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ゆきひめ ~六花天成譚詩曲~  作者: いのれん
Rurifine Part. 傍から側へ、そして……
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164. パラレル・ディストピア ~母への謁見~

 五番目の扉を抜け、ひたすら道なりに走っていった先には、大きく開けた場所があった。


「これが我々機械を生み出し、統率しているマザーだ」

 そしてその部屋の中心には、建物と同じ質感を持つ、円柱状の機械が鎮座していた。

 その巨大な機械からは、まるで生物と呼吸しているかの如く、今まで聞いた事のない重低音を繰り返している。


「これが……ね」

「すごい……」

 この世界にとっては、神にも等しい存在との対面である。

 ユキ達は、ただただ圧倒されており、今まで平静を保っていたサクヤも例外では無かった。


「さあ、行こう。ここまで来れば我々の目的成就は近い」

 アイザックによって、感動している場合ではないと思い我に帰った一行は、その言葉に対して強く頷くと、マザーへと歩み寄っていく。


「おかえりなさい。ルリフィーネ」

 今まで一定の音しか出ていなかったマザーの一部分が四角く光り、そこから成熟した女性の姿が映し出されると、映し出された女性の身なりに似合った声で、ルリフィーネを歓迎する。

「うわっ、喋った!?」

 まさかそんな言動をするとは想像もしていなかったのか、ミズカは体を大きくびくりとさせて驚き声をあげてしまう。


「よく戻ってきてくれましたね」

「お母様……」

 ルリフィーネの生みの親との対面。

 見た目は誰の予想もつかず、人ですら無い。

 それでも彼女にとっては感慨深い場面であったのか、胸に軽く握った拳を当てて少し瞳を潤ませる。


解放する(リクエストオブ・)黒桜天女ディスペア・ネヴァモア・の真理(トゥルース)。桜花絢爛! チェリー・ブロッサム装威解放!」

 そんな感動の対面の時、サクヤは突然解放の言葉を発する。

 言い終えると同時に、今まで来ていた村娘のワンピースは、東方の国の衣装デザインを模した大きく袖の広がった赤いドレスへと変化し、毛先が赤色にグラデーションがかかる長く艶やかな黒髪になった。


 そして変身を終えるとサクヤは、何の躊躇いも無く別の世界から銃を呼び出すと……。

「異世界の方々、そしてアイザック。ルリフィーネを連れてきてくれた事を感謝しま―――」

 マザーの一同を歓迎する言葉を遮るかのように、幾度も”彼女”めがけて発砲した。

 弾丸が当たった衝撃のせいか、映し出された女性の姿が一瞬歪み、マザーは喋らなくなってしまう。


「どうしたのサクヤ!?」

「な、なによ……。いきなり何なのよあんた!」

 突然の変身、突然の攻撃。

 それは共に行動してきたユキやルリフィーネ、ミズカ、くろ、マリネの誰も予想しておらず、全員が何故こんな突拍子も無い行動に移ったのかを問いただす。


「茶番は終わりよ。いい加減正体を現したらどう?」

 だがサクヤは彼女らの驚きを無視し、銃口をマザーへと向けたまま冷たく言い放った。


「……まさか気づいている者が居るとは、想定外です」

 映し出された女性は、今までと変わらない表情と口調で再び話しかける。

 だが、先ほどと比べてどこか暗くて冷たい雰囲気がしていた。


「ユキ、さっさと変身なさい。ミズカ、くろはいつでも魔術で攻撃が出来る様にしなさい」

「なっ、私に指図するなんて――」

「いいからさっさとなさい」

 マザーの言っている意味も、サクヤの言っている意味も解らなかった。

 何かもが急展開かつ突発的であった事と、憎い相手からの指示が癪に障ったミズカが、顔を真っ赤にして反論しようとしたが、それすらもサクヤの言葉によって封殺されてしまった。


解放する(リリースオブ・)白雪女王の(ホワイトクイーン・)真髄エッセンス! 雪花繚乱! スノーフィリア聖装解放!」

 勿論ユキも、サクヤとマザーのやり取りの意味は解らなかった。

 しかし、彼女の鬼気迫る声によって多少迷いながらも解放の言葉を紡ぎ、可憐な女王の姿へと変身すると……。


「変身したけど……。サクヤ、一体どういう事なの?」

 どうしてこのような行動に至ったのかを尋ねた。


「覚悟が出来たなら、右を見なさい」

 この間も、サクヤはマザーから一切目を離さず、警戒を怠らない。

 先ほどの急な発砲や、全員への指示。

 まだ頭が理解しきれていないまま、他の者はサクヤの言うとおり右の方を向く。


 最初は保護色かつ、他の機械の物影に隠れていたせいか解らなかった。

 だが目を凝らしていくにつれて、ある異変に気づく。


「な、なにこれ……」

 そこには、機械仕掛けの無数の腕が伸びており、その先端全てに凶器が取り付けられていた。

 もしもあのままマザーの言動に集中していたら、気づかず全員が切り刻まれていたかもしれない。

 そう考えた一行は、顔から血の気が消えてしまった。


「目新しいものを見続けて、感覚が麻痺していたみたいね」

「うーん……、こんなのに気づかないとか馬鹿すぎる私……」

 迂闊すぎた、隙だらけだった行動をとり続け、サクヤに言われるまで生命の危機だった事に気づかなかったミズカとマリネは、ばつが悪そうにしながら自身の軽率な行動を反省した。


「あなたの本当の目的は何? ここまで私達を”素通り”させてきた真意はどこに?」

 それでもサクヤは、彼女らの謝罪や稚拙な行動に興味は無く、マザーがどうしてこんな事をしたのかを、銃を構えたまま問い続けた。


「あなたには無駄だと思っている事も、私達には必要なのよ。巨大爆弾を撃ち込まれて焼却されるのが嫌ならば話なさい」

「ちょ、ちょっとサクヤ!」

「……解りました。それではお話しましょう」

 変身したサクヤの能力は、スノーフィリア達の世界では到底再現不能な構造の武器を呼び出す。

 金属製の弾丸を連射出来る銃や、街一つを火の海に変える爆弾。

 それらは高等魔術でしか再現出来ないような現象を、彼女はいとも容易く行える道具を召喚する。


 サクヤの言葉に、嘘偽りが無いと悟ったのか。

 映像の中のマザーは、目を閉じて少し考えた後、ゆっくりと口を開いた。

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