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妹と旅する曰く付き異世界  作者: 智慧じゃこ
27/33

その後数日間④結衣視点1

6/29 15:00に前話でミスがあったため修正と800文字程加筆しました。

掃除が終わり宿を出る所からです。申し訳ありません。

きゅーんきゅーんと鳥が鳴く。この世界のスズメ的存在の鳥さんが朝の目覚ましです。


あぁ…朝だぁ…まだ眠い…おふとんが私を離してくれない、だめ、起きなきゃ。…よし、今起きる。絶対起きる…起きるよぉ…さん…にー……い…ち………すやぁzzz

ハッ!危ない危ない。…寝てないよ?ほんとだよ。


日本の朝はスズメがちゅんちゅん鳴いているけど、この世界の鳥はきゅーんきゅーんという甲高い鳴き声をよく聞きます。お兄ちゃんがスズメって朝しか鳴き声聞こえないけど朝しか鳴かないのかな?っていう話題を振って来た時があったけど、明るい内は結構鳴いてるよって私は答えた。


不思議に思ってお兄ちゃんが調べたら、朝は生活音が少ないから聞こえやすいだけなんだって。その後にやっぱり結衣は耳がいいなって言ってたけど私はこれが普通だからよくわかんない。


だから何っていうわけじゃないけど…ただきゅーんきゅーんって鳴き声は結構大きいから、普通に昼間もお兄ちゃん聞こえてるかなぁってふと思っただけ。

…起きる前に時間稼ぎしてるわけじゃないよ?


「うーーーっんはぁっ」


起き上がると部屋に誰の気配も感じない。最近人の気配がすごく分かるようになってきたんだよね。心の目が開いたのかも…すごい。あ、ウサちゃんは居るよ。


下の階から微かに声が聞こえる。耳を床に当てたら聞こえるかな?ぺとぉ

すると下の人達の声が良く聞こえる。


「んー違う違う、ふるって落とすんじゃなくて叩いて落としたほうが綺麗にかかるよ。」


「こ、こうかな?」


「こう、ですか?」


「おーそうそう。うまいね。売る用だからギルド印も忘れずに捺してな。」


「分か、りました!」


「んーやっぱり大判焼きよりドーナッツ作るのは多少時間かかるな。とりあえず3種類100個ずつくらい行けるか。」


どうやら皆でドーナッツ作りをしてるみたい……楽しそう。ドーナッツ100個が3種類で300個。一体どんな光景が広がっているんだろう…じゃなくて、私も何か手伝えないかなー?


ウサちゃんを定位置の頭にのせ…て行こうと思ったけど食品を扱うなら連れてっちゃだめか。靴を履いて石で出来た螺旋階段を下りていく。

1階は土足なんです。靴を脱ぐ場所は2階だけだからちょっと不思議な気分。


「おはよう、結衣。」「おはよー」「おはよう、ございます!」「おはざっす!」「お、おはようございます」


「おはよう、お兄ちゃん。おはよう皆さん!」


お兄ちゃん、シエラ、ルナちゃん、セラさん、イーヤさんの順番であいさつをしてくれる。

私だけ寝坊助だったみたいでちょっと恥ずかしい…料理作る人って皆早起きだよね。いつもはシエラもこちら側なのに…うらぎりものーー!


どうしてシエラも早起きなのか聞いてみたら、ドーナッツが気に入っちゃって自分でも作れるようになりたかったらしい。私も目が治ったら家の台所でお兄ちゃんと…むふふ楽しみ。


でもその時はシエラはどうするんだろう…あ、どうするもなにも私達が地球から来てていつか帰るっていうの知らないんだったっけ。タイミングを見計らってシエラには話したいな…。


それから開店するまでひたすらかき混ぜ係りを全うしました。腕がもうだめ…これが腕が棒になるっていうやつだね!


そしてやっと開店です。その為シャッターをお兄ちゃんが開けます。そうすると


「いぇぇえええええい!」「待ってましたああ!」「三羽の野兎(アグニスティア)バンザーイ!」「きゃー!ソウタさーん!」


すごいです、ものすごい人数の声が聞こえます。突発に開店した日を入れたら3日目なのに…どんどん皆お兄ちゃんの虜になっていきます。…一部お兄ちゃんのファンみたいな人も混じってる…モテモテだねお兄ちゃん?


「ありがとうございました、また来てください!」


何人目のお客さんでしょうか。このお客さんもまた悩んでいます。何を悩んでいるかというと、そう、ドーナッツです。合計300個しか作れなかったのでお1人様2つまでとなってます。3種類あるのに2つまで。これは悩むでしょう。因みにおすすめは?って聞かれたらポン・タ・いちごみるくと答えます。これは不動です!



「こんにっちは!!おばちゃん来ちゃったよー寝ても覚めても大判焼きが頭から離れなくて。ああ、美味しすぎるのよもー私蒼汰ちゃんに胃袋がっちり掴まれちゃったわぁ…お嫁に行きたい!あ、私既に結婚してましたあっはっはっは!」


「あ、女将さんですね?今日もありがとです!」


あの温泉付き宿の女将さんです。結構出歩いて居る気がするけどお店は大丈夫なのかな?


