第1話 うーむ、初っ端からこんなですか。
3章1話です。主人公視点に戻ります。
「さぁ来て!全てを包み無くしてしまおう!【宵闇】!」
「闇を切り裂き光をもたらせ!【奇跡の一光】!」
闇が広がったと思えば次の瞬間には眩い光がその闇を追い払う。
光と闇、白と黒。
2つがぶつかり合い、大きな音と光を発生させる。発生源である2人の人間の周りの地面は抉られ大きな凸凹ができていることから、近寄れば跡形もなく肉塊と変わり果てるであろうことがよくよくわかる。
「早く行きましょうって。死にますよこんなとこにいたら」
「そうだけどさ……」
そんな中、私とノアは影の結界の内側にこもっていた。半透明の影の結界の中から見える外は、魔法が飛び交ってて、うん。それ以外見えないや。
魔法を使っている片方は兄さん。私いるって知ってる上でこれですよ、相手がどれほどかよくよくわかるでしょ。
相手の女は、そう、女。薄紫色の長くふわふわとした髪をたなびかせ、闇の魔法を打ち出す。闇なんだよね〜。私と被ってるの嫌だなぁ。
なんてふざけてる場合じゃなく。
「結界より先に地面が保ちそうにないですね。下掘って行きます?まあこれでも僕は土属性ですからね、生き埋めにはなりませんよ」
「ええ……絶対暗いから嫌だ」
ひび割れが結界の中にまで来てる。地面の下までは流石に結界入れてないから外の衝撃に耐えられなかったみたい。
で、闇の彼女なんだけど。
闇属性で転生者で病んでる。
あははどれだけ詰め込んだの?しかも格好はゴスロリ、腕に包帯巻いてるよ。すごいね、そっちの病気でもありそうだ。病んでる時点でお察しですが。
でも可愛いから許されるね。薄紫の髪と黒いフリルの服がよく似合ってるの。
彼女と知り合ったのは少し前。詳しく話すと長くなるからやめるけど、短時間の内に色々あって私は彼女が転生者だと知って、彼女は私が転生者だとは知らないまま闇属性の魔法の使い手だと知って、『光と闇が同時に在り続けることはできない!光の内に闇は生じても、闇の中に光は生まれない!』なんて言い出してそれがなんか兄さんの逆鱗だったらしく冒頭に戻る。
ちなみに彼女も乙女ゲームの登場人物なんだけど……中の子はその乙女ゲームを知らないっぽい。もちろん悪役。名前はセネル。
知らないと話が始まりもしないんだね……彼女の話聞く限り、ヒロインらしき子はいるっぽいけど。
両親共に亡くなり、家にいるのはセネルを溺愛する執事と、怖がる使用人たち数人。あ、領主の娘なんだよね確か。その執事がものすごく有能で、ゲームじゃ裏で色んな手回ししたりセネルのしたこと全部もみ消したりしてた。この執事ルートもあったな。執事とくっ付くと、幼い頃から世話するセネルを捨てることはできない執事のおかげでセネルはこれまでと同じ生活ができるけど、他のルートだと悪くて一家没落、よくてすぐに他所に嫁がされてる。
ライバルだしそこまでしなくてよくない?とは思ったよ。ゲームでセネルがしてたことはローズがしてたことより本当に小さくて可愛いことだったもん。
でもあれだなー、このゲームでも“闇属性”は悪ってのがあったんだろうな。やった時はそこまで考えるなかったけど。
ゲームじゃご両親健在だったけど今亡くなってるらしい。どうしたんだ。それでヒロインは転生者でもなんでもなく、ゲーム通りに料理人の男に一目惚れして使用人としてセネルの屋敷に雇ってもらったけど、この世界の“常識”がわかる子だったからセネルの属性を知って辞めてしまったらしい。ゲームじゃなんで辞めなかったんだろうね?
「じゃあどうするんですか。あの戦いの中に突っ込む?」
それもいいかも。私が行けば兄さん目さめるでしょ。一気に。セレネとは私ちょっと話したいし。前世は他の世界にいました、なんて兄さんたちに言っても心配されるだけだから言ってないんだけど、転生者同士ならいいよね。
「行ってくるわ」
「えっ、いや冗談で……って結界解こうとしないでください!?僕死にますから!」
「地面の中に潜っときなよ。私、離れた所に結界放置なんてしたことないからどうなるかわからない」
渋い顔をしたノアを置いて私は結界の外に出た。数多くの魔法が飛び交い、地面に穴が空く。そんな中を私は歩く。魔法は当たらず目の前の地面が消えても歩き続ける。
ふっふっふ、私も兄さんに色々教えてもらったからね、この程度なんともないのだよ。魔法ってほんと便利。
さ、早くこれ止めましょう。ほんとはこんなことしてる場合じゃないし、こんなことして絶対に不味いから。私たち(主に私)の立場的に。
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