第32話 うーんおかしい。
なんでも、兄さんは病気って嘘ついてここまで来たらしい。
あの街で私の状況を聞き、追われていたミーシャに合流し、シーナと会い、ミーシャを待機させ、シーナと共に私を追っていたルス教の者たちを改心させ、ここまで来た、と。
シーナが居ないのはミーシャを迎えにいってるからだって。シーナと兄さんってそんな共闘できるような間柄だったのか……なんか合わなさそうだったからびっくり。
そしてやっぱりミーシャ、大変なことになってた。謝らないと……。
「すっかり連絡するの忘れてた……」
「いつも夜にするもんなぁ」
習慣になってるから、したつもりでいた。
「ま、良かったんじゃないですか?これで追われることもなくなったってことですし、どうせローズに会える正当な理由できたとか思ってそうですし」
「いや、結構派手にやったから余計に悪くなったかも。でも大丈夫だぞ、もう俺がいるからな!」
兄さんはずっと私の肩に手を回して自分の方に抱き寄せている。あんまり体重かけたら悪いかなって思って斜めの姿勢のまま頑張ってたんだけど途中で筋力の限界が見えた。もう全部体重かけてる。
派手に、か。何をしたんだろう。気になるけど怖くて聞けない。
「兄さん、仕事はどうするの?」
「病気療養で実家に帰ったことにする。まあな?本当は騎士辞めてローズといたいけど、これからの将来のこと考えたら一定の収入が得られる仕事があった方がいいし、まあ俺ならなんでもできるけど今の身分便利だし。全部考えたらやめない方がローズのためなんだ。ごめんな」
いや、仕事して。嘘ついてまで私に付いててもらわなくて大丈夫だよ!?
「ルス教にももう今回のローズのこと伝わってるはずなんだ。そこら辺早いから。そんで、追ってた者たちが全滅したのもたぶん。悪い、これからルス教自体を潰さなきゃならなくなった。俺1人で行くべきなんだけど、離れてる内に何かあったら困るからこれからは俺も一緒だぞ。安心しろ」
そっか、私一部の信者に追われてたわけじゃなくて、『ルス教』に追われてたんだ。
捕まってたらどうなってたんだろう。拷問?処刑?火あぶり?
怖すぎる。
「まあ……シンくんが大丈夫っていうなら大丈夫なんだろう。これからよろしくな、心強いよ」
「はい。遠くへ行く任務も何度か経験してるので足は引っ張らないはずです。よろしくお願いしますね、ナラルさん」
兄さんいたら安心だし、いっか。
…………よくないよ。
もし嘘ついて休んでるなんてことがバレたらどうなるの?兄さんの嘘は1人じゃつけない嘘だ。他の人も巻き込むことになる。そこらへんちゃんと考えてるのかな?
「兄さん、嘘ついてるってバレたらどうするの。共犯の人はどうなるの」
「バレないよ。もしバレても大丈夫だ。ユーラたち連れて逃げればいい。……オーマは囮だな。最悪、俺の全魔力使えば国1つの認識くらい変えられるはずだし。ああ、大丈夫だ」
怖っ。兄さん強すぎる。
でもそういう問題じゃないよ……。
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