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ゆきひめ ~六花天成譚詩曲~  作者: いのれん
Rurifine Part. 傍から側へ、そして……
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148. 行方を追って ~ルリフィーネの失踪編③~

 数日後。

 新世界の幹部達だったマリネ、ミズカ、くろが女王の呼びかけによって集められ、会談が開かれた。


「ところで女王陛下、今日はどのような御用で?」

「そんなかしこまらなくてもいいよ」

「助かるわ。じゃあユキちゃん、どうしたのかしら?」

「えっとね」

 ユキは全員が集まると、自身がサクヤと密会した事は伏せつつ、それ以外の内容を皆へと伝えた。


「……というわけなの」

 そして元国王と王妃の生存についてと、過去の自身に降りかかった不幸な事件の二つを言い終えると、三人とも顔をしかめてしまう。


「ねえミズカ、あなたはどう思う?」

「どう思うって、そんなの一つじゃない。婚約の儀で殺害された国王と王妃は代わりの人で、二人はまだ生きているって事だよね?」

「そうね、同意見よ」

 仮にもしも生きているのならば……。

 娘が女王の位に就いた事は知っているはず。

 それでも姿を現さない理由は……?

 ユキはそう思いながら視線を落とし、深く深く考えた。


「でも二人がどこに居られるかまでは、予想つかないわね」

「だよね、組織の連中でも無理だから余程の場所かなとは思うけれど……」

 もしかして既に組織の手によって……。

 それともサクヤの嘘……?

 そもそも、お父様とお母様はもう。


「ユキの前で言うのもなんだけど、亡くなった国王が生きてたら、玉座は主は誰になるの?」

「うーん……」

「今の政治体制も、やっぱり昔に戻っちゃうの?」

「そうねえ、すぐには答えは出ないわねえ」

「んー、まぁそこはマリネ達に、悩んで貰うという事でー!」

「もう、人事だと思って!」

 女王は暗い思考に飲み込まれていく最中、それと逆に周囲の人達は明るかった。

 それは、世界を敵に回してきたといっても過言ではない程の苦境を、乗り越えてきた彼女らだからこその、性なのかもしれない。


「それでユキちゃん」

「あ、うん」

「結論は、あなたが勝手に玉座を空けるのは反対だけど、居なくなった国王と王妃を探すのには賛成よ」

「でもさ、手がかりないんじゃどうしようもないよ?」

「そうなのよね。どうしようかしら?」

「組織より世相に詳しい集団ってないもの……」

 裏社会を牛耳ってきた秘密結社トリニティ・アーク。

 その影響力は計り知れない。

 恐らくは世界で最も大きいかもしれない。

 それは組織を憎んできた人々も、十分思い知らされてきた。


「ミズカ」

「なに?」

 全員が諦めた雰囲気になろうとしていた時だった。

 マリネの表情がぱっと明るくなり、思わせぶりな笑みを見せる。


「あなた、今すごく良い事言ったわよ」

「えっ、どういう事。もったいぶらず言いなよ」

「あるのよ一つだけ、トリニティ・アークよりも世の中に詳しい集団が!」

「そんな都合のいいのあるわけないでしょー。だから困ってるのに」

 組織よりも影響力があり、世の中に詳しい団体。

 それはもはや全知全能の神くらいしか居ないのでは?

 そう思いかけていた時だった。


「正教ならどう?」

「あっ……」

 ユキは、思わずあっけらかんな声を漏らした。


「前、ブカレスと出会った時に言ってたでしょ? 我々で独自に調べているって」

「確かに言ってた……」

 ルリフィーネの故郷、中央精霊区の世界メイド協会へ赴いた時を思い出す。

 しかも当時、誰も答えに至らなかった組織の長達の二つ名を当てる程だ。


「とりあえず、連絡取れるかやってみるわね」

「お願いします」

 正教ならば、ひょっとしたら何か手がかりがあるかもしれない。

 そんな淡い期待を胸に、一同はそれぞれの場所へと戻っていった。



 さらに数日後。

 未だにルリフィーネの足取りはつかめず、また元国王と王妃生存の手がかりも無く、女王は無為な時を過ごし続けていた。

 再度サクヤに出会い、先の話の詳細を聞こうとも考えたが、これ以上は隠し通せないと思った女王は実行する事を踏みとどまった。

 もっとも、仮にサクヤと出会ったとして真実を聞けるかどうかは解らなかったが……。


 思い通りに行かず、大切な人達の消息も消えたまま。

 焦りと苛立ちを募らせていく日々が続いている最中。


 マリネの呼びかけで会談は再び行われる。

 集まった人らは前回と同じく元新世界のメンバーだ。

 そして、今回はマリネの顔が明るい。


「進展があったわよ」

「お、正教から連絡があった?」

「ええ」

 その言葉を聞いた時、この会談の場に居る全員がマリネと同じ表情になる。


「まどろっこしいのは嫌だから、直接正教に聞いてみたの。国王と王妃の行方は解らないけど、ルリちゃんを目撃した人なら居たのよ!」

 今まで兵士や諜報員を使っても、何の手がかりも得られなかった。

 そんな中に伝えられた言葉は、今まで手がかり一つ無かった、限りなく閉塞した状況で差した僅かな光明だった。


「ルリ! ルリはどこに!」

 それはどんな黄金や宝石よりも価値があり、何よりもユキが欲して止まなかったものだったので、女王は立ち上がり体を前のめりにして、マリネへと強い口調で問い詰めた。


「落ち着いてユキちゃん。ちゃんと話すから」

「は、はい……」

 だが熱を持った女王と反してマリネは、冷静にユキを諭すと、丸めて持ってきた地図を広げていく。


「ここが首都アウローラ、そこからずっと南下していった先、地霊の国の国境沿いに小さな村があるんだけれど……。そこで狩りを楽しんでいた貴族が、白いメイド服を着た女の子を見たって話よ。声をかけようと思ったら見失っちゃったみたい」

 地図を指でなぞりながら説明をする。

 全員がマリネの動く指に注視しながら、現状を把握しようと努めた。


「でもここって私有地だし、何もない場所なのよね」

 何も無い場所に、どうしてルリフィーネは居たのか?

 瑠璃色のオーブを持って、何をしたかったのか?

 誰も答えを見出せず、最愛のメイド探しは振り出しに戻るかと思っていたその時。


「……ある」

「くろ?」

「ここに古代遺跡がある」

 今まで寡黙にこの状況を見てきたくろが、村のすぐ近くの場所を指差す。


「古代遺跡?」

「ああ」

「あー、それ私も聞いた事あるかも。かなり古い建物で調査もしてたみたいだけど、結局何も見つからないから放置してたんだっけかな」

 マリネの持ってきた地図には記載が無かった。

 しかし、ミズカやくろが言うからには書いていないだけであるのだろう。

 だが古代遺跡があったとして、そんな場所に何故ルリフィーネが行くのかが解らなかったユキは、少し顔を俯かせてしまった。


「とりあえず、そこへ行ってみましょうか。ミズカとくろ、お願いしてもいいかしら?」

 そして女王が直々に出向く事を言う前に、マリネは手早く人選を済ませる。

「いいよー、たまには外出ないとね」

「二人とも、お願いね」

「まあ、新世界の時じゃあるまいし何にも無いから安心して待ってて!」

 選ばれたミズカもくろも、それがどういう意味かを察したため、二つ返事で了承すると、旧新世界の幹部達は会談の場から出て行って古代遺跡へ出向く準備をし始めた。

 ユキは、そんな手際の良すぎる彼らに口を挟むことも出来ず、頬を膨らませて不満の見せながら一行を見送った。

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