第3話 セネル・リーヴァイス
少し書き方変えてます。
セネル視点
わたしはセネル。セネル・リーヴァイス。
私は優衣。桜田優衣。
私は、わたし、は……。
物心ついた時にはすでに日本という国で生まれ育った優衣とこの魔法の世界で生まれ育ったセネル、2つの記憶があった。どっちが本当なのかわからず、ただただ困惑しているだけだった。
これは夢?それとも現実?
セネルは言う。
今ここでわたしが生きていることは間違いじゃない、と。
優衣は思う。
確かにあの世界で生きていたことは間違いじゃない、と。
ならばどちらが本当なのか。
セネルは愛されていた。
両親からの愛をたっぷり受け、生きていた。魔法の属性を知っても愛は変わらずに。
優衣は愛に飢えていた。
両親は共働きで、優衣が寝てから帰ってくることの方が多かった。
セネルの家はそこそこ広い領地の領主だった。貴族位はない。
今から5年前のこと。セネルの両親が亡くなった。セネルの10歳の誕生日前日のことだった。馬車での移動中、落石によって。遠回りをすれば安全な道を通ることができたが、セネルの誕生日に間に合わせるため崖の道を無理して通ってきたのだ。
彼女の両親は彼女を愛していた。だから誕生日に間に合うようにと馬車を急がせた。結果、彼女を独りにしてしまったのだが。
セネルには、優秀な使用人がいた。
彼の名をエスペラール。セネルとは7歳差。エスペラールの家は代々リーヴァイスの家に仕えていることから、セネルが生まれた時から仕えるべき主人なのだと教えられてきた。
彼はそれを苦と思わなかった。
だからセネルとエスペラールは、主人と使用人という肩書き以上の仲だった。
両親の死からセネルがなんとか立ち直れたのもエスペラールのおかげだった。
両親が亡くなったことでセネルを取り巻く環境は劇的に変わった。
彼女の属性を恐れた者が離れていく。これまでは彼女の両親がなんとか止めていたが、幼い彼女にそれを止めるだけの力はない。
両親が亡くなったことを知った者がセネルに近づいてくる。セネルの立場と領地が欲しかった。
全て、全てエスペラールが対処し、選り分け、時に消した。
セネルの周りに人はほとんどいなくなった。
最低限の使用人たちとエスペラール。それが彼女の全て。
セネルはそれでも良かった。幼い頃から自分に付いてくれているエスペラールがいるから。優しく声をかけ、時に叱り、寝られない時は一緒に寝てくれる。それだけでよかった。
いや、幼すぎて人が離れていく理由がよくわかっていなかった。だから気にならなかった。
“優衣”は。
愛に飢えていた。
闇属性というだけで離れていくのがわからなかった。優衣はセネルと違い幼すぎることもなかった。
両親が生きている内は愛が満たされていた。優衣が困惑するほどに愛されていたから。
セネルと優衣、2つの世界を認めながらもお互いを受け入れようとしなかった結果、セネル・リーヴァイスという人間は歪んでしまった。
闇は闇、自分は忌避されるもの。周りに受け入れてくれる人は絶対にいない。愛してくれる人だって。
ただ一人、エスペラールを除いて。
エスペラールは仕える大事な主人が何か変わってしまったことに気がついたが、どうすることもできなかった。セネルに前世があるなど知らなかったし、“優衣”というのも存在自体知らなかった。
●●
「ごめん、びっくりさせて。話がしたい。君は、日本人?」
直前に腕を握られたことよりも彼女の発した言葉は衝撃的だった。
「あな、たは……」
何を知っているの。
その言葉は私の口から出なかった。
「転生者。君はそうだよね?私も、そう。他の人には言ってないから2人で話したかった。前世だなんて言っても信じてもらえないから」
転生者。前世。
カチリと何かがはまった気がした。
今までわたしと私が同じにならなかったのは、1人の人物として、セネル・リーヴァイスとして成立しなかったのはそれをわかっていなかったからだと。理解できていなかったからだと。
私はわたしの前世。
私は死んで、この世界でわたしとして生を受けた。
「そ、う。そうよ。私は、転生者……」
口に出せばそれを実感できた。
こんなにも簡単なことだったのに。私はわからなかった。考えようともしなかった。
ただ、無くなった愛を求めているばかりで。
死んだことをそれとなくわかっていてももう一つの自分がいることからよく理解しておらず、両親が死に、愛に飢えた優衣からしたら闇属性というだけで今までいてくれた人たちまで離れていくことが理解できず、というような自分でもわからないこの子……感覚で理解してください(無理難題)
優衣ちゃんは成人せずに…だと思います。




