表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
妹と旅する曰く付き異世界  作者: 智慧じゃこ
29/33

図書館

シャロ達が夕飯を食べに来てから5日程経った。

その日からチラチラお店の前でシャロ達を見かけるようになり、夕飯に誘うと「さ、誘ってくれるなら断る訳にもいかないわね」とか「ニ、ニナが喜ぶからお邪魔するわ」とか言いながら食べに来る。


一度気付かないふりをしてみたら涙目になりトボトボと帰ろうとしていたが、ニナちゃんが我慢できずに「そーたーおにーちゃーん」とこっちまで走って来た。シャロはハッとした感じで「こ、こら、ニナはしょうがないわねえ」とか言いながらこちらに歩いて来た時は笑ってしまった。


お米の時にシエラと結衣と俺は前に作った専用の茶碗で食べていたのだが、その話しをするとシャロとニナちゃんが羨ましそうにしていたので作ってあげた。大したものじゃないんだけどな。


シャロは「吸血鬼(ヴァンピール)だからコウモリの絵かな」と言ってたのでその通りにする。ニナちゃんは俺の茶碗を見て、「そーたおにーちゃんとおねーちゃんの絵がいいで()!」と言ってきた。希望通り作ってはみたが…今ならシエラと結衣の気持ちが分かる。人の茶碗に自分の顔が入ってるって恥ずかしいな・・・ニナちゃんが喜んでたからそれでいいか。


最初はぎこちなかったが今では結衣も楽しそうにお喋りしている。また結衣に同じ歳くらいの友達が出来たみたいだし、これだけでも異世界に来て良かったと思う。結衣友達居なかったからな・・・一応普通の学校に在籍してる事になってるけど一度も行ってないし。毎日のようにプリントを届けてくれる子に申し訳ないと思い家に上がるか尋ねたら、それは結衣ちゃんと友達になれた時までにとっておきますと言われたな。いい子だった。


えーと何の話しだっけ…あ、そうだ。結衣から後から聞いたがシャロ達の世界では50日で1歳になるんだとか。【鑑定】で84歳とか出た時はびっくりだったがそういうことなのね。他にもシャロ達の世界に日本人が居たとも言ってたっけ。戦ってる途中に【雷桜(ライザクラ)】という技を使ってきたときに、ん?とは思ったんだよな。技も桜の花びら見たいなのが飛んできたし。もしかしたらその日本人が編み出した技なのかもしれない。


しかしこの鑑定(スキル)いまいちだよな・・・シャロ達もなぜか【鑑定】出来ないし。【鑑定】有り無しで大分戦いに影響が出るだろうしなぁ。やっぱり事前にどんな技があるか知れるのは大きい。


「おにー、さん!どうで、すか?」


っと、もう準備が終わったみたいだ。

今は日が昇り始めた所の早朝。そろそろ俺無しでも店が回せるかどうか試そうと思い今日は何も手伝っていない。とりあえず味のほうは大丈夫そうだな。


「うん、大丈夫そうだね。えらいぞー」


「えへへっ」


褒めるといつも尻尾がブンブンするが、ここは調理場なので尻尾は服の中に固定させてある。ちょっと窮屈そうだが衛生面もあるし我慢してもらおう。


まだ生地は足りないみたいでセラさんがオラオラいいながらかき混ぜている。

イーヤさんはドーナッツを揚げながら次のドーナッツの形を整えている。


性格が全く違う3人だが喧嘩する事もなく仲良くやってくれている。イジメとかの心配もなさそうで良かった。ルナが前の場所で立場があまり良さそうじゃなかったから奴隷の中でも上下関係があるのが普通なのかもしれないと心配だったんだが杞憂だったようだ。


特に危なげもなく仕事をこなしてくれているので口を挟むことなく時間が流れる。するとドアがノックされる音が微かに聞こえた。もうちょっと強く叩いてくれないと聞き逃す所だったぞ?


「はいよー今開ける」


「あ、おはようございます。…ちょ、ちょっと早すぎたかな?」


やっぱりセーラだったか。今日は図書館に案内してもらおうと呼んでいたんだが、予定では開店後1時間様子みた頃という話しだった。


「おはよう。まぁ、めっちゃ早いな?…ドーナッツ目当て?」


「ち、ち、ちがうよ!もう、すぐそんな扱いするんだからー」


今日が楽しみ過ぎて早く来ちゃった!とかじゃ流石にないよなぁただ図書館に案内して貰うだけだし。本当にただ早く来すぎちゃっただけか、休日は早起きして少しでも長く休みを満喫したいタイプなのかもしれない。


