に俺が嬉しがってるけど結衣も嬉しそうだ。


エド族のシエラ

エルフとドワーフの混同種族(ハーフ)だ。魔法が得意なエルフと腕力が高いドワーフの良い所を受け継いでいる。ただ身長はドワーフ譲りでとても小さく俺のヘソぐらいまでしかない。魔法は絶賛練習中だ。魔法の前に精霊魔法が出来るようになってしまったらしく前回の戦いで精霊王を宿しちゃったとか言ってたな。まぁもう1回やれと言われても魔力が足りなくて出来ないみたいだ。


パランルーナの姫セーラ

最初から人当りの良い姫様だった。最初は少し緊張もしたが今では姫ということを忘れがちだ。たまにフラっと仕事から抜け出してきては店に来るようになった。執事のゼルさんに引きずられていく姿は結構見慣れたもんだ。


吸血鬼(ヴァンピール)のシャロ

最初は敵対していた相手だった。初めて会った時は銀髪の長い髪がキラキラしていて綺麗だと思ったんだよな。セーラと服を買って回ったらしく、ボロボロだった服は脱ぎ今はほとんど黒一色の膝下まで丈があるワンピースを着ている。髪の後ろに大きめの黒いリボンも付けていて可愛いお人形みたくなってる。セーラの趣味かな?買ってもらうのに文句も言えなかったのだろう…いや割と本人も気に入ってるようにも見えるけど。


吸血鬼(ヴァンピール)のニナちゃん

シャロの妹で好奇心が高い。結構なお姉ちゃんっ子だが、俺にもおにーちゃんと懐いてくれているのでもう一人妹が出来たみたいだ。ただずっと気になってる事がある。Tシャツにスカートっていう普通の服装なんだが、なんていうか…Tシャツが文字Tシャツっていうの?親分とこっちの文字でかかれたTシャツを着ている。昨日は闇の王だった。気にしたら負けかな…こっちにもあるんだね。


フェンリルのラルシェルク

まだ会ったばかりだが風呂で裸の付き合いをした仲だ。その時に聞いた話しだと村に住む結界を維持してくれている協会の司祭様以外は全員魔物化する力を持っているらしい。だが皆が皆自分の意思通りに力を操れるわけではないらしく、村を覆う結界の外に出て何日かすると暴走してしまうんだと司祭様に言われたらしい。その結界で無理に力を抑えてるため病に侵され易いと。こんな話ししてしまっていいのか尋ねたら「に…蒼汰さんなら大丈夫!」と言ってくれた。

因みに妹は黒いドラゴンらしい。かっこいいな妹…


奴隷のルナ

始めて会ったのは隷白館(れいはくかん)でだな。黄身と白身が逆転した卵…なかなか面白かった。ルナは言われた通り従順に仕事をこなしてくれるいい子だ。ご飯を作るときは必ず横で手伝いにくる。そして一生懸命メモを取ってた。ただ身長が低いから台を移動させながら料理してるので忙しそうだ。台はシエラ用とルナ用で2つある。


奴隷のイーヤ

喋りかけるとオドオドしてしまうが、喋らなければ完璧な子だ。この子には俺が旅に出た後、期を見計らって新作を出してもらうようにレシピを渡してある。最初はそんな大事な役無理ですと言ってたが、君しかいないんだと頼み込んだ。引き受けてくれてよかった。後は自分でオリジナルの新作とか思いついたら作ってもいいよと言ってある。店に並べるかは味とコスト次第だ。


奴隷のセラ

基本的に声が大きいのでレジ兼でショーケース前に立ってもらってる事が多い。呼び込みがちょっと八百屋のおっちゃんみたいな「へーい!安いよ安いよ!」という感じになってるけど気にしない。

ここに来る前はトシュ串焼きの屋台の店番として使われてたと言ってたのでその時のクセなのだろう


自分をいれて10人だ。賑やかになったもんだ・・・明日からは一気に半分ほど減ってしまうから寂しくなるな・・・


「――違いますよ!ソウタさん違いますからね!これは、その!」


「ん?ごめん聞いてなかった。」


「え、ええっと・・・そう、ですか」


明日でこの街ともお別れかと感傷に浸って居たらセーラと女将さんの会話を聞いてなかった。自分の事話してたっぽい?のに申し訳ない。


「お兄ちゃんはもー・・・」


なんで結衣に呆れられてるんだ・・・?ま、まぁ大事な事だったら後でもう一度聞いておこう。


久しぶりに食べた旅館の料理が以前より豪華だったのは女将さんなりの見送り術だったのかもしれない。ありがとう女将さん。



朝、旅館を出てルナ、イーヤ、セラを送り届け暫くの別れを告げた後北門へ歩いて居るとニナちゃんが聞いてきた。


「あれ?そーたおにーちゃんどこか行くで()か?」


「ん…?何も聞いてないのか?」


チラっとシャロを見ると「あっ」という顔をして明後日の方向へ顔を背ける。忘れてたな・・・?


