第25話 なんてカオスな。
「なんでなのよ!私は!ヒロインなのよ!なんで悪役のローズに盗られるの!?」
「私もヒロイン。そしてローズちゃんはめが……悪役じゃない」
「くっ……なんでヒロインが2人いるのよ!……そうだわ、あなた偽物ね!“シーナ”は髪短くなかったもの」
「気安く呼び捨てにしないでもらえますぅ?あんたこそ偽物でしょ?ゲームのルッカはこんな頭悪そうな女じゃなくて、もっと努力家で一生懸命で優しい顔した女の子だったもん」
地獄が繰り広げられていた。
「ローズ、その服は?村で着ていたワンピースに似ていますがどうしたんですか?似合ってます。可愛い」
「私が付け足したんです!ノアさん流石ですね、お姉様にとても似合ってますよね!!」
「はい。ミーシャの力でもありますね。すごいです。これならあの店が繁盛しなくとも、服屋でやっていけるんじゃないですか?」
「えへへそんな〜。でもお姉様のこの服は最高に上手って自分でも思います!」
隣は私についてずっと話して盛り上がってるし。
あれ。私について盛り上がってるのはどっちも変わらないのか?
「……カオスだ」
状況がおかしい。
ラクスは新しく増えた女の子に腕を掴まれたまま死んだ目で突っ立ってて、ナラルさんは気がついたらどこかに消えてた。
ルッカだって。うん、やっぱりラクスのゲームのヒロインだ。そして言ってること的に転生者。シーナが転生者なのは確定してるし、転生者多すぎじゃない?
「わかったわ!あなた、ローズに洗脳されてるんでしょ!だからそんな変なこと言うのよ!絶対そうだわ!おかしいもの!ゲームのルッカは優しそうだけど私は極悪顔だとか!……ゲームのルッカ?なんでそれ……あんた転生者!?」
今気がつくのか。もうわかってる上で話してるのかと思った。それにシーナ、そこまで言ってない。
「めがみ……じゃなくて、ローズちゃんがそんなことするわけないでしょ!あんた頭逝ってんじゃないのっ!?謝って!侮辱したんだから!許さない!ぜっったいに許さないから!ああもう謝罪なんていらない!後悔させてやるっ!!」
「何っ!?やっ、いやぁぁぁあ”あ”あ”あ”あ”!」
シーナがキレた。
風が勢いよく吹く。ルッカの体を持ち上げ、上空へ運ぶ。ラクスも連れて。
「しーちゃん!ここ街の中だからダメだよ!」
いや注意するとこそこですか?
シーナがキレた理由は、私?さっきから時々言い間違えるめが……とか女神って、私?女神って女神だよね。何かと間違えてない?
でも話の流れ的に私なんだよね。ローズって他に居たっけ?いないね。
「向こうは面白いことになってますねぇ。ラクスだけ助けますか」
止めるでもなく、笑いながらルッカの方を見ると、右手を突き出して下から上に上げる動作をした。
その動きに連動するように、地面から太い蔓が勢いよく伸びた。伸びた蔓は上空に浮かぶラクスを掴むと体に絡みつき、ルッカから引き離す。ゆっくりと地面に下ろすと、スルスルと小さくなった。端に生えてた雑草だったらしい。
「あ、ありがとうノア」
「いいえ。大したことではありませんよ」
ラクスが下されたことに何を言うでもなく、シーナはルッカだけをものすごい顔で見つめたまま。ルッカはどんどんと上昇していく。
あれ結構やばそうじゃない?




