第18話 まさかそんなことないですよね?
「また面白いことになってますね」
組合から戻ってきて私とミーシャを見るなりノアが言ったことはそれだった。
「ノアさんですね!聞いてます!聞いた通りにカッコいいです!」
ミーシャは店を見て回る私についてきて、ずっと1人で話していた。私はそれに時々相槌を打ってただけ。
フィオと同じ。好きなものに対する熱意が高い系の。……なんか他にもこんなテンションの人いたような。
「誰こいつ。知り合い?」
ナラルさんにはフィオのことを話したことあるけど、ラクスには機会がなかったから話してない。
なんて説明すればいいんだ、ってね。これで笑うのはノア1人で充分なんだ。
「初めまして!お姉様の知り合いの友達のミーシャです!」
笑顔で自己紹介するミーシャ。別にラクスにも自己紹介しろ、ってミーシャは口に出して言ってないけど雰囲気がもちろんしますよね?という雰囲気だった。
有無を言わさないというのはこれのことか。
「……ラクス。前の街から一緒に旅させてもらってる」
「そうなんですね〜。ラクスさんも結構イケてますよね!お姉様には及びませんけど」
ラクスはなんだこいつって目でミーシャを見た後で私を見た。
何?
上から下まで眺めた後、また顔に戻ってくる。そしてなんとも言えない表情で私から視線を離した。
いや、何?もしかして自分と比べたの?比べないでよ、私は悪役だよ?攻略対象に及ぶわけないじゃん。
「で、どこかいい店あったか?何が食べたい?」
「えっと」
気は進まないんです。でもね、話を聞く限りすごく気になるんだよね。
ミーシャの家の料理店。
料理店繋がりでフィオと知り合った、って言ってたから別におかしいとこはないの。でもさ、フィオの時のことがあるからちょっと躊躇われるっていうか。
「私の家、料理屋やってるんです。ぜひ来てください!おすすめはオムライスです!オムライスだけで5種類もあるんですよ!」
「おむらいす……?」
オムライスはオムライスだよね。まだこの世界で見たことはないんだけどさ。浸透してない、っていうかそもそも無いんだろうなって思ってた。でもあった。
ミーシャの説明を聞いたけど、ミーシャのいうオムライスはあのオムライスだった。
食べ物は地球とほとんど変わらないし、調味料も結構な種類が世界に流通してる。でもやっぱり異世界らしさというか、乙女ゲーム外のものもあるからそこで地球との差を感じてた。
でもあるやつはあるんだね〜!久しぶりのオムライス。食べたい。あの卵とケチャップライスの組み合わせは大人になってもずっと好きだった。
「味付けした米の上に薄焼き卵を乗せたものです。卵の焼き具合も選べるんですよ〜。私はトロトロの卵が好きです!すっごく美味しいんです!」
悩むな。フィオのとこの店みたいに名前詐欺で全く別のものとか、量が多いとかだと辛い。ほら、ノアもフィオを思い出してるのか微妙な表情してる。
「……トロトロ卵…………卵」
「いいんじゃないか?なあ、ノア……ノア?」
ラクスはミーシャの話でそこに行く気満々だな。ナラルさんは話に聞いただけでどんなものか実物を見てないから、特に考えることなくOK出してる。
ノアは……。
「え、ええ、いいと思いますよ。一品で5人前くらい出てこない限りはどこでも……」
フィオのことがよっぽどトラウマになってるのか、ノアは遠い目をしながら微笑んだ。
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