「違うのか?まぁでも折角だし食べてく?」


「それは…も、もらいます」


そんな顔を赤くして恥ずかしがらずとも分かってる。まぁ食べられるなら食べるよな。


「結衣達が上でまだ寝てるからここで立ち食いになっちゃうけどね。」


昨日は会話が弾み皆夜遅くまで起きてたから皆勤だったシエラも今日はまだ寝てる。シャロとニナちゃんも寝ちゃったからそのままだ。


「そこは全然お気になさらず大丈夫です」


俺は朝食作りをするため広い調理場の一部でお握りでも作っておく。起きたら好きな時に各自食べられるし冷めても美味しい。具は…ランダムで食べてみてのお楽しみって事で。


セーラも含めその場5人で朝食をとった後開店し、セーラが手伝うと言い始めたので売り子をさせてみた。あのお客さんの驚き用は面白かったなぁ。中にはついに姫様が嫁に行ってしまわれたとか言い始める人も居て誤解を解くのに大変だった。


途中でシャロも起きて来たのでセーラに変わってもらい売り子をしてもらうと、結構な数の人がシャロの事を知っていた様でかなり話し掛けられてた。シャロはというと、しどろもどろになりながらも笑みを浮かべている。10日間あっちこっちで謝ってた甲斐があったね。


いい時間になったのでそろそろ図書館に向かう。魔法の事を調べようと思って行くんだが、その事をシャロに話すと興味を湧いたようで一緒に行くと言いはじめた。もちろん断る理由もないので一緒に行くことにする。セーラの様子がおかしかった気がするけど気のせいだろう。


「それじゃ店の事頼むね」


「はい、いってらっしゃい、です!」「まかせてくだせー!」「お気をつけて行ってらっしゃいませ」


ルナ達に見送られながら3人で図書館へ向かう。図書館は貴族街の方にあるらしく、うちの店とは真逆なので20分くらい歩いた。

図書館の受付の子に入場料3人分の銀貨3枚を払い中に入る。

中は読むスペースと本棚が別れており、10人程の先客が静かに本を読んでいる。個室もあったので少し狭いがそこで教わりながら読む事にする。


とりあえず手に取ったのは魔法の書初級編。


「先に言っておくが…俺は世間の事にとことん疎い。当たり前の事を聞くかもしれないが教えてほしい。」


「はい。シエラちゃんから聞いてますよっ。一人で何でも出来ちゃいそうなのに何も知らなくて、色々聞かれるから頼りにされてるみたいで嬉しいって…あ、これ言っちゃいけなかったんだった・・・いまのなしで!」


「あ、ああ。それじゃ頼みます。」


「魔法の事ならワタシも教えられそうね。」


「おお、シャロも頼りにしてるよ。」


「ま、まぁ、この世界とワタシの世界じゃ色々違うからどうか分からないケド・・・」


えーまずは何々・・・


<魔法を使う前に、魔力を操作することを覚えなくてはなりません。その魔力を操作するには魔力を感じなければなりません。自力で感じられないようなら魔法は諦めましょう。>


おおいっいきなり諦めましょうって…まぁこれが魔力だぞーって説明できないか。俺がシエラにやったみたいに【魔力操作】で無理やり動かしてコレって出来ればいいけど、他人の魔力を動かすのはかなりの高等技術みたいだ。レベルⅩじゃなかったら出来なかったかもしれない。


・習得スキル【魔力操作】

<魔力を感じ操作が出来れば最低1年魔力操作の練習をしましょう。それではまた1年後に。>


誰がこの本書いたんだ・・・まぁいいか。次だ。次は魔法の基本中の基本か。あーファイアーアローとかかな?初級の魔法だって聞いたな


・習得スキル【火属性操作】【水属性操作】【土属性操作】【風属性操作】【雷属性操作】

<体内で魔力操作したものを外でも操作出来るようにしましょう。自分から出た魔力を切り離さないように操作し、水、火、土、風、雷の中から得意なものと混じり合わせ操作します。それが各属性操作のスキルとなります。上級者になると自分の魔力そのものを属性変換して使える様になり、その場にその属性のものがなくとも作り出し、操作できます。>


まじか。まだ魔法にはいかなかった。属性操作か…


「シャロは属性操作は出来るのか?」


「もちろん出来るわよ。ほら」


バチチっと音を立てながら電気で出来た玉がふよふよ動き回り、バチンと消えた。


「ワタシが出来るのは【稲妻操作】と【水流操作】ね。水のほうはあまり得意じゃない。」


「ほお…この世界だと【雷属性操作】【水属性操作】みたいだな」


「ふーん…」


まぁどっちでも同じか。


---既存スキル【火属性操作】を500Pで会得しますか?---

---既存スキル【水属性操作】を500Pで会得しますか?---

---既存スキル【風属性操作】を500Pで会得しますか?---

---既存スキル【土属性操作】を500Pで会得しますか?---

---既存スキル【雷属性操作】を500Pで会得しますか?---

---既存スキル【光属性操作】を1,000Pで会得しますか?---

---既存スキル【闇属性操作】を1,000Pで会得しますか?---


めっちゃ出て来た。全部取得っと。

試しに土を出して人形を作ってみるか。…おおお魔力が土になった。なるほど…土が自分の手足の様に動かせるな、スキルレベルが高いからかな?…っとセーラ人形完成。全裸の。


