100. あくまで蛍は姫の為に
「私、夢でも見てるの?」
この場に居る全員が、水晶玉に映っている人物?に驚いていた。
「ふう……。おーい! 居るんだろ? 誰か反応しろよー!」
こちらの状況はまるで無視し、その人?は必死に呼びかけている。
「私はランピリ……おおっと、ホタルだ!」
ホタル……。
ユキがお姉さまと言っていた人。
ユキの大切な人、だからホタルも大切な人。
「あれ、悪魔じゃないか」
でも、私の知っているホタルの姿じゃない。
格好も勿論違うけれど、それ以上にこめかみにある角、尾てい骨から伸びた尻尾、そして背中から生えている蝙蝠のような二対の羽。
ホタルじゃないけど、ホタルと名乗っている。
あれは、何?
「ね、ねえ! 組織の新型アーティファクトだったり!?」
「だったら組織の人間を襲う理由が知りたいわね」
「だよね……」
新型?
そうじゃない。
部屋が違うはずなのに、体がそわそわするくらいにエーテルの反応が強い。
ココとか言う新型でも、ここまでではなかった。
「まあ、招きましょう」
「お、おい。いいのか……」
「いいのかも何もないわよ。どうせここへ来るんだし。それに私達の窮地から救ってくれたのは事実だし。聞こえる? そのまま真っ直ぐに行きなさい。待っているわ」
「おー! 反応があった! 待ってろよユキ、ルリさん、セーラちゃん!」
マリネがホタル?を呼び寄せたようだ。
水晶越しに大きく手を振りながら走っていく姿が見える。
「駄目だ、理解が追いつかねえ。なあくろ、やっぱあれ悪魔だよな?」
「……さあな」
もしも本物だったら、ユキを探すはず。
私の拘束を解いて、一緒に行動しようとする。
「はぁー、もうどうにでもなれだ!」
違ったとしても、私はここから脱出してユキを探す。
組織の追撃者が居ないのなら、拘束さえ何とかすればここから脱出出来る。
「やあやあ皆さん! ってお前らセーラちゃんに何した!」
「え? ああ、これは違うぞ」
「こんなにぼろぼろになって、この野郎……!」
「まあ待て! 俺達じゃない。話を聞け」
ホタル?はどうやら勘違いをしているようだ。
このままだと争いになってしまう。
そうなれば、きっとユキは悲しむ。
「この人達じゃない」
「えっ?」
「私は新型にやられた」
「新型って……、どういう事?」
だから、私は誤解を解くために違う事を伝えた。
ホタル?もどうやら信じてくれたようだ。
「ユキの仲間みたいだし、現状を話したほうがいいんじゃない?」
「そうだな」
そう言うと、ハーベスタは今まで起きた事をホタル?へ話していく。
ユキやルリフィーネが新世界に居た事や、国の高官達に対して何をしてきたか、そして敵であるサクヤの館へ送り込んだ過去。
それら全てを伝え終わると、静かに話を聞いていたホタルは勢いよく立ち上がり。
「やっぱりお前が悪いんじゃないか!」
ユキとルリフィーネを死地へと追いやったハーベスタに対して、怒りを見せた。
「そうなるよね」
ミズカはこうなる事を予想していたらしく、満足げに頷いている。
「むう、だから悪かったって言ってるじゃないか。だいたい今は過ぎた事を嘆いても仕方ないだろう?」
「そう、今は言い争うよりも考える事があるわね」
ハーベスタが二人から攻められて困っている中、マリネが別の話題をふった。
「ああそうだ。地上にまだ居るであろう組織の連中をどうにかしないとだな……、俺達も水路から逃げるか?」
「そこはもう無理でしょうね。一度なら誤魔化せるけど、二度目は待ち伏せされているかもしれない」
「だな……。どうしたものか」
「な、なあ。あのさ」
「どうした? 悪魔娘」
「ホタルでいいよ」
「じゃあホタル、なんだ?」
これからの作戦を決めた矢先、ホタルが申し訳なさそうに会話に割り込むと……。
「地上に居た組織の人らなら、たぶん私がここに入ってくるとき倒したかも……」
組織の人間を全て倒した事を伝える。
「倒したかもって、相当な数居ただろう?」
新世界のメンバー全員を殲滅しようとしていた。
具体的な数は解らないけど、かなり居たはず。
「ああ、どう頑張っても人が邪魔で中に入れなかったから、めんどくさくなって」
「……」
どうやって倒したのかは解らないけど、嘘をついたりしてるとも思えない。
昔とは違う今の姿と関係がある?
「まあ、組織側も遠距離狙撃って理不尽さがあるわけだし? こっちも少しくらいはインチキしてもいいんじゃないかしら?」
「頼むから、常識外なものばかりださないでくれ……」
ハーベスタは頭を抱えて、この現状を酷く嘆く。
「マリネ。あとどのくらい食料が残っている?」
「三日ってとこかしら?」
「そうか……」
ハーベスタは腕を組み、薄暗い天井を向きながら何やら考えている。
「少し時間をくれ。あとホタルともう少し話がしたい」
次はどんな作戦で行くのか?
ユキといつになったら会えるのか?
解らない。
だけど、必ず会う。




