第12話 だから無理ですって。
「マジ、無理」
ウィルフィスの街を出てしばらく経った頃。ラクスが一言、そう言った。
「まあ少しやり辛くはありますが……大したことではありませんね」
「ああ、護衛だと思えば何ともないな」
「……守りながら戦闘なんてしたことない」
そう、問題は私だった。
ノアとナラルさんはランク上げをしないといけないから、今までみたいに魔物を避けて移動するわけにはいかない。
なんかよくわからなかったんだけど、次に目指してる街で依頼完了の手続きができる依頼があって、それを受けたとかなんとか。だから魔物を倒さないといけないって説明された。
ということは、普通は依頼を受けた街でそういうやり取りを全部するってことだよね。旅しながらとか無理じゃん。難しいな、冒険者。冒険って付くのに色々面倒なこと多いんだ。1つの街を拠点にするのが普通だったりして。
で、問題の私なんだけど。
「血の匂いに誘われてきたみたいだ。正面3匹、左2匹右1匹。囲まれる前に倒そう。ラクス、正面の3匹を頼めるかい。真ん中がリーダーだ。ノアはローズを守りながら右の1匹を」
「言われなくても」
「一瞬で終わらせますから」
ラクスの前で魔法を使えないから、私は戦闘に参加できない。してもいいんだけどさ。嫌な目で見られたらちょっと私のメンタルがもう死ぬ。今までの累積で。ラクス、結構キツいこと言うからなぁ。たぶん私のガラスのハートじゃ耐えられない。
ノアとナラルさんは旅の途中で何度か護衛をしたことがあるらしくて、守りながら戦闘するのはそう苦ではなさそうだった。
でもラクスはそんなことしたことない。と、本人が言ってた。仲間みんな戦える人だから守るなんて考えなくて良かったんだろうな。
だから戦いにくいってさ。もうね、何度も私を見て『戦えるんだろ?戦えよ』って目してくんの。いい加減にしてほしい。ええはい、戦えますよ。戦えますけどそうしたらあなたはどんな反応をしますか。
戦闘なんてしたら兄さんに怒られそうだし。まあ言い訳なんだけどさ……。
そんなことを考えてる内に次の戦闘が始まった。
ノアの魔法が発動して、地面から槍のように鋭い土が一本、勢いよく生える。唸り声をあげながら突っ込んできた魔物は下から柔らかな腹を土に貫かれ、ビクビクと痙攣した後に息絶えた。一瞬。本当に一瞬だ。私いらないね!
簡単なことのようにノアはやってみせたけど、突っ込んでくる魔物に的確に土の槍を当てるなんて普通無理だと思う。反射神経?動体視力?まあどっちも良くないと無理だよね。
「ふむ……ラクスが苦戦してますね。真ん中がリーダー、ですが上位個体が2匹いる。手伝いますか。ローズはここにいて。何かあれば木の上にでも行ってください。まあ心配はしてませんが」
そういうとノアは私の返事を待つことなくラクスの援護に行った。
ナラルさんは2匹目を相手にしてる。1匹目はもう事切れて離れた所に倒れてる。ラクスは1匹は倒してるけど、残った2匹は上位個体らしい。ノア曰く。私にはわからない。少し大きかったかな?くらい。上位個体て何。進化したとかかな?まあとりあえず強いってことか。
うん、美男子が共闘って目の保養だよね。ノアが特に何も言わず離れたってことはもう近くに他に魔物はいないってことだし、2人をじっくり見られます。うん、うん。いいね、なんかちょっと苦戦してる感がいい。
っと、ラクスがこっち見た。
「のんびりニヤニヤしながら眺めてるんなら手伝えって!っ、おま、見て楽しんでるだろ!」
うわ〜ばれてら。