「あーら結衣ちゃんいつも頑張ってるわねぇ、こんな料理の美味しいお兄ちゃん持って幸せじゃなぁい?」


「はい!幸せですっ!」


「いいわねえ今の内にいっぱい甘えておくのよ!今にいい人がお兄ちゃんに出来たら構ってもらえなくなるからねえ…もううちの主人なんか若い頃私にべたべたで大変だったわぁ!あっはっはっは!」


「はい…お兄ちゃん優しくてモテモテなので、すぐにでも彼女が出来ちゃいそうです。あはは」


お兄ちゃんに彼女かぁ…

前にごはん食べてる時に様子がおかしかったから「どうかしたの?」って聞いたら「ラブレターの返事に困っててさ」っていうもんだからびっくりして私の方が挙動不審になっちゃったんだよね…あれからどうなったのか怖くて暫く聞けなかった。結局悩んでたのはどう断るかって事だったみたい。


「どうして断るの?」って聞くと、「今は結衣が一番大事だから」って言ってくれて嬉しかった半面申し訳なさもあった…もし目が治ってなんでも一人で出来るようになったら、お兄ちゃんは彼女作るのかな…



「女将さんいつもお世話になってるので1個余分にサービスしておきます。後昨日は買えてなかったドーナッツもまだありますので、ご要望のアンドーナツと結衣おすすめのポン・タ・イチゴミルクいれておきますね」


「あら蒼汰ちゃんありがとねぇ!今から楽しみだわぁドーナッツ!後、また宿に泊まり来なさい?いい部屋用意して待ってるからねえ!」


「ありがとうございます。あそこの温泉はいいお湯……だったのでまた行きたいと思ってたんですよね!」


ちょっとボーっとしてたらお兄ちゃんが女将さんに気付いて前に出て来てた。

温泉の話ししてたけど、いいお湯~で暫く間があった…きっとシエラと一緒に入った時の事思い出してたんだ!もう…あの日何もなければその夜は私とお兄ちゃんが一緒にお風呂予定だったのになぁ…残念。


そして少しするとドーナッツ完売です。一番早く無くなったのはポン・タ・イチゴミルクです!おすすめいっぱいしたのでそうなるよね。


「お客様、すいません、ここで新商品のドーナッツ完売です。」


「そんなああああああああああ」「イヤアアアアアアア」「どうして、どうしてもう少し早く来なかったの私!!」」


どうやら150人の人を捌き終わったみたい。数えてた訳じゃないよ?皆ドーナッツ2つずつ買っていくから分かったの。ここまでで2時間ぐらいだと思うけどまだ列は途切れてなさそう。


ドーナッツを売り切れた瞬間辺りが悲しみに包まれました。でも大判焼きを買った後、明日はもっと早く来るわ!等皆気合を入れて帰っていきます。


お店をお兄ちゃんが貰った時、この通りは結構静かでだったのに今はあっちこっちから人の声が飛び交っています。お兄ちゃんがお店を開いたらこうです…大繁盛です!流石私のお兄ちゃんです!だから私も気合を入れて看板娘になります。お兄ちゃんはすごく助かってると言ってくれるけど、私は何もしてないに等しいです。

本当に目が治ったらもっと色々お手伝いしたいな…



「お世話になっております。セーラお嬢様の執事、ゼルでございます。」


あ、ゼルさんだ。執事って身分の高い人に仕える人…だよね。すごいなぁ、お兄ちゃんも偉くなったら執事さんがつくのかな?


お兄ちゃんの家に来て間もない頃、優しいお兄ちゃんにどう接していいか分からない時に執事の真似事をしてくれたなぁ…「今日から私は貴方の執事です。なんでもお申し付けください、結衣姫」って。


私はちょっとテンパっちゃって「じゃ、じゃあ足を拭いて下さい」とか意味わからないお願いをしちゃったんだよね…お兄ちゃんは言われるがまま足拭き始めるし、くすぐったいし。その状況がおかしくてつい笑っちゃった。


そうすると執事モードのお兄ちゃんは「お嬢様は笑顔が素敵ですね」とかいうから恥ずかしかったのを覚えてる…でもその日から少しずつちゃんと話せるようになって、お兄ちゃんを好きになっていって…も、もちろん兄妹としてね!


「あ、ゼルさんこんにちは。今日はセーラは一緒じゃないんですね」


「お嬢様なら書類に追われて机で仕事…といいますか、勉強中ですね。」


「勉強ですか?」


「はい。姫と言ってもまだ若いので右も左も分からない状態なんですよ。なので目下勉強中です。」


「なるほど…セーラも大変だな」


「それで、お嬢様に勉強を頑張ってもらう為の餌…ん"ん"っ勉強終わった後労う為に蒼汰様のお店の物を買いに寄らせて頂きました。ドーナッツは些か来るのが遅かったみたいですね」


「ああー…えっと、実は知り合い様に少し残してあるんです。これをどうぞ。」


「なんと、ありがとうございます。それでは大判焼きも3種類2個ずるお願い致します。」


お兄ちゃんが知り合いが来るたび奥から出てきます。よく気が付く店長です。


ゼルさんの話しを聞いてるとお姫様も大変だなぁ…って思います。家でゆっくり紅茶を飲んでるイメージしかありませんでした。でもお仕事もお勉強もお兄ちゃん印の食べ物が報酬だったら頑張れそうかも。頑張って!



