その後数日間③シャロ視点
6/29 14:57 文章を途中800文字程加筆しました。
「ごめんなさい」「ごめんなたい」
これで何度目か分からない。けど自分達はこの街の人に多大な迷惑を掛けてしまった。楽しいはずのお祭りもめちゃくちゃにしてしまい、本当に申し訳なくて歩いて人に会えば頭を下げとそれを繰り返している。こんなので許されるとは思っていなかったけど、この街の人は皆優しく、それが余計に心苦しい。
「あら、貴方達が噂の姉妹かしら?やーねーいいのよ別に。もうむしろ?こんな退屈な日常に刺激を与えてくれてありがとうって感じよもう。おばちゃんも遠巻きにしか見えなかったけどね、お嬢ちゃん空飛んでたわよね!?あれどーなってるのもーすんごいわぁおばちゃんも空飛びながら宿の宣伝とか出来れば天使が経営する宿屋とか言われちゃったりして?あむり?もう天使って年齢じゃないわよねぇあっはっはっは!それ以前にこんなおデブじゃ浮かないかい?あっはっはっはもういやだわぁ!」
「あ、い、いや、そんなことは…あ、な、何かお手伝い出来る事があれば手伝わせて下さいっ」「く、くだたいっ」
す、すごい人の所に来てしまった…見たところ宿泊施設みたい。そ、そういえばここに天使蒼汰達が止まってるって聞いたんだけど…あ、これはたまたまなの。順番に回って来て、次がここのお店だっただけで天使蒼汰が居るから来たとかそういうわけではないの。
現金なもので、あの人がいるかもと思うと心が浮きだってしまう。
いえ、特に深い意味はないの。ただ私達を助けてくれた人にもう一度お礼を言いたいだけなの。ニナも会いたいって言ってたからね。そう、ニナが会いたいの。
お客さんや店員さんが通り過ぎるとつい視線をそちらにやってしまい、キョロキョロする形になってしまう。
「あら、誰かお探しなのかしら?」
「い、いや。すいません大丈夫です」
「そう?それじゃ折角だからお風呂場の掃除を頼もうかしら?若い子が居てくれた方がお店も活気が出るしね!よろしくね!」
良く喋る女将さんにおふろばという所の掃除を頼まれてその場所にやってくる。
「なにここ…」
「大きいでつねー何をするところでございましょお?」
真ん中にドン!と大きい岩の桶みたいなのがあり、向かって右側には人間の大人サイズぐらいの浅い凹みがある。
左側に四角いマークの中に青い点々が描かれたマークがありそこに魔力を注げばお湯がでるから洗い終わったらそれで流してと言われた。
正直何に使う場所なのか全然分からないけどとにかく掃除すればいいのね。
従業員の服に着替え、1時間半掛けブラシでセッセと2人で磨いていくと磨けば磨く程綺麗になって行くのが分かり、楽しくなってくる。
…ふふ。この自我を持つブリュナークの槍から逃れられると思わないことね、この穢れた存在共!全て闇に葬ってくれるわ!…ふふ、あーっはっはっはっはっは!…あっと危ない。駄目よ。この人格は封印したの。ふう…
「さて、そろそろ流そっか。」
「あい!」
「えっと魔力をか…えいっ……あれ?何も起こらないもっとかな?えいやっ!」
ガラガラッとそこで女将さんが現れる。
「あ、お嬢ちゃん達、水出場が1ヶ所ちょっと反応悪い所があ――」
バッシャアアアアアアアアアアアン
「るから気を付けてねって言おうと思ったけど遅かったみたいね、あっはっはっは!」
女将さん……ニナもびしょびしょになってるけど、何が面白かったのかけたけた笑っている。宿の服で良かった…普段着だったら乾かなかったなぁ。
ニナもセーラ姫に連れまわされて買ってもらった服を気に入ったみたいで着てる間はニコニコしてるし着てないときは眺めてニコニコしてる。それがびしょびしょになってたら泣いてたかも?
お風呂掃除が終わり、着替えて女将さんの所に戻るとお礼に大判焼きをくれた。…最初食べた時は美味しくてびっくりしたけどこれがお手伝いすると必ずと言っていいほどお礼が大判焼きなのよね。どういうことなんだろ?
