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51 十次郎 ねぎらう

12月になった。

来年の方針を決めるため、亀山城に家臣達が集まり

会議を行うことになった。

ぼくは去年まで、決まった事を後から聞いただけだったが、

来年に元服するので参加している。

ただし、まだ子供扱いなので、勝手な発言は禁止されているが。


まず初めに、明智光秀が家中法度を発表した。

家中法度とは、明智家に所属する家臣達のルールブックである。


簡単に内容を説明すると、

織田家の直臣には、丁寧に接しろ。

用も無いのに、京の都に行くな。

他家と揉め事を起こすな。


???何か有ったのかな???

光慶に小声で聞いてみた。


十次郎「兄上、誰か粗相したのですか?」

光慶 「京の都で傾奇者に、喧嘩を吹っかけられるそうじゃ」

十次郎「傾奇者の目的は、何でございましょうか?」

光慶 「詳しくは知らぬが、”わしの家来にしろ”と言ってくるそうじゃ」

十次郎「兄上の家来ですか?物好きな傾奇者ですね」

光慶 「物好きは余計じゃ。また、おぬしと勘違いされているだけじゃ」

十次郎「間違った噂が、広まってしまい困ったものですな」

光慶 「だからのう、傾奇者達に噂は弟の事で、まだ子供じゃから諦めよと

    言うようになっておる」

十次郎「それだと来年になったら、私の所に傾奇者達が、

    やって来るでは有りませぬか」

光慶 「楽しみじゃのう」


おいおい、傾奇者なんて面倒くさい。来年は、暇なんて無いぞ。


十次郎「誰の入れ知恵ですかな?」

光慶 「もちろん、わしじゃ」


余計な事をするな!!

いや、待てよ。傾奇者達を上手く利用できないか。

上手くいけば、役に立つかも。


十次郎「さすが、兄上でございます」

光慶 「いきなりなんじゃ、気色の悪い」


そんな話をしている間、明智光秀と家老達は、様々な議論をしていた。

光慶はまだ、経験不足なので、意見を述べる事は無い。


会議の内容だが、そのほとんどが甲斐武田家が滅んだ後、

明智家が次に、どの様な役目を言い渡されるか、

四国へ、出陣は有るのかなど、話し合いが行われていた。


まだ謀反をする話を、言う訳ないか。

歴史どおりなら、ほとんど無駄になる会議は、二時間位で終わった。


明智光秀「十次郎、準備を致せ」

十次郎 「かしこまりました」


僕は、新作の菓子の用意を、任されていた。

会議が終わった後、皆を労うために茶席を準備し、

菓子を振る舞うことになっていた。


明智光秀が、茶を立ている間に、

僕は台所に向かい、完成しているか確かめに行った。


十次郎 「会議は終わったぞ、菓子は出来ておるか」

料理頭 「完成しております」


ぼくは、菓子の出来を確かめた。

十次郎 「上出来じゃ。さあ、運ぶぞ」


菓子を、茶席が設けられた部屋に運んだ。


十次郎 「お持ちいたしました」


菓子は、お茶を飲む前に食べてもらう。


明智光秀「菓子の説明をせよ」

十次郎 「本日の菓子は、寒天でございます」


前に餡蜜を作った時に、足りなかった寒天を作ることに成功した。

寒い時に天日干しして、乾燥させるのは正しかったようだ。

これで料理の種類が増える。


藤田行政「かんてん?でございますか?」

十次郎 「心太ところてんを冬に乾燥させ、生臭さを無くした物を、

     もう一度作り直したのでございます」

藤田行政「心太ところてんを菓子にしますとは、驚きまするな」

十次郎 「今回は、蜜柑を入れてみましたので、

     蜜柑寒天と名付けました」

明智光忠「これはまるで、水の中に蜜柑が浮いているような、

     面白き菓子にございまする」

十次郎 「他の水菓子(果物)や、食べられる花など、

     入れても良いかと存じます」

明智光忠「これは、明智家の名物に為りますかな」

十次郎 「問題は、冬にしか作れぬのに、

     夏に食べた方が、涼しくなる事ですが」

明智光忠「確かに、夏に食べたくなる菓子ですな」

明智光秀「すこし冷えたであろうから、茶で温まるが良い」


茶は飲みやすいように、薄めに作られていた。

蜜柑寒天もとい、蜜柑ゼリーは高評価を貰った。


十次郎 「父上、皆に私の新しい甲冑の評価をしてもらいたいのですが、

     よろしいでしょうか」

明智光秀「茶席の後には、無粋ではないか?」

十次郎 「この機を逃すと、初陣の時に味方だと、信じてもらえぬかもしれませぬ」

明智光秀「・・・可笑しな物を作ったのではあるまいな」

十次郎 「私が作らせたのです。まともな分け御座いませぬ」

明智光秀「・・・開き直るでない」


明智光秀は頭を抱えている。


斎藤利三「よろしいでは御座いませぬか。十次郎様の作りし

     甲冑はどの様な物か、皆で研究するのも一興かと」


楽しみにされても困るが、良く言った。


明智光秀「しょうがないのう。持ってこさせよ」

十次郎 「もう、準備はしております」

明智光秀「・・・手際が良すぎるのう」


隣の部屋に隠していた、甲冑を見てもらった。


十次郎 「いかがで御座いましょう」


誰も喋ろうとしない。

三十秒ほどの沈黙の後、最初に口を開いたのは、光慶だった。


光慶 「大将の甲冑にしては、地味ではないか」

十次郎「兄上の甲冑より目立たぬ様に、致しました」


光慶の甲冑は、兜に大きな角が生え、金ピカの派手すぎる鎧だった。


光慶 「目立たなければ武勲を立てても、解らぬであろう」

十次郎「これからの戦は、個人の武勲より、

    集団で火縄や大筒の打ち合いになりまする。

    その際、目立つ甲冑など、的になるだけです」

明智秀満「では、今後は槍や刀など不要になりますかな?」

十次郎 「戦場で、槍を揃える時代はもうすぐ終ります。

     刀はむしろ、平和な時代に活用できましょう」

明智秀満「平和な時代でございますか?」

十次郎 「後、十年以内に日ノ本の国は、戦の無い時代になりましょう。

     しかし、敵は少なからず生き残りまする。

     その者達が我々を殺すには、暗殺するしか御座いませぬ。

     その際、身を刀で守るしかありませぬ」

明智秀満「十次郎様は、上様(織田信長)を殺すには、暗殺しか無いと

     考えているのですな」


ん!余計な事を言ったかな?


