第22話 ワンピースは私が闇属性という事実より上。
「いや、驚きましたし怖かったですけど、それよりワンピースですよ?こんなにもカッコいいお姉様がワンピースですよ?それ以上のことあります?」
私の魔法を見たミーシャは、闇属性の魔法だと気がついた。まあ見たこともない魔法を使ってて、しかも影からワンピース取り出すとか闇と結びつけるのは簡単だよね。
でもそれよりワンピースが気になったらしく、気がついたら取り出したワンピースを私は着ていた。着させられていた、が正しい。でもやっぱり少し短い。
属性がわかっても変わらない態度で接してくれている。そのことが何かとても嬉しくて、断れなかったってのもあるかな。
「……これは丈が合わないから」
「少し短いですね。……そうだ、手直ししましょう!私、裁縫得意なんですよ〜!家から道具取ってくるので待っててください!」
止める間もなく、ミーシャは部屋から出て行ってしまった。
これで怖いのは、このままミーシャが戻ってこないこと。どれだけマイナス思考なんだ、って思われるかもしれないけどこれまでの経験的にあり得なくはない。経験って言っても、こんな風に1回受け入れて怖いから逃げるなんてことは無かったけど。想像できる、ってだけ。
こういうことがあるたびに、ノアとナラルさんがどれだけ“普通”じゃないかってのがよくわかる。
あの村に来た理由だって、闇属性の魔法だったのに。不思議すぎる。
影から出したワンピースを握り、ベッドに座ってそんなことを考えている内に部屋の扉が叩かれる。叩かれたっていうよりか蹴られたような音。ミーシャ?
「誰?」
少しだけ警戒して扉をゆっくりと開く。
扉の隙間から見えたのは、たくさんの袋とその山の向こうに見える頭。
「すみませんお姉様!流石に扉が開けられなくて……蹴って開けさせるなんて酷いことを……」
「い、いや気にしてないけど……大丈夫?」
ミーシャだった。それがわかって、笑顔になってしまうのがわかる。
「大丈夫です!扉支えておいてもらっていいですか?」
入ってきたミーシャは持っていた袋をベッドの近くに下ろし、広げ始める。
「さ、お姉様!たくさん持ってきましたから!可愛い服にしましょうね!」
●●
確かにミーシャは裁縫が得意というだけあって、できた服は素晴らしいものだった。普通にお店で売れそうなレベル。
だけどこのできた服を着るのは私なんだよね。
「すっっばらしいですお姉様っ!!」
短かった丈にフリルを付けて長さを足すだけならまだ良かった。ミーシャはそれだけじゃ不満だったらしくて、どんどん装飾を増やしていく。
気がつけば私なら絶対に着ないフリフリワンピースができていて。
ここまでしてもらって『着てください!』っていうミーシャのキラキラした目を向けられたら断れるわけなくて、私はそのワンピースに袖を通していた。
ミーシャに髪も結ってもらって。
鏡がないから今私がどんな姿なのかよくわからない。ミーシャは素敵ですだとか可愛いですとかしか言わないし。
まあ、ローズの見た目なら変ではないはず。
「さ、遅くなっちゃいましたけど行きましょうか」
これで外に行くの!?




