第14話 女神を害するものは全て排除します。
シーナ視点
私は女神教信者、シーナ。唯一神であるローズ様を崇め讃える宗教。信者数?私1人だよ。でも想いはどんな宗教よりも強いって思ってる。
でね、今は悪魔を退治するところ。
村を出て1年半、女神を害するものは全て完璧に排除してきた。女神に祝福あれ。
特に大きなものはなかったんだ。魔物とか、ならず者とかくらいで。大抵は強風で追い払うか、風の刃で倒すか、最悪るーくんとかアレクに出てきてもらってた。
でもこれは対処がちょっと難しいかなぁ。
「誰よあれ……男……女……?くっ、こっち向けばわかるのに……」
「ルッカ、見つけたんだから隠れてないで声かけて行こう。依頼が終わらないよ」
「そうだよ、隠れる意味あるー?僕さっさと進みたいー」
「うるさいわね、ただでさえ最初からストーリー変わってるんだからここでヘマするわけにはいかないのよ。黙ってて」
「エルブ、オルニス。期限までにはまだ時間があるだろう?多少ゆっくりしていても問題はないよ。ルッカもそう思うからそうしているんだろう?」
「そ、そうよ。さすがレーツェルね。私のことをよくわかってるじゃない。後でご褒美をあげるわ」
「はは、ありがたいね」
離れた場所で隠れる男女たち。4人の男と2人の女。男みたいな話し方をして女をなだめてる、レーツェルって呼ばれてたのは女。うん、私その子だけ知らない。残りは知ってる。
この世界に複数のゲームが存在するのはだいぶ前に気がついた。女神を遠くから見守ってると、色んなものが見えてくるんだよね。最初は驚いたけどさ。ま、そういうこともあるかなって。女神が頂点なのは何があろうと変わらないし、気にしなかった。
でも今は別。女神に害ありそうだもん。
女神は他のゲームの攻略対象を仲間にしてた。気がつかない内に。私あいつ嫌いだな。前世でプレイしてる時は普通だったけど、なんかキャラ変わってるし女神に失礼な言動するし。
それにそのせいでそっちのゲームのヒロインが女神に害を与えそうになってるんだもん。もっと嫌いになった。
なんかヒロインもキャラ違くない?
……あれですか、彼女も転生者ですか。話のわかる転生者なら知り合いになりたかったなぁ。今まで転生者は2人見たけど、1人は乙女ゲームを知らない子でモブですらない八百屋の息子に恋しててストーリー始まってもいなくて、もう1人は腐ってる子で攻略対象たちをどうくっ付けるかに命かけてた。
2人とも元日本人だし、で知り合いにはなれたけどこの子は無理そうだなぁ。女神を害する者に平和は訪れない。
「しーちゃん、どうするの?」
今私たちは少し離れた木の上からその集団を見てる。声は聞こえる位置。魔法で隠蔽してるから声を出してもバレない。
どうするかなぁ。女神にバレない内に排除しときたい。
「でもなぁ。顔バレしてそうだしなぁ」
「……またよくわからないことが始まった」
あのヒロインが“シーナ”を知ってたら面倒なことになりそうだよね。
フード被って行こう。うん、バッチリ。旅始めてから私、髪をばっさり切ったからフード被れば全部隠れる。いいよね、可愛い顔だとどんな髪型でも似合うから。ヒロインで良かった……!
「あ、あの顔……!ローズ……!?なんで!?他のゲームじゃない!しかも悪役!……ということは隣のはノア……?なんで……?なんでノアと悪役が一緒にいるのよ。というかなんで私のものを盗ってるのよっ!」
「……ルッカ、あれは知り合いかい?知り合いなら話は早い。声をかけたらどうかな」
む。よろしくないですね。女神は決して悪役じゃない。女神は女神だ。女神を崇めよ。悪役だなんて許せないなぁ。しかも泥棒呼ばわりはもっと許せない。そもそもそんな性格じゃ男に愛想を尽かされるのも当たり前だね。
よし女神親衛隊隊長、シーナ行きます!