十次郎「私は、暗殺などいたしませぬ」

光慶 「そんなの当たり前じゃ」


明智光秀の反応は無い。この人、表情が硬くて解りづらい。


溝尾茂朝「その棒が付いた盾?は、何でございましょうか?」

十次郎 「これはのう、胴の代わりに身を守る為に作って貰ったのじゃ」

溝尾茂朝「そういえば、胴が有りませぬな」

十次郎 「盾であれば、兄上を守るに便利であろう」

光慶  「別に、おぬしに守って貰わなくても構わぬ」

十次郎 「兄上には、生き残って貰い家督を継いで頂かないと、面倒

     ・・じゃ無かった、迷惑でございまする」

光慶  「言い換えた意味が無いぞ」

十次郎 「それにのう、この棒が重要なのじゃ」

光慶  「いきなり話を戻すでない」

十次郎 「棒を持てば鍬の様に、使えるのじゃ」

溝尾茂朝「鍬のしては、使い難くございませぬか」

十次郎 「そうなのじゃ。わしの体がもう少し大きくなれば、

     扱えるのじゃがのう」

光慶  「待て、まだ大きくなる気か?」


現在、光慶より僕の方が頭一つ分、背が高い。

十次郎 「兄上、申し訳ござらぬ。

     どうやら、牛の乳を飲むと背が伸びるようです」

光慶  「わしは飲まぬぞ」


いや、隠れて飲んでるのバレてるよ。


斎藤利三「この着物の柄は、見たことございませぬが、

     意味がお有りですかな?」

十次郎 「蛇のような柄じゃろう。蛇は森に隠れると見つけにくいからのう。

     しかも、首を刎ねてもすぐには死なず、しぶといから縁起が良い」


僕は、どんな事があっても、切腹などしない。

絶対に生き残ってやる。


斎藤利三「それではまるで、戦に負けた後の考え方ですな」


うん、負けるよ。驚くほど、早くに。


十次郎 「私を殺せば、呪ってやりますから、

     兄上は安心して、指示してくださいませ」

光慶  「恐ろしい事を言うでない」


さて、明智光秀の反応は、・・・クソ!!目を瞑ってやがる。


斎藤利三「殿、奇抜ですが、理には適っておりまする」

明智光秀「・・・・おぬしは、傾奇者に成る気か?」

十次郎 「傾奇者は派手な着物を好みまする。

     私は、隠密に行動いたしまする」


僕を心配するなら、光慶を心配した方がいいぞ。

素直で謀略を嫌い、古い武人を尊敬しているから、

あなたが謀反を起こしたら、切腹すると思うよ。


明智光秀「・・・皆は、どう見る」

明智光忠「十次郎様は、まだ若うございます。

     今は、様々な事を試して要るので御座いましょう」

明智秀満「常識で考えるのは、成長の妨げになるかと思われまする」

藤田行政「これはこれで、宜しいかと思われまする」

溝尾茂朝「十次郎様の行く末が、楽しみで御座います」


なんだか皆、当たり障りのない事を言っている。


光慶  「武人らしくない!!」

十次郎 「それは兄上にお任せ致しまする。

     私は、影に徹しとうございまする」


僕は次男だ。自由にではない跡取りには成りたくない。


明智光秀「内蔵助(斎藤利三)はどうじゃ」

斎藤利三「当世とうせい(現代)とも、南蛮とも言えませぬが

     今後の戦を考えての、工夫を凝らしておりますれば、

     けして悪い物では御座いませぬ」

明智光秀「そうか。悪い物ではないか」


期待はしていなかったが、結局誰も褒めてくれる者はいなかった。


明智光秀「・・・まあ良かろう」


良し!合格したぞ。

十次郎 「父上、爺を労いとうございます」

明智光秀「そうか。では、茶でも飲ませよ」

十次郎 「ありがとう御座いまする」


明智光秀から、一杯分の抹茶を貰った。

戦国時代では、抹茶は高級品である。


十次郎 「爺、上手く行ったぞ」

爺   「それは良う御座いました」

十次郎 「父上が褒美に、爺に飲ませよと茶をくれたぞ」

爺   「これは、勿体無きお言葉でございます」

十次郎 「寒天も用意したから、一緒に食べよ」


僕は簡単な茶席を用意し、爺に茶と蜜柑ゼリーをふるまった。


爺   「とても美味しゅう御座います」


爺は、少しずつ食べた。


十次郎 「いずれ、誰でも食えるようになるから、遠慮するな」

爺   「それは楽しみで御座います」


さて来年は、運命の時だ。

正直、どうなるか解らない。


十次郎 「長生きせなばな」

爺   「そうで御座いますな」


子供のセリフではない、言葉を吐きながら、

激動の明智家の行く末を、思い更けていった。


1581年編終ります。

傾奇者が流行するのは1596年ぐらいからですが、

この話では、悪さをして実家から追放された、若い武士達です。

うつけ者が正しいかも知れません。

前田慶次みたいな人はいません。

八角釜は安土屋敷です。

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