シスコンは激怒した
シン視点、途中真ん中に別視点入ってます。
『神の裁きを!』
『うわぁぁぁあああああ!?お許しください────っ!』
だいぶ制裁したな。魔力を使って辺りを探ったけど、新しいものは感じない。
制裁って言っても頭の中ちょっと焼いて認識変えて、ついでに魔力貰ってるだけ。常識的だろ?まあ、ちょっと普通じゃない方法で魔力奪ってるから制裁受けた奴らは今まで通りにはもう魔法使えないけどな。最大魔力量減らしたのと同じだから。
ローズのことでこんなことされてるのに殺してないだけ俺偉いよな。感謝してほしい。
「ねぇ。女神の居る方向……違う、ローズちゃんのいる方向に司教向かってるらしいんだけど」
「なんでわかるんだ?」
「さっき飛んだ時に合図が見えたの。動いたら青色、やばそうなら赤色の炎って。るーくんの方は結界消えたら私わかるんで。そうじゃなくてもるーくんの魔法ものすごい音出せるし」
さっきまで敬語を所々使ってたのにもうそれすらほぼない。まあ仕事をしてくれればなんでもいいか。
それより大司教だ。司教がローズの元へ向かってるだと。
恐らく俺たちの行動は大司教にも伝わっているだろう。なのになぜ撤退しない?
「行くぞ。先回りしてローズを守らないと」
「もちろん」
もし、ローズに何かされていたら流石に俺、殺さないなんてことできないな。
●●
「くそっ……なんなんだ」
シン達が追っている目標、大司教の男は馬車の中で苛ついていた。
この男、信仰心はその地位に就くだけあり、そこそこ高い。光が1番、他の属性は光に従うべきだと、ルス神こそ唯一無二の絶対神だと。
そんな考えになったのも彼の魔法の属性が光であるからで、幼い頃からそれはそれは丁重な扱いを受け育ってきた。
光属性と言えども努力し常に魔法を使わなければ、光魔法が起こす奇跡と言えるような魔法は使えない。
彼は自分の属性だけに酔い、強く大きな魔法を使えるようになる努力などしてこなかった。だから影で言われているのも知っている。『飾りの光』だと。
大司教などという地位にまで来たが、これ以上の出世は望み薄。教皇は代々教皇家の長男が継いでいて、枢機卿は他の大司教が指名されるだろう。
だが彼にもチャンスはやってきたのだ。
滞在していた街に、闇属性の魔法の使い手が現れた。
ルス教にとって闇属性は排する対象であり、闇を討つことこそ最大の使命。これをチャンスと言わず何という?
その闇属性の者を追い始めたのは良かったが、なかなか見つからない。夜は流石に動けず時間を大きくロスした。その間にもっと遠くへ逃げてしまっているのかもしれないのに。
そして朝になり、入ってきた情報が『信者達が神罰により倒れていっている』というもの。
「主はこれが間違っていると……これは、間違っていると仰られるのか……?」
闇属性の魔法が使われたのは確かだった。それを見分ける訓練だけはずっとしてきているのだから。
「闇など……穢らわしいものを、肯定するというのか……っ!」
彼が怒鳴るように声を上げた瞬間、外から発生した眩い光が馬車の中にまで入ってきた。
『悲しいことです。主の思いを理解頂けないとは……』
●●
アレクと合流した。俺を見てびっくりしていた。とりあえず司教が向かう方向に行ってもらい、俺とシーナは後ろから挟み撃ちする。
「悪の根源……そもそもこの人が滞在してなきゃ……あれ?そもそもラクスが、いや違うな、ルッカがいけないんだ。あの馬鹿女が付いてきて無けりゃこんなことになってなかったのに……」
「どうでもいい。やるぞ」
「へぇへぇ」
こんだけのことしたしな、後処理が面倒だなぁ。
司教がいるらしい馬車はすぐ近くにある。高そうな馬車だ。真っ白な車体に、金の縁取り。そして大きくルス教のシンボルが描かれている。
窓には布が引かれていて中は見られない。でもあれだな。この司教、光属性の魔法使う。別に司教は光属性じゃなくてもなれるけど、こいつその地位まで行くの楽だっただろうなぁ。光だし。信仰対象だし。
でも魔力ショボいなぁ。大した魔法使えないなこいつ。
シーナが降りてくるのに合わせ、光を発生させる。その光で布が透け、中の人影が見えた。
『闇など……穢らわしいものを、肯定するというのか……っ!』
…………。
……穢らわしい?闇が?闇が穢らわしいっていうことは、ローズが穢らわしいって言ってるのと同義だけど。
『悲しいことです。主の思いを理解頂けないとは……』
シーナの言葉。ああ、悲しいな。この司教の頭は悲しすぎる出来だ。
『お前は……っ、なんなんだ!』
司教、出てきた。教会の偉い連中って大抵ブクブクしてるけどこの男はそうでもない。
『私は主の思いを伝える代行者にして執行官。これだけしても罰が足りませんか?足りませんね。神よ栄光あれ』
これだけ信者潰してても行動止めないってほんとアホだよな。
と、その言葉に合わせて魔法を放とうとしたんだけど……。
『あり得ない!主が、ルス神が!闇を肯定するなどっ!穢らわしき闇を!あんな、あんなものを肯定するなどあり得ないことだ!』
あんなもの?
ローズの魔法だぞ、お前のショボい光よりよっぽどいい魔法だぞ。
穢らわしいとか、何、なんでお前、ローズの何を知ってるの?
『穢らわしい?それは主が決めることです。思いを無視するというのなら────』
「お前は死ね」
我慢出来なかった。
ローズを馬鹿にされて、穢らわしいなんて言われて。これで我慢できたらローズのことを本当に思っているなんて言えない。
「はっ?誰だお前は!」
「【光による神の裁き】」
今までよりも魔力を込め、司教1人に向けて放つ。
光の奔流は俺が掲げた手の上空から一直線に司教へと向かい防御される間も無く司教を飲み込んだ。
これでこの司教は終わりだ。人格も何もかもを壊してやった。だからこの男は死んだも同然。戻ることもない。
「なっ、し、司教様!」
「お前らもだよ!」
ルス教なんてのに入ってる時点で同罪だからな。その考え、お前たちが1番忌避するものを肯定する認識に変えてやる。
1人残らず!
次話で主人公に戻ります。




