七
最後なわけだけれども、本当に聞きたいのかしら。七不思議を全て知ってしまうと不幸になるなんて、言われているのに。
――そういえば、なぜわざわざ不幸になる何て言葉を使っているのかしらね。
七不思議の幾つかは、命にかかわるものが大半だって言うのに、これだけはただ不幸になるとだけ。
まるで、死ぬよりも怖いことがあるみたいな言い方じゃない?
あるのかしらね、死ぬよりも怖いこと。
例えば、自分の立場がいつの間にかいじめられっ子になっている。
あるいは、延々と上達することのない演奏を続けるとか。
それとも、見知った見知らぬ世界に行ってしまう?
水の中に引きづられ、彼らと一体になって永劫を過ごすのか。
ああ、正体不明の怪物に付きまとわれて。
異世界に、取り残されてしまったりするのかもしれないわ。
それとも、最後の最後だからそれ以上があるのかもしれないわね。
ふふっ、なんだと思う?
死ぬよりも恐ろしいこと。
仮に、あるとするならそれは……彼らに、七不思議になることじゃないかしら。
ねぇ、七不思議ってどうやって生まれるのか知っている?
死者が出た、不幸な事故があった。理由としては十分よね。
でも、ただ不幸な出来事というだけで、どうしてここまで語り継がれるのかな。
鏡なんて、簡単なことで割れて使えなくなってしまうし、授業中に出歩く人はそうそうにいないでしょ。
でも、いつだって七不思議は七つ、揃っている。
誰かが作り、誰もが編纂し、誰かの元へ。
その誰かって、七不思議を全て知った人がなるんだと思うの。
だって、嫌でしょう。
いつまでも、誰もが忘れるその日まで延々と語られ続け、忌み嫌われ続けるの。
面白半分で確かめに来た人たちを恐怖に陥れ、また誰かに怖がられる。
ただ、それだけの存在になってしまうんじゃないかしら。
誰かが飽きる、その時まで。
まぁ、確証はないのだけれどね。
七不思議を全て知るとどうなるか……私は七不思議の一員になってしまうと思っている。でも、違うかもしれないわ。
もしかしたら、何もないかもしれない。
ただ不幸になると言っても、色々あるでしょう。
本当に何が起きるのか、予想もつかないわ。
それでもいいというのなら、話して上げる。七不思議、最後の一つを。
と言っても、もう気がついているかもしれないけどね。
ねぇ、あなた。
そう。あなたよ。パソコンか、それとも携帯かは判別つかないけれども、私の話を聞いているあなた。
あなたの側にいる誰かは、本当に昨日までと同じ人?
誰も居ないはずなのに、人の気配を感じたことは?
昨日までと同じ場所に、違和感を感じたことはない?
水中から伸びる手が、写真に写ったことはある?
例えば視界の片隅に、言い知れぬナニカがいた事はあるかしら?
それとも、存在しないはずの出入口を見つけた?
ああ、それと。
そろそろ、見えていないふりは止めたらどうかしら。
それでは皆様、背後にお気をつけて。