「えーっと俺等はちょっと目的があって旅をしてるんだ。ここには長居しすぎたし別件も出来て丁度いいから今日この街を発つんだよ。」


「そうだったんで()か!これから冒険で()ね!楽しみで()!」


「うん…ん…?ニナちゃんは行かない…よ?」


「え?」


うん…行かない…よな?


「ええええぇぇぇぇ!!行きま()よ?行きま()よねおねーちゃん!」


「も、もう、駄目よ。我が儘言っちゃ。ここでそーたおに…天使蒼汰とはお別れなの。」


「え、えええ!なんでで()か!?そーたおにーちゃんのこと嫌いになっちゃったで()か!?ニナは好きで()よ!一緒に行きたいで()よおぉぉぉ」


ガッシリと腰に抱き着かれて泣いてしまった。ここまで懐いてくれるのは正直嬉しい。だがうーんどうしたものか。


「べ、別に嫌いになった訳じゃなくて!これ以上は迷惑だから。ワタシ達が居たらまた悪魔族が来てしまうかもしれないし。帰る方法も探さないと。だから、ね?」


…確かに何も考えてなかったが悪魔族が…というよりそれを命令してる奴らがまたシャロやニナちゃんの前に現れる可能性があるのか。それに帰る方法俺らも無いくね…?あの神、コニラ様と連絡が取れないと俺ら一生この世界に居る事になるがあーまぁそれも悪くないか。


俺らと一緒に居た方が守れるし、帰る方法も近道になるかもしれない。なによりシャロは強いし居てくれれば心強いな。


「別に迷惑ではないよ。それと帰る方法は確実ではないけど心当たりがあるな…2人も一緒に来るか?」


「え、わ、ワタシは、だってあなたを「行くで()ーーー!」」


俺の勘違いでなければ嬉しそうにするも、一度俺を襲ったという事実は消えない訳で簡単には吹っ切れないのかもしれない。俺は別に気にしてないんだけどね。シャロは真面目なんだな。もしかしたら断ってくるかもしれないしなんて言って慰めるか考えてたけど…必要ないかも


「な?ニナちゃんは来たいってさ。」


「う…うん。そ、それじゃ、よろしくお願いします。」


よしよし、旅は賑やかな方がいいしな。


「やったで()ー!」


「やったね、ニナちゃん!」


「やりました、ゆいちゃん!」


友達が一緒っていうのは楽しいし頼もしい事もある。何が起こるか分からない異世界では不安もあるけど、それは取り除けるものだ。こうして皆が笑顔で居るとなんとかなりそうな気が…


「…どうしたセーラ」


「私も……行きたかったよおおおお!」


声を大にして空に向かって叫び始めたセーラを何事かと周りの街の住人が視線を寄越す。そりゃ見るよ…この街の姫様が突然叫び出したら何事かと思うわな


「なら着いてこいって言いたい所だけど、セーラは姫様なんだし街の事や仕事も・・・」


「理屈じゃないの!ワタシも皆とワイワイしながら旅とかしてみたかった・・・はぁ・・・でも分かってる。大丈夫。ワタシが姫じゃなかったらソウタさんは付いてこいって言ってくれてたんだし、それだけでいい、うん、お仕事頑張ります!」


「そ、そうか。帰ってきたら真っ先にセーラの所へ行くよ。」


「うん!お土産忘れずにね!甘いの!」


「はいよ。…あ、ミミにもよろしく言っといて。ゼルさんにもね!」


「ソウタ兄は大変だな…」


ラルシェから生暖かい目で見られてる気がする。ってお前も兄呼ばわりかい。まあいいけどさ

さて、ここからは歩きだ。

徒歩で6日は遠いなぁ、馬車を借りれば早くなるかと思ったけど、こちらの馬は走るために出来てないらしく余計遅くなる可能性があるんだと。まぁ確かに遅かったな…。なのでやはり徒歩だ。ラルシェもそこまで急いでないみたいだしゆっくり行こう。いざとなれば創造で創ればいいだろう。


それじゃ、出発だ。






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