第23話 楽しい日。
外へ出ても変な目で見られることはなかった。まあ“ローズ”の顔はいいからなぁ。なんでも似合うなんて羨ましい限りだ。前世の私なんて良くて中の上。至って普通ってこと。こんなフリフリの服なんて着たことない。
そもそも現代日本でフリフリ着てる人はほとんどいないよね。趣味か、本当にそれが似合ってる人か、コスプレしてる人くらい。
でもここは日本じゃない。フリフリ着てる人はそこそこいる。特に目立つとかもない。
「よく似合ってますよ。お姉様は表情が硬いですからね、あ、悪口じゃないです。表情が少ないのでお人形さんみたいで綺麗です」
褒められてるのか、それ。
ま、似合ってるって言われるのは悪い気がしない。嬉しい。
絶対にノアたちには見せられないけど。
「さてどこから回ります?ここら辺なら任せてください!大抵はわかりますよ!」
「とりあえず何か食べたい」
「ここは私の家をおススメしたいところですけど、この街を案内する約束ですからね。私の家の次にオススメのお店に行きましょう。……あ、露店で何か買って食べ歩きします?そっちでもオススメあるんですよ〜」
とても楽しそうにミーシャは話す。さっきの私の魔法は見なかったかのように。
いや、見て認知はしたんだろうけどもうどうでもいいんだろうな……。
「たくさん見たいから。そこらへんで何か買おう」
なんでもいいけど何か早く食べたい。起きてから何も食べてなくてお腹空いてるんだ。街は昼を少し過ぎた時間、まだまだお昼の匂いが残っている。
「じゃああそこで買いましょう。あそこのパンが美味しいんです。甘いのも美味しいんですけど、サンドイッチがオススメです。具を選べるんですよ!甘いタレに漬けた肉と、野菜を挟んだやつを私はいつも食べてます」
うん、特に何も感じない。恐怖だとかの悪い感情は何もない。隠すのが上手いだけかもしれないけど、私だって学んだからね。
ミーシャは私が闇属性の魔法の使い手ってことに特になんの気持ちもない。
嬉しい。
「なら私もそれにする。行こう」
◼️◼️
それから私たちは、服屋に行ったり露店でアクセサリーを見たり魔道具を売ってる店に行って店主に兄さんの作った魔道具を譲ってくれと言われたりお菓子を買ったりした。
ものすごく歩き回って、話して、笑った。
楽しかった。
もしかしたら、シーナともこんなことができていたのかも、なんてのも思ったけど。元気にしてるかなぁ。
「うふふ、楽しかったです。ラフィに自慢しよっと」
お揃いで買った髪飾りに触れながらミーシャは嬉しそうに話す。三つ編みの下の方に付けたその髪飾りが軽く揺れる。
フィオの分も買った。ミーシャが手紙と一緒に送るそう。
「私も楽しかった」
「本当ですか!?楽しんでもらえて嬉しいですっ!!」
そろそろ日も暮れてきたから帰って着替えなきゃ。ノアたちにこの格好が見られるのは精神的に死ねる。
もう少し話してたかったけどね。ミーシャにはその事情を説明してある。
「今日はありがとう。とてもいい日だった。この服も」
「いえ!私こそ最高の1日でした!朝から楽しみで楽しみで!どこかでお姉様がその服を着てくれているかも、ということだけで私頑張れますし」
どこにそこまで好かれる要素があるのかわからないんだよね、私。でもミーシャは悪い子じゃない。明るくて、とてもいい子。
「じゃあ、ここで」
「はい!ありがとうございました。滞在中、ご飯に悩んだらぜひ私の家へ来てくださいね!」
笑顔でその言葉に答えようとした時だった。
何かが私たちに向かって急接近してくる。
「も〜無理ぃぃいいいいい!!これ以上のお預けは耐えられないっっ!」
短い金髪の……女の子?
あれっ、この声聞いたこと…………。
「シーナっ!?なんでいるの!?」
ついに来た