「今、これ流行りの食べ物なのよー!月青祭で賞をとった食べ物なんだけどね、もう食べられないかと残念に思ってたんだけどこの街で店を出すことにしたんですって!因みに中身は餡子よ!……ああ今日はオープン記念の新商品が出てるって噂を聞いて買いにいったんだけど数量限定らしくってねえ!おばちゃん行った時にはもう売り切れ…悔しかったわぁ。…明日は早起きしなきゃね!!」
結構人気なのね。…あれ、餡子…?確かおじいちゃんが良く餡子が入ったまんじう?が食べたいってよく言ってたのよね…天使蒼汰ってもしかして…。
「で、その人物が貴方達がお探しの蒼汰ちゃん達よ。西門に近い所にあるんだけど列が出来てるから行けばわかると思うわ。」
「へぇ………え!?いえ別に探してるわけじゃ」
「あっはっはっは!頑張んなさいよーおばちゃん応援してるから」
ビシッと親指をダブルで立てて何事かを応援されてしまった。
もう…おばちゃんも意地悪な人だなぁ……西門…か。そこら辺はそうね、まだ行ってないわね。別にあの人達が居るとかは関係ないけどそっちのほうにも行っておかないとね、うん。
「あ、でも今日はもう泊まっていきなさい?もちろんタダでいいわよー」
「ぁ、ありがとうございます。」「ありがとうでつ!」
良かった。私はいいけどニナを外で寝かせるのが心苦しかったのよね。ニナは平気そうにしてるけど…やっぱりだめ。…と言っても明日からまた泊る場所ないのだけどね…。
部屋に案内され、特に何もすることなくボーっと過ごした。
すると扉がノックされおばちゃんが入ってくる。
「さあ脱いで!温泉に入るわよ!!」
―――ここって、体を清める場所だったんだ…
女将さんが部屋に押し掛けて来て、ここへ連行されあっという間に脱がされ先ほど私達が掃除した場所に連れてこられる。
「まだ入浴時間じゃないからねぇ、貸し切りだよ!こんな大きいお風呂毎日独り占め出来るなんてわたしゃいい仕事に就けたよーあっはっはっは!」
おばちゃんが石の上に座って布みたいなもので体をゴシゴシしてる。体を綺麗にするものらしい。おばちゃんの見様見真似で私達も身体を擦る。…ちょっと痛い。
「ぷふふっ」
「ぇ…?」
突然おばちゃんが笑いだすのでびっくりする。何か間違ってたのかな…
「いやねえ、さっき魔力注ぎ過ぎて頭から大量にお湯をかぶったでしょー?蒼汰ちゃんも同じようなことしてたのよーそれを思い出しちゃってね。初めての利用者には説明したほうがいいんじゃないか?って言われちゃったのよぉ。魔力が強すぎると天井から滝になるなんて知らないわよぉ。あっはっは!そしたらお嬢ちゃんも同じような事してるから思い出したら笑えてきちゃってねえ!」
…天使蒼汰も同じような事してたんだ………ふふっ、いい話題が出来ました。あ、いや別に楽しくお喋りしたいとかそういうのはないのだけどね?
その後入った温泉というものはとても心が落ち着くものだったわ、お湯に全身が浸かるなんて経験したことなかったけど、いいものね。ニナも顔がとろけてた。
翌朝、起きたらいつもの場所におばちゃんは居なかった。早起きして天使蒼汰の店に行くと言ってたから向かったのかな?
