第20話 この店の秘密
ノアの言葉を聞いた途端、ミーシャは笑顔のまま固まり黙ってしまった。
やっぱり聞いたら駄目なやつだったんだ……。
「……えぇっと?どういう状況ですか?」
「…………そう、ですね。はい。いずれバレますから。オムライス以外の料理の評判が悪いんです」
オムライス以外の料理の評判が悪い?
不味いのかな?
「ふむ。じゃあ1つ頼んでみようか。1つくらいなら食べられるだろ?おススメは?」
まだいけるっちゃいけるけど。ナラルさん、チャレンジャーだな。私なら評判悪い料理わざわざ食べたりしない。
「おすすめですか……。どれもおすすめしませんよ、私は」
ええ。ミーシャからしても駄目なやつなの?
それって料理店としてどうなんだろう。
「どういうこと」
「お姉様。あのですね、しょっぱいんですよ。味が濃いんです。最近ほんと酷くて。もう二人とも年なんですかね?オムライスは前からの作り方で絶対に分量変えないんで変わらず美味しいんですけど、他のやつは気分で作り方変えたり調味料変えたりするんでもうダメです。私、何回も言ってるんですけど聞いてくれなくて」
味が、濃い。いやそれだけでこの店に来ない理由になる?だってオムライスはこんなにも美味しい。オムライスを食べるために来る人くらいいそうなんだけどな。
「初めての人はオムライスなんて聞いたことない食べ物頼みませんし、両親が味付けを変えない限りこの店はこのままです。ま、普通の生活はできてる上にのんびりできるんで私はこのままがいいんですけどね」
そっか、普通ならオムライス頼まないんだ。まあなんだそれ?ってなるもんね。
うーんでも納得いかない。
「そんくらいで来ない理由になるかぁ?」
ラクスも同じ考えだったらしい。
だって、一度でもオムライスを頼めばこの美味しさはみんなわかる。一度食べた人が他の人に伝えて、またその人が他の人に伝えて、ってどんどん広まってくはずなんだけどなぁ。
「それ以外の理由はわからないですね。あとは他の店が父さんの変な噂流してるとか、向かいの店主が母さんに片思いしててこの店が経営危機になった時に助けていいとこ見せて母さんの心を射止めたいとか思ってるみたいなことしかわからないです」
いやそれじゃん。
お父さんの変な噂ってなんだろう。ていうか向かいの店。酷いな色々。
でもこの店が潰れてないのはオムライスのおかげかな?
「お父さんの変な噂とは?」
「あ〜確か、『あの店の料理を食べると禿げる。証拠に店主が禿げてるだろ?』だった気が。違うかな?『あの店の店主は酒癖が悪い。呑むと料理に使ってた熱々のフライパンを頭に被るんだ。証拠に禿げてるだろ?』だったかもしれないです」
……突っ込むべきかなこれ?




