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ゆきひめ ~六花天成譚詩曲~  作者: いのれん
Rurifine Part. 傍から側へ、そして……
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154. 未知との遭遇 ~ルリフィーネの失踪編⑨~

 打つ手もないまま、謎の世界の住人によって最期を迎えようとしていた時だった。


 マリネはカバンの中に入っていた特製の爆弾を取り出し、相手へと投げつける。

 すると爆弾は炸裂して眩い光と衝撃、煙を無尽蔵に周囲へとばらまいた。


「逃げるわよ!」

 煙と光が謎の物体とユキらの視界を遮った時にすかさずそう叫ぶと、くろとミズカは言葉に従い、マリネはおろおろとしているユキの手を引きその場からの脱出を試みる。



「はぁっ……、はぁっ……」

「どうやら、上手く逃げ切れたみたいね」

 爆弾と、普段は大して体を動かさない人らの懸命な走りによって、一行はどうにか謎の街の入り口まで逃げる事に成功した。

 全員例外なく息を切らせており、普段は涼しい顔のくろですら、表情こそ変えないが肩で呼吸をしている。


「助かったよマリネ~」

「お礼は、街の食堂で昼食一回分ね?」

「へいへい~」

 命の恩人への礼がそこまで値段も高くない食事というやりとりが、傍から見てたユキの気持ちを少しだけ和ませた。


「で、どうするの? 入れないよ?」

「ミズカの魔術が使えなかったのが気になるわね……」

「雷の魔術も無理だった」

「くろもなの? もーどうなってるのここ……」

 だが、どんなに冗談を言っても現状は変わらない。

 魔術のエキスパート達が、手も足も出なかったという現実は、全員に重く圧し掛かる。

 くろは襲われた街を見据え、ミズカは先のとんがった帽子を被ったまま側頭部に手を当てて髪をくしゃくしゃと掻き毟った。


「んー……」

 そんな時、マリネはカバンの中から針と目盛りの付いた道具を取り出すと……。

「やだ、ここってエーテルほとんど無いじゃない。そりゃあ魔術使えないわけよ」

 エーテルの濃度を測る器具に取り付けられた針が、左側からぴくりとも動かない事に対して驚いた。


「ええぇ……、それじゃあ私達が居ても何も役に立たないじゃない!」

 魔術は、空気中に存在する精神伝達物質エーテルを利用して、様々な事象を発現させる。

 当然、エーテルが無ければ魔術を使う事が出来ない。


「でも、マリネの爆弾は使えたのに?」

 あの窮地の中、マリネが投げた爆弾は魔術を利用した物である事をユキは知っており、エーテルが存在しない中で何故爆弾だけが効果を発したのかを問いかける。


「ユキちゃん。あれはエーテルも同時に散布してるからね、だから効果が出たんだと思う」

「ほおほお……」

 そんな疑問にマリネは、なるべく解りやすく答えると、ユキは感嘆の声をあげながら頷いた。


「はぁ、魔術も碌に使えないし、これ以上は無理だね」

 ユキ達の居る世界なら、これだけの人材が居れば余程の事が無ければ道中は安全である。

 しかし、魔術が使えないとなればルリフィーネやセーラと違って、身体的に優位性の無い者ばかりの集団だ。

 未知の世界を旅するには、あまりにも心許無い。


「うん……」

 ユキもその事を解っていたため、ルリフィーネを探したい気持ちをどうにか抑えると、少し瞳を潤ませながらミズカの言葉に対して一つだけ頷いた。

 結局この場所は何なのか?

 ルリフィーネはどこへ行ってしまったのか?

 数々の謎を残したまま、全員は無力さをかみ締めながら、古代遺跡へ戻ろうとしていた時だった。


「おい、待て」

 背後から声が聞こえる。


「新手……!? えっ」

 先ほど街で襲った謎の物体がここまで来たのかと思った一行は、体を震わせながら声のする方を振り向く。

 そこには謎の物体ではなく、服装こそ金属質で独特な形状をではあるが、ユキ達と同じ人が立っていた。


「まさか、人なの?」

「そうか、俺が人間に見えるのか」

 見た目は、ユキと同年代かやや年上の少年は、マリネの放った一言に対して無表情のまま不思議な回答をした。


「お前らは向こうにあるポータルから来たんだな?」

「ええ、そうよ」

 ポータルと言う固有名詞が、即座にユキ達の世界とこの世界を繋ぐ古代遺跡だと理解したマリネは、腕を組みながら少し強気な態度で答える。


「ついてこい」

 だが、そんな態度もまるで意を介さないまま、突然現れた少年はそう一言だけ告げると、再び街の中へと歩いていく。


「本当に付いてっていいのかしら?」

「しょーじき、怪しいよね」

 謎の物体に襲われた街の中へ、平然な顔をしながら導く素性が知れない少年は、どうみてもユキ達から見れば怪しい。

 当然、ほいほいと付いていく訳にも行かず、一行は足を止めたまま考え込んでしまう。


「着いてくれば、お前達が探している”もの”も、きっと見つかる」

「探している物……?」

「ルリ!」

「あ、ユキ! 待って!」

 探しているものがルリフィーネである保証は無い。

 誘いこまれた結果罠だったという可能性も大いにあり得る。

 だが、ユキはそんな危険を顧みず、仲間の声を無視して単独で少年の後を付いていってしまった。


「行くしかないわね」

 今の彼女には、説得する声は届かないと察したマリネは、少年の誘いに乗る事を決める。

 ミズカも無言でそれに従い、相手を殴りつける事くらいしか出来なくなった杖を抱え、少年の後を追って再び街の中へと入っていった。

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