シ(スコ)ンは行動(暴走)する
すみません1話で終わらせるつもりが……。
日付が変わって3時間経った。
ローズから連絡が無い。
日付が変わるまでは、まだ移動中かもと思って俺から連絡するのはやめておいた。でも日付が変わって1時間後、そろそろいいかなと判断し俺から連絡したけど応答がない。
まだ移動中なんだ、そう思って30分後にまたかけ直したが、また出ない。今まで何もなかったからこの時点までは特に何も思わなかった。
でも2時間経ってそろそろおかしいと思い始めずっとかけ続けるも、魔道具からの反応はない。
やばい、心配すぎる。どうしたんだろう。何かに巻き込まれてる?何か危険な目に遭ってる?連絡できないくらいの大変な目に?
「……どうしよう」
何かあったら。ローズに何かあったら。
駄目だ、行こう。ローズのいる街はわかってる。聞いたから。まあこの国からだいぶ離れてるけど今から出たら朝には着いてる。
後始末が面倒だが、そんなことどうだっていい。ローズが1番。
そうだ、少し前に流行した病があった。治療法が出てからは落ち着いたが、まだかかる者も少なくない病が。あれなら長い間休んだって問題ない。それに罹ったってことにするか。
王から信用され光の魔法を使い実力も充分にある俺は、大抵の我儘はまぁ許される。
もし転移魔法だとかその他諸々ちょっと不味いことがバレたら流石にやばいけど。
病っていう嘘がバレたら仕方ない。不味そうなら逃げよ。もしもに備えて調べた結果、この国で魔法だけ見たら俺を越す者はいない。だから隷属化の心配もない。問題なく逃げられる。
よし、こういう時のために作っておいた遠距離連絡用の魔道具と書き置きを残して、と。
「行こう」
◼️◼️
光の魔法を駆使し、短距離の転移魔法を使い休まず移動した結果、日が昇る前にその街に着いた。
当然門は閉まっていたから仕方なく街周囲の高い塀を乗り越えて入った。
こんな時間だから人はほぼいないと思っていたが、そんなことはなく結構の人が活動していた。夜も休まない街なのか朝が早い街なのか。
どっちも違った。
なんでも『青いワンピースを着た銀髪の女』が闇属性の魔法の使い手らしく、しかもルス教の大司教がこの街に滞在していて、街から逃げたその女を追っているんだそう。
女に味方していた少女がこの街の住人で、まだ街で隠れているから探しつつ大司教からのいい知らせを待っている、と。
ローズだ。
「……っ、くそっ」
何があって属性がバレたんだ。原因は?
とにかく、もうここにはローズはいない。なら用はない……が、ローズに味方した少女というのが気になって俺はまだ街を出ていなかった。
ローズの属性を知っても味方していたと。
あの村にいた頃は、別に普通のことだと思っていたが外に出ればそんなことはない。偏見に溢れ、絶対悪として思われている。
ローズが絶対悪?そんなことは絶対にないと断言しよう。
他のやつは知らないが、ローズは絶対に違う。優しくていい子だ。
でも世間の見方は違う。仕方のないことだが、とても気にくわないが、世界的に闇は悪だと決まっている。それを覆すのは俺でも難しい。
そんな中、ローズを見捨てなかった少女がいる。
気になるしお礼を言いたいし助けたいに決まっている。
噂の少女を探して半刻程過ぎただろうか。
見た目は聞いたし、家も聞いた。見たことのない少女1人探すのは難しいかと思ったが、ふとその家の横の、人が入れそうにない細い隙間が気になり魔法で探れば何か結界に当たった。
この先に少しだけ開けた隙間があるらしい。
いるな、ここに。
「どうやって入ったんだ……」
とりあえず中へ転移する。通り抜けるのと認識を逸らす結界だったから簡単に転移できた。通り抜けるわけじゃないしな。思った通りに少女がいた。
少女の親は、少女がローズに味方したと聞いてもただ、帰って来ないことだけを心配していた。こんな近くにいたのに。
ようやく日が昇ろうとし、辺りはほのかに明るくなってきているが、家の壁に囲まれたここは暗い。視界強化の魔法の効果をあげればはっきりと少女が見えた。
「君がミーシャか?」
「……あな、たは……?」
赤みの強い茶髪を三つ編みにして前に流した眼鏡の少女。聞いた通りだ。髪型を変えたりしているかと思ったが、そのまんまだった。ここに隠れていたのならその必要はないのか。
「君が、ミーシャか?」
もう一度聞く。ほとんどあり得ないがもし違えば少女へ自分のことを話す必要はない。
「…………あなたは誰なんですか。暗くてよく見えないので名乗れないのなら顔を見せてください。こんな所に急に現れるなんて、普通の人じゃないです。今危険を犯すわけにはいけないんです。私がどうかなれば…………っ!」
普通じゃない。ああ、光属性だし普通ではない。妹は闇属性だし。
手元に光を灯し、少女と自分の間へ浮かべ見えるようにすれば少女は急に言葉を止めた。魔法に驚いているのか?
「これでいいか────」
「お姉様のご家族か親戚か何かですか!?絶対そうだ、やだそっくり……!」
俺の言葉を遮り少女は興奮した様子で詰め寄ってきた。
なんなんだ。




