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ゆきひめ ~六花天成譚詩曲~  作者: いのれん
Another two. 人と兵器は何処へ行くのか
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106. 意外な出会いから生まれる矛盾

「不動のルーン発動!」

「ぐうっ……」

 どうみても切った張ったの世界とは無縁な、ごく普通の可愛らしい女の子だよな?

 そんな子相手に向かって、いきなり斬りかかるのはまずいって!

 そう思い、私は咄嗟に刻印術を発動する。

 セーラちゃんも、まさか後ろにいる味方が攻撃してくるなんて想像していなかったらしく、私は容易に動きを止める事が出来た。


「ふー、いきなり襲い掛かるなんてどうしたのさ」

「ジョーカードール・アーテスタ。あいつが私を殺そうとした」

 そういえば、新世界の人らと合流した時に聞いたなー。

 セーラちゃんよりも後に開発された魔術兵器だっけか。


 まさか研究施設の跡地と思われた場所に、こんな女の子が居るとは誰も想像していなかったらしく、全員がどうすればいいのか困惑している時だった。


「えっと、あなた達は?」

 そんな私達の様子を察してきたのか、少女は恐る恐るこちらへ話しかけてくる。


「私はマリネよ、こっちの魔術師の女の子はミズカで、そこの色っぽい人がホタル、ツインテールの子はセーラね」

「あっ、あたしはココです」

 どうやら敵意が無いと解ったマリネは、簡単に私達の自己紹介をすると、少女は少し戸惑いつつ名乗り返した。

 私はそんな受け答えを見て、ココと言う女の子の警戒心がほんの少しだけ解けたと思った。


「うーむ、普通だぞ?」

「ねえセーラちゃん、本当にこの子がジョーカードールなのかしら?」

 受け答えや仕草や雰囲気。

 どれも普通の人間だ。

 とてもセーラちゃんを痛めつけた相手とは思えない。


「姿は全く同じ……。でも、違う」

 まだ迷いはあるみたいだけど、手に持っていたナイフを鞘へ戻してくれた。

 どうやらセーラちゃんも解ってくれたらしい。


「ねね、マリネ。ジョーカードールの力って切り替えられるの?」

「ユキちゃんの変身じゃあるまいし、そんな器用な事出来ないわよ」

「だよねー」

「でも、セーラちゃんが間違っているとも思えないなー」

 私も昔、組織の手で無理矢理に魔術で使う媒介を植えつけられ、変身出来るようになった。

 その時、変身したら命は無いと釘を刺されてきた。


 ユキの変身、あれは特別だ。

 あんな自由に力を操れるなんて、ユキにしか出来ないと思う。

 じゃあ、この目の前の子はなんだ……?


「そうなると、セーラちゃんを襲ったココちゃんは、見た目が似ている別人って可能性になるわね」

 この女の子が二人居るってわけか?

 一体何の為に?

 ユキみたいに何か特別な力を持っていたり、実は身分の高い人なのか?


「ねえココちゃん、どうしてこの場所にいるの?」

「えっと、ハウスキーパーから大事な仕事があると言われて、ここに連れて来られたんです」

 ハウスキーパーって事は、まさか使用人として働いていた?

 なんでただの使用人をこんな場所に閉じ込めておくんだ?

 組織とは関わりの無い人生を送っていたとしても、何ら変ではなさそうなのに?


「まさか、ずっとここに?」

「はい」

「どういう意味かしら……」

 駄目だ、解らない事だらけだ。

 はぁ、どうしたもんかねえ。


 私はこの女の子についていろいろ思考を巡らせると、私以外の全員も同じ様に思ったのか、視線を落として深々と考えてしまう。


「さっき、ユキって言ってましたよね? ユキを知っているんですか? もしかして、ユキがお姫様だった頃の知り合いですか?」

 そんな時、ココから意外な言葉を口にする。

 ただの使用人がどうしてユキの名前を知っているんだ?

 しかも、ユキが姫だって事も。

 ……まさか。


「私、昔聞いたことがあるんだ。ユキには救いたい友人が居るって。それがこの子じゃないのか?」

 ココがユキの名前を出してから私は僅かに考えた後、ある事を思い出す。

 それは、私がユキやルリさんと一緒に居た時に聞いた話だった。


 ユキがどうしても救いたい、大好きな友達を助けたいと熱く語ってくれた事があった。

 その子が、この女の子なのかもしれない?


「なるほど、この場所で監禁されているから、変身する力を使って解放してあげたかったってわけね……」

 そしてマリネの発言で、全ての謎が晴れていくのを実感した。

 理由は解らないけれど、組織に囚われていた友人を、ユキは助けたかったってわけね。


「連れていきましょう」

「ああ、そうだな」

 それならば、私達が今ここでこの子を救ってあげればいい。

 ユキとは必ず合流するのだから。

 きっと驚くだろうなあ~。


 こうして私たちは、囚われのココを連れて行く事にする。

 ココは少し戸惑いつつも、私達がユキの知り合いである事を理解したのか、一緒に付いてきてくれた。


 アジトへ戻る道中も組織からの襲撃は一切受けず、無事に到着した私たちは、ハーベスタや他の待っていた人達に研究所跡地で起こった出来事を順に話していく。


「――というわけなの」

「まさか放棄された施設がそんな事になってるとはな……」

 そして全ての話を聞いた時には、全員が深く考え込んでいた。

 無理もないよね。

 まさかユキが救おうとしていた女の子が居るなんて、誰も想像つかない。

 私も驚きだよ。


「一応確認するが、ココには何の仕掛けもないんだよな?」

「うん。私が魔術で調べたけど、何にも反応無かったよ。普通の女の子だね」

 多分、ハーベスタはココ自体が組織の罠かもしれないと思ったんだろうな。

 でも私の目から見ても至って普通の女の子だね。

 今だから解るけれど、セーラちゃんは見た目は普通だけど周囲を取り巻くエーテルの流れが違う。

 この女の子には、それが無いもの。


「さて、これからどうするかだな……」

 思わぬ収穫に、次の作戦をどうするか決めかねてしまう。

 それはハーベスタは勿論、他の全員が同じ思いだった。


「情報収集の為に、また人を送っているんでしょう?」

「まあな」

「じゃあ、戻ってきてからでもいいんじゃない?」

「そうだな。新たな情報があるまで各々見張りつつ待機だ」

 どうにかユキを見つけたい。

 何事も無ければいいけれど、もしも新世界の人らの言うとおり洗脳やら催眠やらかけられていたら……。


 しかし、下手に動けば組織に隙を見せてしまう。

 なるべく早く合流したいところだけど、ここは耐える時か……?

 あー、駄目だ!

 難しいの解らないよ!

 考えすぎて頭が痛くなってきた、ちょっと外へと見回りに行こう……。

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