「初めてでコレって…流石ちきゅ…天使蒼汰ね。」


「どうしまし…ってなんですかこれえ!」


隣で別の本を読ん出たセーラがセーラ人形(全裸)に気付き慌てて破壊…しようとしたけど出来ずに手で隠す。


「はははっまぁ土なんだから大丈夫だって。」


「そーいう問題じゃないの!もう…」


集中力が切れると人形は崩れ、そのまま消えてしまった。「ああっ!私が!」と自分と瓜二つの人形が消えてしまいセーラが少しショックを受けている。また今度作って上げよう。…服は複雑だから全裸かもしれないけどな…?


その後読み進めたが、簡単な魔法と詠唱が載っていて、ファイアーアローなら詠唱完了後に出る炎の矢を魔力操作で形を固め放つ。そんな感じに書いてあったが俺にはあんまり必要なさそうだ。


中級や上級の本は無いみたいだったので関係ありそうな本を探す。すると気になるタイトルを見つける。


「魔法と詠唱魔法…?」


「あ、それかぁ…あまり参考にならないかも。というか良く分からないのよね」


ふむ…少し読んでみるか。ええと…?


魔法に技名は本来無かった。あったのは各属性操作のみ。その属性を操作し形を変えさせ、相手にぶつける。ただそれだけだったんだが、それが難しく人間は魔法をうまく使いこなせなかった。だが遥か昔、人間は魔物と比べるととてつもなく弱く、魔物との戦いで徐々に人間は数を減らしていった。それを視かねた何者かが1冊の本を落としていった。それには魔法の新しい使い方が書いてあり、その使い方というのが『詠唱』というもの。


ただ詠むだけで強い力を行使できる。もちろん人により適正があったので片っ端から読んで使えるものを探す必要があったが、それに見合う力は手に入った。そこから人は魔物とまともに戦えるようになり、人の住処と魔物の住処で別れ落ち着くようになった。


その本を落とした何者かは結局誰かは分からなかったのだが、人は勝手に智の神として崇めたのは別の話し。


落ち着くと問題になるのがその本を誰が所有するかである。魔物との戦いが落ち着いたのに今度は人同士での戦争が起こった。


-----

---

-


本の消失により戦争は終わった。

本の中身は結局半分も使いこなせない内に無くなってしまった。結果的には良かったのかもしれない。


私は思う。この本を落とした者はただ魔法の可能性を知ってほしかったのではないかと。詠唱は無くとも魔法は使える。恐らく最初にあった各属性操作の魔法は無限の可能性を秘めているのではないかと。


私は試した。一番簡単な魔法で試した。しかし私も詠唱に頼り切ってきた人間の1人であり属性操作のレベルは低かったのでそう簡単にはいかなかったが、私の適正である火の初級魔法、ファイアーアローを火属性操作のみで完成させた。


やはり私の考えは間違えてはいないのだと思う。だが爺の戯言だと話しをまともに聞く者はいなかった。だから書き残す事にする。


属性操作を一生かけてレベルを上げてくれるような輩が現れ、この爺は正しかったんだと証明してくれる人が現れる事を祈って。



…すごい事が書かれてるな。途中関係なさそうな所は飛ばしちゃったけどコレ各属性操作だけで全ての魔法が大体使えるって事だよね。

慣れたら【創造】で創った魔法も出来るのだろうか?…いや出来る気がしないわ。経験を得て上がるスキルレベルが最初からMAXなんだもんな…思う通りは動くけど何をどうしたらどうなるかはやってみないと分からん。


収穫はあったな。

各属性操作で本当に色々な魔法が使えるなら…いや本来なら逆か。その本を落とした人は極めれば魔法でこんな事が出来る!っていうのを教えたかったんだよなきっと。でもそんな練習しなくても詠唱すれば出てくるからそれに頼ってしまったと。


…魔法の名前って本を落としたっていう人物が考えたって事か。神か普通の人間なのかは分からないけど頑張ったなぁ…普通の人間が詠唱に魔力を構築する力を宿すなんて無理か?やっぱり神なのかな…まさかここの世界の神…コニラじゃないよな。あいつ今頃どうしてんだろ


属性操作を使いこなせれば【創造】のポイントの節約にもなるし頑張ってみよう。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