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ゆきひめ ~六花天成譚詩曲~  作者: いのれん
Sixth Part. 国から国へ
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178. ルリフィーネの旅の楽日

 今まで圧倒されていたサラマンドラは、ルリフィーネの力の奔流を見ると再び赤黒い波動を身に纏わせ、赤い瞳をぎらつかせながら、突撃してくる使用人を自身の拳で粉砕しようとする!


 だがルリフィーネは、その拳を真っ向から受け止めたのだ!

 平常時のサラマンドラを完膚なきまで叩きのめしたフィレですら屈した力に、耐えて見せたのだ!


「はああああ!!!!」

「うおおおおおお!!!!」

 そして二人の強大な力の押し合いが始まった。

 押し合う力は行き場を失い、何者も近寄れないエネルギーとなって地面を砕き、周囲の瓦礫を吹き飛ばして粉微塵にしていく。


 しかし、その押し合いも大した間をおかずに均衡が崩れる。

 なんと、ルリフィーネが力の押し合いに打ち勝ったのだ。

 サラマンドラはじりじりと体ごと押されて、後方へ下がっていく。


「やあああっ!!」

「ぬううッッ!!!」

 ルリフィーネはサラマンドラの手を一切離さず、そのまま気合を入れて一度だけ強く押す。

 すると、今までどんな攻撃も通さなかったサラマンドラの皮膚の鱗にひびが入り、そこから赤黒い血が噴き出した。


 だが、この程度で怯むサラマンドラではない。

 彼はルリフィーネの手を振り払うと、まだ無事なもう片方の手を後方へ引いてぐっと強く握り、瞬く間に赤黒い光を集中させていき。


「奥義、阿修羅滅界撃ッッ!!!!」

 ルリフィーネの懐へとその力を解き放つ。

 赤黒い光は、純白の衣装を身に纏った使用人を一瞬で飲み込み、彼女に永遠の暗黒の淵へと誘う!


「ふんっ!!」

 機械の力を解放した使用人は、サラマンドラの最高の攻撃を至近距離で受けた。

 本来ならば肉を引き裂き、骨はバラバラに砕かれるはずだった。


 だが、それでもルリフィーネはまるで傷ついていなかった。

 彼女はなんと、先の戦いでアルパがやったように、手足を上手く使って暴虐な攻撃を全て受け流したのだ!


「グオオオォオオオオオッッッ!!!!」

「やああああああ!!!」

 そして再び、二人の熾烈な攻防が始まる。

 互いが拳と足を繰り出しあい、それらがぶつかる。

 衝突すると同時にコロシアム全体が揺れ、赤黒い波動と白銀の波動が交互にばら撒かれ、周囲の瓦礫を粉々にし吹き飛ばし、逃げ遅れた観客は吹き飛ばされないように、その場へとしゃがみこんでしまう。


 無数の打ち合いを終えた二人は、互いに拳を押し合う力比べが再び始まる。

 ルリフィーネは力を籠めて、もう一度サラマンドラの拳を粉砕しようと、石畳が砕ける程に強く踏み込み拳に力を入れようとした。


「ムゥンッッ!!!」

 だが、サラマンドラはそれを予想していた。

 彼は力を籠めた拳を後方へ引き、ルリフィーネの体勢が崩れると同時に彼女の腕をしっかりと握り締め、周囲の空気が振動する程の雄叫びをあげながら、彼女の体を持ち上げてそのまま叩きつけようとしたのだ。