代わりにいる受付のおじさんにお世話になりましたと告げて宿を後にする。
…よし、ちょっと挨拶をするだけ。やっぱりあれだけお世話になって一度お礼を言ってはいさよならじゃどうかと思うの。だから天使蒼汰のお店がある西門に向かおう、うん。
宿がある南のほうから中央の湖経由で西門の方へ向かっていくと途中でガラの悪い冒険者に絡まれる。
「おぉ?白髪の可愛いお嬢ちゃん2人だけで街を歩くなんてちょっと不用心じゃないかい?どれ、Bランクの冒険者様が護衛をしてあげよう。……ああ、お礼?いいのいいの、終わった後ちょーーっとばかしお願いを聞いてくれたらそれだけでいいからさ、げっへっへっへっへ」
…変なのが来た。喋ってるリーダーみたいなのが1人と後ろに2人程笑ってるだけの人が居て合計3人。朝から元気ねって思ったら酒気を漂わせている。朝までお酒を飲んでいたみたい。
不愉快だわ…なんぱ?とかいうやつなの?おじい様がなんぱには気を付けるんじゃぞって言ってたの。
男が一方的に話し掛けてどこかに誘われたらそれはなんぱだからぶっ殺せって。
「ん、別にいらないわ」
「ああん?冒険者様の言う事は素直に聞いておいたほうがいいぞ?」
撃退方法は確か自分から襲ったらダメだから、まず相手から掛かってこさせるように挑発する事。レベルが低いなんぱ相手なら思う通り行かなかっただけで襲いかかってくるから楽って言ってたの。
「自分より弱い人を雇ってもしょうがないでしょ…?」
「……いいだろう。Bランク冒険者をなめるなよ」
うん、上手くいったわ。後は躱して電撃を少し走らせれば終わりね。
相手は剣を抜き斬りかかろうとしてくる。……すごい遅い。天使蒼汰の剣…あれは刀ね。おじい様の部屋にもあったわ。あの天使蒼汰の剣速に比べたら止まって見える。
そろそろ避けようと思っていた所に横からさらに違う声が掛けられる。
「おい、なにしてんだ」
その声が聞こえた瞬間に剣が止まったので声がした方を向くと自分の2倍くらいありそうな身長のデカい男が立っていた。
この人も後ろに2人子分みたいなのを侍らしている。流行ってるのかな?
「な、あ、アンサム…さん」
「聞いてるか?なにしてんだって言ったんだ。今なら拳骨一発で許してやる」
「い、いや、これは少しきょういぶばべっ」
言い切る前に大男の拳骨が突き刺さった…手が相手の頭と同じくらいある。同じ人間でもこんなに差がでるのね、面白い。
「お前らー連れてけ。」
「「へい!」」
倒れた男を後ろの二人がどこかに運んで行ってしまった。勾留所にでも運んでいったのかな
「あー……ここの冒険者どもがすまんな、悪い奴らばかりじゃないんだが…君らなら余裕で倒せただろうけど、騒ぎにするのはよくない…しな。」
「あ、えーと…ありがとうございます…?」
…えっともう行っていいのかな?早く天使蒼汰に会いた…じゃなくて挨拶をしないといけないのに。
「あーまた絡まれても面倒だろう、俺もこっちの店に用があるから付いて行こう。」
「あ、はい…。」
つ、ついてくるんだ…まぁいいけど。
会話が無いまま西側へ向かう。すれ違う人々から香ばしい匂いが漂って来くる。
その人達は満足そうに紙袋を抱え、時には止まって中身を確認しては味を思い出してなのか頬を緩めたりしている。その紙袋を持っているのは女性8割男性2割といったところ。
「おーばんやきと、どーなっつの匂いでつね!」
「うん、そうだね。」
途中そんな一言を交わしてから2分程歩くと人が端に並んでるのが見えてくる。
うわー、すごい行列。これがもしかして天使蒼汰のお店…?お店が見えないけどあってる…よね。
「もしかして君達もここが目的か?女ってのはどうしてこう甘いもんが好きなんだ…?」
「さ、さあ……なんででしょうね」
「おいしーからでつよ!」
うん、まぁ美味しいよね。
いつか私の世界で女付き合いに疲れたって呟いてた吸血鬼が言ってたっけ。
今流行りのものを知っていてやったことがある人が偉い。より美味しいお菓子を食べた事がある人が偉いみたいな風潮があって出遅れたり食べたことないとかになるともうネチネチ自慢されて面倒くさいって。
この世界の人もそんな女性の世界があったりするのかな…もしあるのであれば、このお菓子は食べないわけにはいかないでしょうね。……そんな大人の女性にはなりたくないよ。…ふふっ、あるとしたら…
なに…?あの禁断の果実を食べたい…?ふふ、運河の底に沈んだままの方が幸せということもあるのよ。光満ちた美味しさに天使は己の使命を忘れ堕天するまで食という欲に抗う事は出来なかった。
頑固たる魂の契約を持たざる者は皆同じ運命と変貌を遂げるであろう。
うん、こんな感じなら…ってダメダメ!暇すぎてあの私が出てきてしまったわ。
あぁ…後どのくらい並んでいればいいんだろう…。
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