90 光泰 彷徨う
日が落ちた頃、本能寺に着いた。
寺(本堂)は、一部を残しほとんど崩壊していた。
坊さん達が消火活動を行っている。
一番偉そうな坊さんは、どこかな?
光泰 「和尚は何処に居られる」
子坊主「此方でございます」
一番上等な袈裟を着た坊主が、お経を唱えていた。
和尚「まだ火が燻っております。危険ですのでお下がりくださいませ」
黒田「何が遭ったか、説明致せ」
和尚「そろそろ寺を明け渡して貰いたく、織田様に申しました所、
ご許可を頂けましたので、羽柴様に退去してもらっていた時に、
いきなり本堂から大きな爆発が起こり、
このような無残な有様に・・(泣)明智様、勘弁して下さいませ」
それは残念だったね。でも僕のせいでは無いよ。
黒田「羽柴様はどこに居られる?」
和尚「皆様は、妙覚寺に居られるかと存じます」
光泰「誰も亡くなっては、居らぬよな?」
和尚「寺の者は亡くなって居りませぬが、
誰か解らぬ者の亡骸が二体御座います」
光慶「片方は父上であろう」
もう一人は・・もしや茂兵衛では無いよな。
死亡フラグはへし折ってあるし。
和尚「此方で御座います」
二つの遺体は、判別がむつがしいほど大破していた。
かろうじて髑髏の数で、二人と判別出来る。
光泰「何方が父上か、判断出来ぬ」
光慶「仕方がない、纏めて葬るしかなかろう」
明智光秀の遺体は、誰か解らぬ人と纏めて桶の中に入れられた。
光泰「父上も他人と一緒では、窮屈かも知れませぬ」
光慶「野ざらしにされるよりは、ましじゃろう」
本来なら光秀は謀反人なので、さらし首にされてもおかしくないのだが、
信長からは、コレと言って指示を受けていない。
黒田「妙覚寺に向かうとしますか」
おっとその前に、薬の礼を言っておかねば。
光泰「そういえば朝に薬を頂いたのじゃが、誰が持ってきてくれたのかのう。
若い者じゃったが、礼を言いたい」
和尚「はて?薬の礼で御座いますか?我々は寺には近づいておりませぬ、
明智様の医坊では御座いませぬか?」
光泰「明智家の医坊は年寄りだったはずじゃが・・そうか違うのか」
あれ?あの人は誰だったんだろう。記憶に無い人だ。新入りか?
黒田「急ぎますぞ」
まあ良いや、薬の件は後回しにしよう。兜も探しにくいし。
妙覚寺の門前には、羽柴秀吉がいた。
黒田「殿、御無事で」
秀吉「何事も無い、安心致せ」
黒田「殿も悪運が強い(ここで死なれては困る)」
秀吉「それよりも妙なのじゃ、上様にお会い出来ぬのじゃ」
黒田「寺に入れぬので御座いますか?」
秀吉「そうなのじゃ、門番が入れてくれぬでのう」
黒田「作用で御座いますか(中で、なにか遭ったか?)」
光泰「家老達は、今何処に居られますか?」
秀吉「明智屋敷で弟(秀長)に見張らせて居る」
家老達は無事か。
黒田官兵衛が門番に話しかけた。
黒田「なにが遭ったか説明致せ」
門番「何人たりとも御通し致しせぬよう、申し付けられております」
黒田「誰の指示じゃ」
門番「それが、濃姫様の御指示で・・」
黒田「なに!(もしや・・!!!)
秀吉「なあ、入れてくれぬであろう」
黒田「ここで待っていても、仕方ありますまい。
明智の屋敷に移動致しませぬか」
秀吉「そうじゃな、明日にでもなれば上様から、お呼びが掛かるじゃろう」
なんだか今日は移動してばかりだな。
しかし濃姫か・・確か、帰蝶が本当の名だよな。
明智光秀の従姉妹で、僕から見たら何ていうのだろうか?
従姉妹叔母?叔母従姉妹?(正解は従叔母)
そもそも光秀との仲は良かったのか?
ドラマとか漫画では、光秀の片思いに書かれている事が、
よく有ったような気がする。
ただ年齢差が六、七歳も離れている。まあ煕子母さんの方が離れているが。
ロリコンなのかな?秀吉もそうだし。家康は年増好きらしい。
濃姫の性格は、言い伝え通りだとかなりキツイ。
たしか、信長を刀で刺せと斉藤道三に言われたから、
この刀で父上を刺すかも知れませんと言い返したらしい。
秀吉さんに任せるか。向こうから何か言って来る事は無いだろうし。
次は京屋敷か。そういえば茂兵衛はどうした?
本能寺が爆発したのだから、様子ぐらい見に来ていてもおかしくない筈だが、
いや、あいつの事だ。鶏が買えずに途方に暮れているかも知れない。
無事なら坂本城に帰るだろう。再優先事項が解らぬほど馬鹿でもあるまい。
護衛には役に立たないけどね。
明智屋敷に着く頃には、月が上がっていた。
本来なら光秀は、この月を見ながら天下取りの儚い夢を見ていたのだろうか?
これから墓作らないといけないよな。何個必要だ?増えないよな?
三宅綱朝「若様、お労しや」
光慶 「此れも武門の定めじゃ」
光泰 「早速で、すまぬが羽柴様達の飯を頼む」
三宅綱朝「畏まりました。宿は如何致しましょう?」
黒田 「今後、何が起きるか解らぬ故、近くの宿を借り受けたい」
秀吉 「寺でも良かろう」
黒田 「本能寺の件が御座います。寺は御遠慮なさいませ」
秀吉 「坊主も信用成らぬか」
そりゃそうだ。
今回、本能寺は武士同士の諍いに巻き込まれての大爆発。
現在どう思われているか、次は我が寺かと震えているかも知れない。
光泰 「弥平次達はどうして居る?」
三宅綱朝「部屋に居りますが、お会いに成られますか?」
光泰 「無事なら良い。わしは疲れた、もう寝る」
次の日の朝、驚愕の知らせがが舞い込んできた。
織田信忠が亡くなったと・・・
補足説明
信長が二条城から移動しているのは、
二条城が親王の城だからです。
いつまでも借りるのは無理があるかも。
妙覚寺は信忠が宿にしていた寺です。
帰蝶は安土城に居た説が有力ですが、
この物語では、濃姫は本能寺に居た説を採用します。




