第2話 話はできますか?
「【神威の一撃】!」
光の奔流。うわぁ、これ流石に防ぎきれないのでは?一旦退散。
収納を使ったあの魔法は、収納とは別の魔法ってわかったから名前を変えた。咄嗟に使う時に名前がないと頭の中でこんがらがってどっちを使うのかわからなくなるからね。付けた名前は【影の街】。もっと普通のにしたかった。中、とか。……わかりづらいか。
その魔法を使って、影の中に入る。待てよ、最初からこうすれば良かったんじゃ?
今更だね。兄さんのとこ行こ。
兄さんの影まで移動してそこから出る。この魔法の難点だよね、影がないところでは出られないし入れない。ま、自分の影があるから入ることはできるけど。
「兄さん」
「ローズっ!?なんで……」
光が一瞬にして消える。
「こんなことしてる場合じゃない。こんな大きな規模の戦闘、すぐにバレる。足がつくのは良くないって言ったの兄さんだよ」
「はっ。ローズと俺は一緒にいられないって言われてカッとしてた……」
そんなこと言われてないけどね。
解釈の仕方がおかしいよ、兄さん。まあやめてくれるならなんでもいいんだけど。
「とりあえずあの子止めて、行こう。目的地に着かないよ」
「ああ、そうだな。……っと」
セネルが魔法を放つ。それを兄さんが防ぐ。向こうはやめる気はないみたいですね。
「……ノア連れて先に行けるか?」
「厳しい。2人入れるみたいな大きな結界維持しながら移動したことないから。それと私、あの子と話したい」
「厳しい、か。……仕方ない、転移しよう。追いかけてきたら困るから」
転移陣がない転移は代償を伴う。見える範囲なら何もないけど、見えない範囲まで移動するとなると代償が必要になる。
ほとんどが傷つく代償だ。内臓をやられたりどこか体の一部が無くなったり。兄さんなら治せるんだけど、兄さんが傷つくのは嫌。それに結構な痛みがあるらしく、何度かそれをした後私に気がつかせないようにか、唇を噛み締めながら小さく呻いてたのを何度か見てしまっている。
内臓とか体の一部無くなって痛くないはずがないんだけどさ。
「駄目。兄さんが傷つく。私があの子と話すから。止めさせるから、ノアの所に行ってて」
「俺がなんだっていうんだ。傷つくなんて大したことないぞ、だから────」
「駄目だって言ってるでしょ!どうでもいいからノアのとこ行ってて!」
大したことないなんて嘘。大事にしてくれてるのはわかってるけど、それとこれは別だよね。
ノア、見つけられるかな?地面の中に本当にいたらわからないよね。
「……わかった。無茶は絶対にするなよ」
不満そうにして兄さんはそう返してきた。それを聞いて私はまた影の中へ戻ります。同じ闇の魔法だからか、防御はそれほど難しくないんだけどこっちの方が早い。
セネルの影まで来ると、彼女の真後ろから私は出た。
攻撃されませんように。
「ねえ。こっち」
「っ!?【影よ────」
「あっあっ違うんです戦いたいわけじゃないんです!」
今の状況でいきなり自分の後ろに現れた人に対して攻撃しないなんて無理ですよね。
魔力を集め魔法を使おうとするセネルの手を慌てて掴む。セネルはビクッと震え、掴まれた手を見た。
「ごめん、びっくりさせて。話がしたい。君は、日本人?」
丸くなる目、驚いたように開けられる口。
「あな、たは……」




