第5話 信者の行方
シーナ視点
はーいどうも、私、シーナです。
ただ今絶賛迷子中です!
「しーちゃん、お願いだからもう勝手に歩かないで。僕の後ろ付いてきて」
「大丈夫だって、あ、こっちだよ!」
「ああもう……」
絶対合ってるって、女神に向かって行けばいいだけだから。
女神が村を出発した次の日、私とるーくんも村を出た。近所のおばさんたちが見送ってくれて、私も少しはあの村に馴染めてたのかなって思ったの。大丈夫、るーくんに向かってだけじゃなくて私の手握って『頑張るんだよ、お姉さんなんだから、ルフくんに迷惑かけないようにね』って言われたから。……大丈夫だもん。
で、なんで女神の方向がわかるのか。
答えは簡単。女神の持ち物に私の魔力を注ぎ込んだから。女神自体に付けたかったんだけど、流石に無理でした。でもねでもね!私があげた髪飾り、女神は持っていってくれてるの!嬉しすぎる。それなら私が作ったものだし、印もつけやすかった。ふふ、嬉しい。
最初の内は平気だったの、見つからない距離でついて行けてたから。近づきすぎて青いののお父さんに見つかりそうになった時は焦ったよね。おかげで私は完璧な隠蔽魔法を使えるようになりました。空気で光の屈折だとかなんとか。風で匂いも逸らすから完璧。気配はよくわかんないけど目の前にいてもわからないほどの隠蔽率だし大丈夫ってことじゃん?すごいぞ私!
だから離れなくても良くなったんだけど、そんなずっと近くにいたら女神ばっかり見て周りが見えなくなるから今まで通りにしてた。
で、道がわからなくなり森で迷いました。1年半やっててこんなことなかったんだけどなー。無かった。うん。無かったんだけどなー。
「はぁ……シーナ、そっちは絶対違う。方角はこっちだ。ルフトの言う通り、黙って着いてこい。……何回目だよもう……」
嘘ですごめんなさい。何回も迷子になりました。
そしてアレクです。
はい、着いて来ちゃいました。
村長には許可取ったって言ってたけどほんとかな。私が無理に連れ出したとかになってないよね?ま、なっててももうあの村には戻らないからどうでもいっか!
でもアレクが居てくれてよかった。アレクは火属性だから簡単に火つくの。火起こし楽。
女神たちはなんか魔道具使ってたけど、そんなの私たち持ってないし。
いやぁ、火はほんといいね、なんか夜に明るいだけで安心するから。特に迷子中、森で野宿してる時とか……。ちょっとまだ怖いけど女神を思うことで乗り越えてます。
ていうか今日もそうなりそうだよね、嫌だな。
「反対方向だよ?間違ってる」
「川があるから迂回するんだよ。地図買ったんだから地図見ろ」
「ごめんね、アレクにぃ。ちゃんと手繋いどくから」
地図私読めないもん……。
前世でも方向音痴だったからなぁ、そのくせ先頭で進みたがるの。私の悪い癖。直さない。
ていうかるーくん、目を離したらすぐ逸れる小さい子みたいな困った表情で私に手差し出すのやめよう?
1年半経って私とアレクは16、るーくんは14になった。旅してていつもお腹いっぱい食べられるわけじゃないのに、成長期なのかゆっくりと確実に身長が伸びてる。やめて、天使が天使じゃなくなる。でっかい天使とかいる?
「大丈夫。ちゃんと着いてくから」
「だめ」
あっ、手掴まれた。
振り解くのはできるけど、なんかしたくないな。いっか、別に。
「この調子だと街に着く前に日が暮れるな……もう少し行ったら暗くなる前に────」
「え、やだよ。野宿嫌い。森の暗いの怖いし。仕方ないね、方向の指示はよろしく!」
私が悪いのはわかってるんですが、森で一晩過ごすの嫌なんです。何回もやってるけど慣れない。だからいつもそうなりそうになると私はこうする。
るーくんと繋いでない方の手でアレクの手を掴む。
さあ空へ飛び立て!今では無詠唱でできるようになりました!
「やっ、やだ!しーちゃん下ろして……!」
「ごめんね、すぐだから。ほら、私に掴まってて」
るーくんは前に酔ったのがトラウマになってるのか、魔法で空を飛ぶのは好きじゃないみたい。アレクは普通に呆れた顔してるけど。
るーくんを自分の体にしがみつかせて、アレクの指示する方向へと飛ぶ。
飛んでる感をできるだけ軽減してるーくんが怖くないように、魔法で風が当たらないようにしてあげる。私も野宿が嫌で飛んでるもんね、無理言ってるのは私なんだからできる限りのことはしてあげないと。
「はぁあ、そろそろローズちゃんと話したいなぁ……」
「ここまで保ったのが驚きだよ」
アレクにはバレた。私が女神推しだということが。最初はローズに負けたのか……ってなんか沈んでたけどもう最近じゃ前みたいに、私に対してアピールしてくることはなくなった。
諦めたのかな?
いいえ、呆れられました。