あれ、急に影が出てきました。ずっと日差しが当たって少し暑かったですけど雲が出て来たのかなぁ?


「ちわああっす!!!あに…店主はいらっしゃいますか!!!」


わわっ、曇ってきたのかと思ったら違いました。この人は確か…アンサムって人の声です。大きい人らしいのでそれで私がこの人の影にすっぽり収まったのでしょう。

怪我が治ってまたお兄ちゃんに挑みに来たのかな…お客さん居るのにい


「はいはいっと……あーっと…アンサム…さん?」


お兄ちゃんが出て来たっ

お兄ちゃんから頼むから暴れないでくれっていう想いが漂ってる気がする。


「…!兄貴!あの時はすいませんでした!兄貴を…兄貴と呼ばせて下さい!!」


ほええっと…?お兄ちゃんの弟になりたいってこと?兄弟になるの?私とお兄ちゃんが兄妹になったように…?ええ、どうしよう。私が先にお兄ちゃんの妹になったから私より後に来たアンサムさんは私にとって弟になるのかな?


「…はい?いやいやいや、兄貴って…っていうかもう呼んでるじゃん…」


「お願いします!!俺改心したんす。兄貴ならミーアちゃんも…ミーアちゃんも…っくうぅぅ」


「いやいきなり泣かれ始めても困るけど!?それにミーアさんお前の者じゃないだろ…とりあえず今は並んでくれてる後ろの客にも迷惑になるから…ってあれ?」


「あ、どど、どうも、こんにちは…」「おにーちゃん!こんにちは!」


あれ、この声はシャロちゃんとニナちゃんだ。

ニナちゃんはやっぱり私のお兄ちゃんのことおにーちゃんって呼んでる。私のお兄ちゃんなのに!…なんて。妹が出来たみたいでちょっと嬉しい。ニナちゃんの喋り方可愛いよねっ!


「おーこんにちは。ニナちゃんすっかり元気になったようで良かったな」


「はいで()!そーたおにーちゃんのおかげで()!おにーちゃんの血のおかげで……じゅるり」


「…おい。それでここに並んだって事は大判焼き買いに来たのか?」


「…え?…あ、そ、そうよ!えっと1つ銅貨2枚ね。えっと…あ…」


「おねーちゃん私達お金ないで()よ?」


「そ、そうだったわね」


「お前ら何しに来たんだ…?」


あはは、お金ないのに並んだのかな?…もしかして会いに来ただけとかかな?色々あった後だもんね。

2人ともお兄ちゃんにすごく感謝してたし。


「そ、それじゃ私たちはこれで…」「これで!」


「…あー待て。これ持ってけ。」


ガサっと紙袋を渡してる音がする。きっと中身は…うん、お兄ちゃん優しっ


「あ…これドーナッツ…」


「ああ、知り合いにあったら渡そうかと思って別にとっておいたんだ。」


「わー!どーなっつで()か!今日の夜ご飯で()ね!」


「いやいや夜ご飯って…そういやお金がないってまさかあの時の…はぁ。今日陽が落ちたら店閉めるから、そしたらまたうちにこい。夕飯作ってやるから」


「ぇ…!い、いいの?でも私なんか居たら迷惑じゃ…」


「やったー!そーたおにーちゃんと一緒にごはんで()!えへへ」


「ほら、ニナちゃんも喜んでるし。」


「う、うん。それじゃ後で…また。…ぇへへ」


おー今日の夕ご飯は賑やかになりそうです!

何作るのかな?お兄ちゃんはお客さんが来るときはごはんを少し豪華にするのでちょっと楽しみです。そしてシャロちゃんから零れた微かな笑み聞き取りましたよ。お兄ちゃんには聞こえてないだろうけど喜んでるみたい。


あ…また話し出来なかった…。最初の一言って考えちゃうと緊張しちゃって話し掛けるタイミングが掴めないんだよね…


「俺も行っていいんですかい兄貴!?」


「お前まだ居たのか。ほらお前にもドーナッツやるからミーアさんに届けてやれ」


「おお!?こ、これが噂の…つい寝過ごして買えないと思ってたのに流石兄貴っす!あざまっす!早速届けてきあす!!」


ああ、なんかすごい弟が出来てしまいました。あれ、結局あの人は弟でいいのかな?良く分かんない。あの人が走ると地面が微かに振動してる気がする…弟が出来るならもう少し可愛い弟がいいな…



少し長くなってしまったので次のページも結衣視点です。

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