第3話 ちょっと違うのかな。なんでだろ。
話を聞けば、ラクスが本物だというのが確信に近づいた。
ラクスが出てくるゲームでは、ラクス含む冒険者の攻略対象たちとパーティを組んだ駆け出し冒険者のヒロインが、攻略対象たちに溺愛されながら冒険者として名を挙げていき最後に、強くなったヒロインは聖女として覚醒して選んだ攻略対象と共に魔王を討ち果たす……という話だった。大まかには。
肝心のラクスの設定はゲームだと貧民街生まれで幼い頃に自分を置いて出て行ってしまった兄を探すために冒険者になる。両親のことは詳しく書かれていなかったけど、セリフで『あんな糞親思い出したくもない。産んでくれたとか、そういう善みたいなこと言う気なら会ってみればいい』てのがあったからまあ良くない両親なんだな、と。あともう1人兄がいたはず。
で、冒険者として名前が有名になってきた頃に兄が騎士になってとある王国で働いているとわかる。自分はあの貧民街で辛い思いをしながら生きていたのに、兄は自分を置いて騎士なんてものになっている。連れて行って欲しかった。
そんな思いがごちゃまぜになって、騎士の兄へ会いに行く決心がつかない。その気持ちを変化させ、会って話した方がいいと言うのがヒロイン。
確かこんな感じだった。
でも今このラクスは微妙に違う。
貧民街出身なのは同じなんだけど、お兄さんとは一緒に両親ともう1人のお兄さんから逃げるように出てきて、お兄さんが騎士になっているのも知っている。今は離れているけれど、お兄さんのことは大好きで尊敬しているそう。
「俺を救ってくれたんだ、兄貴は。あのままあそこにいたら俺死んでたし」
「へぇ。大変だったんですね」
「ああ、兄貴がしっかりしてて良かった。親ももう1人もクズすぎてあれが家族だなんて考えたくもない。兄貴に集ってたんだ。ありえない」
ずっと歩きながら話してたんだけど、ノアとなんか仲良くなってて私とナラルさんはその後ろをついて行ってる状態。
「わからないのですがなぜシンの名が出てきたんです?」
「兄貴の同僚のはずなんだ。俺の思ってるのと同じならな。なんか聞いたことないか、仕事仲間の話」
ラクスが振り向いて私に話題を振る。
同僚か。前に乱入してきた人かな?……絶対違うね。
「名前は」
「ユーラ。平民出身同士仲良いって聞いたことある」
ユーラ。あれ?なんか聞いたことある気がする。あの乱入してきた人を対処した後、『ユーラ!俺明日休む!』って……。
「合ってるかも。聞いたことある気がする。今日聞いてみようか」
こんなことがあったんだよ、ってどうせ話すし。その時に聞いてみよう。
「今日聞く……?どうやって」
「魔道具で。いつもしてるからついでに。明日街で会えるかな。……会えないなら聞いても意味ないのか」
「いや、頼む。しばらく帰ってないから無事だって伝えたい」
そう言うことか。ならちゃんと聞かないと。忘れないようにしよ。
ん?そういえばラクスの仲間はどうしてるんだろ。いるはずなんだけど。
「ねぇ、君の仲間は?1人?」
「ああ……足手まといだから前の街で置いてきた。構え構えってクソうるせぇ女が鬱陶しくて」