「やあっ!」

「グウゥゥッッッ!」

 あまりにも勢いがあり、握られた腕はとても離す事が出来なかったルリフィーネは、叩きつけられる瞬間に受身を取ってどうにか致命傷は免れる。

 だが、あまりにも強大な力だったせいで、叩きつけられた部分の石畳は粉々に砕けてしまった。


 それでもルリフィーネは一切怯まず、今まで握られた腕を振り解き、体を横にしたままサラマンドラの足を握り締め、彼を同様に持ち上げて地面へと叩きつけたのだ。


 そして両者とも体が地面と平行になると、サラマンドラは体を捻らせてルリフィーネの手から逃れ、二人は再び一定の間合いを開けてにらみ合う。


「はあああああっ!!!」

「ウオオオオオオオオッッ!!!」

 だが、そんな静かな時間もすぐに破られてしまう。

 二人は大声で叫ぶと、互いの間合いへと入り、今度は防御を一切無視した戦いを始める。

 お互いはお互いの魂の一撃を繰り出し、双方とも攻撃をもろに受けたが、それでも二人の勢いは一切緩まなかった。


「ルリ……フィーネ……ッッ!!」

「どうか見ていてください。これが私の答えですっ!!」

 圧倒的な力が激しくぶつかり合う最中、無数の攻撃を受けて再び傷だらけの状態となったルリフィーネは、サラマンドラの拳を受けながして隙を作り出すと、利き手を後ろに引き、腕が震える程に強く拳を握り石畳が割れる位に強く地面を蹴って、サラマンドラへと真っ直ぐ拳を突き出し……。


「グゥッ……」

「究極奥義、神螺万掌・天昇撃・浄瑠璃!! はあああああああ!!!!!」

 全身から強烈に迸る光を、拳に集中させてサラマンドラの体へと叩き込んだ!

 並みの成人男性ですら子供に見えるくらいに体格のいい彼は、ルリフィーネの一撃を受け続けて体が浮いていく。


「な、なんだあれ。光か?」

「どうなってる?」

「ま、まるで流れ星だ……」

 この時、動作があまりにも速すぎるせいで、観客にはルリフィーネの拳が見えなかった。

 その代わりに彼らの目に映ったのは、まるで夜空を流れる星のような、存在感のある光の塊がサラマンドラの体へとぶつかる様子だった。


 光はぶつかり、はじけずに留まる。

 留まった白銀の輝きは、やがてサラマンドラの体を包み込み、コロシアム中央を丸ごと飲み込んでいき、彼が中心となってドーム状に膨れていく。


「制裁完了。どうか、やすらかにお眠り下さい」

 そして、全身全霊を籠めた怒涛の一撃を繰り出したルリフィーネは、そう一言だけ呟くと同時に膨張した光は爆発し、高熱と高圧の風と閃光を周囲にばらまいた。


 その目が眩む程の光は、ルリフィーネが凶暴な獣を討ち取った証でもあった。



 ――やがて光はおさまり、白色に満ちた風景は元の色の取り戻していく。


「お、終わったのか?」

「一体何が……?」

「俺は夢でも見ていたのか?」

 コロシアム内部は、個対個による戦いとは思えない程に荒れていた。

 熾烈な戦いの傍観者は、今まで起きた出来事を信じられず、ただその場で呆然と立ち尽くしていた。


 だが、今までの戦いは決して虚構なんかではなかった。

 コロシアム中央には、死闘の果てに精根尽きた、二人の闘士が倒れていたからだ。


「……」

 コロシアムに吹きぬける風が、彼女の鼻をくすぐり、前髪を軽くなびかせる。

 しかし、彼女はもう小指一本を動かす気力すら残されておらず、呆然と青く澄み切った空を見ていた。


「……」

 彼からは、溺れるくらいの血が流れ出る。

 気候は穏やかで、日差しも心地よいはずなのに、彼の体はみるみると冷えていった。


 二人は無言だったし、お互いを見る事も出来なかった。


 それでも、二人の思いは通っていた。

 ただし、何を交わしたのかは、当人達しか解らなかった……。



 ――数日後。


 火竜の国の高官らは、今回の戦いを無効試合とした。

 それは、大会の覇者であるフィレが、真の覇王に打ちのめされて二度と立ち上がる事は無かったからだった。

 国王として日の浅い彼女の慕う者は、多く無かった。

 だが彼女は一国の主として、そして一人の強者として手厚く葬られた。


 彼女の国葬の後、近い内に新たに大会を開催する事を民衆に宣言すると、あんな出来事があったにも関わらず盛り上がりをみせた。


 一方その頃、戦いを生き残った二人の闘士は……。

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