第27話 まあ当然の反応ですよね。
登場人物紹介には書きましたが本編には書いていない気がします。
ラクスは水属性です。
これはもう誤魔化せない。
言うしかないか。
ラクスだけ態度が変わらないなんて有り得ないから、ラクスとはこれで終わり。
もし、もし。受け入れてくれれば。それはとても嬉しいこと。
「……私、黙ってた」
「何を。なんかそういう系の人なわけ?言葉で人の行動を操るとかなんとか」
そんなんじゃない。そういうのなら全く問題なかったんだ。
「違う。私がラクスの前で戦いたくないのはこれが知られたくなかったから。私、闇属性の魔法を使う。黙っててごめん……」
隣に立つノアが、背中に手を添えてくれる。今まで言葉を発していなかったミーシャは私の手を握ってくれた。大丈夫。ラクスの反応がどうであれ、私に付いていてくれる人はちゃんといるから。
「……は?闇……?お前が?闇属性?……うわ、無理」
いつものような、なんでもない表情から一転、蔑むのと恐怖が混ざったような表情に変化し、一歩後ろへ下り私から離れていく。
うん。
その反応が普通。ノアたちが異常なだけ。
「お前……騙して、たのか」
「騙してなんかない」
「言わないで、何が目的だったんだ!?」
「そんなの何もない」
だんだんと激しくなっていく声。
「そいつらみたいに仲間に入れるつもりだったのか!?そいつらは、お前が洗脳してるから一緒にいるんだろ!」
「違う、そんなことしてない」
「あり得ない。魔法を解け。解放しろ!この────悪魔め!」
ラクスが後ろに手を引けば、そこへ水が集まっていく。攻撃してくる気だ。
「ローズ!」
「いい、私がする。じゃなきゃ、操ってるからって言われるに決まってる」
街では魔法をできるだけ使わないようにしてる。どこで見られているかわからないし、それで何か言われたら困るから。
この街にはもう居られない。来ることも、できなくなるかも。
今は黄昏時、充分だ。足元の影へ魔力を流せば、影が水溜りのようにトプンと揺れる。
「悪魔が……っ!」
「……私、そういうのは言われ慣れているから」
鋭く形を変えた水がラクスから放たれる。
ミーシャに繋がれた手とは逆の手を下から上へ上げる。それにつられるように影が伸び私たちを水から守った。
……仕方ないよね、もう。
「ラクス……黙ってたのは悪いと思ってる。その反応だって今まで出会った人を見れば想像はついたから」
盾のように私たちを守っている影へ、水は休むことなく襲ってくる。影の向こうに見えるラクスの表情は変わらず、私を睨みつけている。
「でも、そもそも先に着いてきたのはラクスだ。私たちと一緒に来ると言い出したのだって」
そう、これを忘れたらいけない。ラクスが自分で判断したことなのに。
「それで騙したとか言われてもどうすりゃいいんだって話なんだよね!お前は自分の行動に責任持てないような子供なのかよ!」
守る盾から一転、影の弾丸をラクスへ向け放った。黒い弾丸の雨がラクスへと殺到する。
迫る弾丸に慌てた様子で魔法を使うラクス。ラクスの前に氷の壁が現れる。経験から言ってもラクスの実力は私より上。別にラクスを倒したいとか戦闘不能にしたいわけじゃないから、それでも問題はない。
でも放たれる影の弾丸はだんだんと氷の壁を削っているのが見える。守ることに慣れていないらしい。
「お姉様……」
強く握りなおされた手に答えて、私もミーシャの手をきちんと握る。
ラクスは守ることに必死らしく、言葉を返して来ない。氷の向こうでどんな顔をしているのかはわからないけど。
……と。
「【氷雹牢」
はっきりと耳に届いたラクスの声。
私だけを囲むように氷の蔓が地面から伸び始める。蔓とは別の場所から氷の棘が地面から突き出し、ノアとミーシャを私から引き離す。
「ローズ!」
「お姉様!」
棘は鋭く、慌ててミーシャの手を離して突き飛ばさなきゃ怪我をしていた。ノアは何もしなくても大丈夫だと思ってたから注意してなかったな。平気みたい。
平気じゃないのは私か。
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