107. 吹き荒む白銀の中から
それから日にちだけが無為に過ぎていった。
途中から新世界のメンバーと合流したホタルやセーラも今じゃすっかり馴染んでおり、アジトをまるで自分の家の様に過ごしている。
「ハーベスタ」
「どうした?」
「情報収集に行った人、帰ってこないね」
ミズカがふとそう言うと、この場に居た誰もが収集した情報を元に動こうとしていた、ハーベスタの計画が狂った事を確信して渋い表情をしてしまう。
「なあミズカ、俺を酷い奴だと思うか?」
諜報活動が、とても危険なのは誰もが解っていた。
故にハーベスタも、自身からはお願いする事が出来なかった。
しかし、命を顧みないメンバーの一人が立ち上がったのだ。
力ずくでも止めなかったとはいえ、ユキの時とは違ってハーベスタに落ち度は無かった。
「うん」
それでもミズカは、彼の意思や行動を許そうとはしなかった。
「……全てが終わったら俺なりに責任はとる。だから今は待ってくれ」
「覚悟しててね?」
ハーベスタは一切の弁明をせずそう答える。
ミズカは彼の強い思いを理解し、少し大人びた表情をしつつそう言うとアジトから出て行こうとする。
「どこへ行く?」
「見張りの交代。こうも寒いんじゃかわいそうだから」
アジト内は火を常に焚いているにも関わらず、悪魔であるホタルと魔術兵器のセーラ以外は厚着をしている。
室内でかつ地下でこの寒さならば、外はもっと気温が低く、長い間居れば命に関わってくるだろう。
ミズカはその事を解っていたため、早めの交代をしようとしており、ハーベスタもそれに対して何も言わず彼女を見送った。
今新世界の人々が隠れているアジトがある貧民街にて。
「すっかり雪国だなあ……」
水神の国の新たな王女であるネーヴェの号令から、外は日に日に寒くなっていき、今じゃ辺り一面雪景色になっている。
今まで積もる程の雪が降る地域に住むことが無かったミズカは、不慣れな雪道で転ばないように気をつけながらも不審な人物が居ないか見回りつつ、既に見張りをしている仲間の下へと向かおうとする。
その道中で、ミズカはある異変に気づく。
「おい、お前何者だ?」
「か、火竜の国の王!? 何故ここにいる!?」
「質問を質問で返すな。お前は何者かと聞いている」
びゅうびゅうと、雪が吹き荒む音に紛れて話し声が聞こえてくる。
「火竜の国の王って、もしかしてサラマンドラ国王……? そんなわけないよね。こんな場所に居るわけないもの」
ミズカは他国の王がこんな貧民街で、かつ吹雪いている場所に居るとは夢にも思っていなかった。
しかし、声がした場所へと近づいていき、ミズカの視界にぼんやりと映る人影の正体がだんだんと解るようになっていくと……。
「あれって……、げっ、本当に居る! しかも襲われてる!」
目の前の風景が想像とは異なる事に思わず身をすくませてしまう。
このままでは仲間が理不尽な暴力にあってしまうと思うとミズカは……。
「待って!」
吹雪に負けないくらいの大声を出した。
そして、どうにか動きを止める事に成功したミズカは声のする方へと近づいていくと、吹雪で解らなかった人影の正体が露になってゆく。
「あなた、ユキのメイドさんだよね?」
その人影の正体は、ハーベスタの無茶な作戦を受け、そして今まで生存すら確認出来なかったユキの専属メイドのルリフィーネだった。
「そうですが……、あなたは?」
「付いてきて」
ミズカは生存が絶望的だったルリフィーネに出会い喜ぼうとしたが、サラマンドラ国王が同行している事実と理由が気になり素直になれずにいる。
そんな複雑な気持ちのまま一行を迎え入れるため、アジトへと案内した。




