第6話 複数のゲームが混ざった世界?
ユーラさんがお願いすることで兄さんは折れてくれた。
『ごめん、僕からもお願いしたい。さすがに遠い地で1人にするのは……シンの妹さんなら全く知らない他人より安心できると思うから』
仲がいいみたい。乱入してきた人とはちょっと違うっぽいな。立場関係がなんとなくわかる気がする。
それにしてもどうしてこうなった。ラクスと旅するなんて。
というかどうなってるんだこの世界。
1つだけじゃない、複数のゲームが存在してるってことだよね。ラクスのゲームと私のゲーム、何か共通点ある?乙女ゲームってだけじゃない?
まあ考えてもわからないことはわからない。
とりあえずラクスの方のヒロインとは会わないようにしよう。転生者の可能性高いし、“ローズ”は悪役。こっちのゲームを知ってる転生者なら悪役なのに!って面倒なことになるからね。
そういやヒロインって言えばシーナはどうしてるのかな。
よくわからない行動ばっかりしてたシーナ。仲良くなれてたとは思えないけど、最後の方は悪くはなかったと思ってる。シーナにもらった髪飾り、なんか持ってきちゃったけど使ってないな。シーナいないし、今度つけてみようか。見られたって何も言われないしね。移動中は失くしそうだから駄目だけど街の中なら大丈夫でしょ。
「何度言わせるのかな。私は戦わない。特に君の前ではね」
「何勿体ぶってるんだ。戦わないって全部俺らに戦闘任せて守ってくれってことか?あの女でさえそんなこと言わなかったぞ。ていうかそんなこと言ったらお前だけランク上がらないんだけど」
ラクスは冒険者。
私たちと共に行動することになったけど、今受けている依頼がある。依頼は途中でやめると違約金と罰則があるからやめられない。
依頼は誰でも受けられるわけじゃなくて、冒険者として実績を残してランクが上がると受けられる依頼が増えていく。上の方の人は指名されることもあるんだと。
そのランクなんだけど、よくある分け方だった。EからA、S、SS。もちろんEが1番下の登録したての人で、SSが1番上。EDCにはほとんど差がないけれどCからBに上がるのには大きな壁があり、BからAに上がるのにはもっと大きな壁がある。SとSSはもう別格。
私もそういう系の小説ちょっと読んだことあるから理解できる。異世界召喚か転生した主人公がすぐに強くなってSランクとかになるやつ。でも、よく今まで地球の日本で生きてたのにすぐに戦って魔物殺せるよね。不思議でしかなった。
今でもまだ私魔物苦手だもん……決して兄さんに叩かれたからじゃない。決して。
私の倒し方だと血が出ないからギリ大丈夫みたい。会わないように注意して進んでるし、ノアとナラルさんは魔物の気配がわかるのか少ししか出会わなかったし、遭遇しちゃってもすぐに2人で倒しちゃうから私の出番なんてほぼなかったんだけどさ。
で、ラクスと一緒にパーティ組むのならラクスと同じくらいのランクにならなければいけないわけで。依頼の関係でね。パーティ内で1人だけ高ランクなのは推奨されてない行為らしいし。1人の負担がすごいからかな。
私たちのランクは、ナラルさんとノアがDランク。私なんて登録しただけだからEランク。
ラクスのランクはA。なにそれ。すごく強いってことじゃん。1人でよくない?
ナラルさんとノアのランクはすぐに上がると思うけど、私は使う魔法が闇だからあんまりラクスの前で戦いたくない。剣なんて使えないから魔法で戦うしかないし。
だから私だけランクは上がらない。実績がないからね。
それでいいんじゃ?と思うけど、まあ1人だけEランクなんて駄目だよね。
「なら君のいない時に少しずつやってく。それで問題ないよね?」
「いやなんで俺の前では戦えないの?そんな戦えないの?弱いの?」
いちいちムカつく言い方するなぁ、ラクス。
ゲームじゃ闇がありながらもツンデレな可愛い男の子だったのに、ここだとデレがない。ツンだけ。ツンってほど可愛いもんじゃないし。毒だよ。ノアには普通なのに酷くない?
それにあんたの前で戦えないのは闇属性ってバレるとよくないからだよ。今までそれでいいことなかったもん。怖がられるか、気味悪がられるかみたいな。知った途端距離置かれる私の気持ちわかります?
「そう。弱いの。だから魔物はよろしく」
まっ、私はラクスのそんな煽りに反応するほど子供じゃないんでね。華麗にかわしてやりますよ。
「……いや絶対そんなことないだろ」
遅くなりました。
読んでくださりありがとうございます。




