同じ騎士の話
短いです
別に悲しい話じゃないということを先に言っておく。
出発は1日遅らせ、前日よりは持ち直した弟を連れ今まで過ごした港町を出た。色々あって1日以上伸ばすことはできなかった。
無理させているのはわかっていた。だから弟はずっと僕がおぶって移動した。病気の弟を外に連れ出し長距離移動させているだけでもいけないことなのに、歩かせるなんてできない。
荷物を前に抱え背中には弟。それでも兵士として過ごした日々や先輩たちに鍛えてもらったことが糧になっていて、全く辛いとは感じなかった。あの3人から解放された、というのもあったのかも。
弟の苦しそうな息遣いを聴きながら、先輩と共に王都を目指した。王都へ着けば楽になるから、と何度も言い聞かせて。
王都へ着いた時は夜だった。当然、門は閉まっている。けれど外で野宿するわけにはいかなかった。なぜなら弟の体調があの出発する前日以上に悪くなってしまったから。このまま朝まで何もしなければ弟は保たない。
事情を説明して、弟を見せれば門を開けてくれた。ただ、中へは入れず門を守る兵士が待機する小部屋で医者が来るまで待つことになった。
長かった。
いや、そう感じただけかもしれない。医者はすぐに来てくれたのか、時間がかかったのか。よく覚えていない。ただ弟の顔色がどんどん悪くなっていく様子と、それを見て焦った気持ちがあったことだけ覚えている。
最初に言った通り、悲しい話じゃない。
弟は無事。今は王都にはいないけれど、元気に生きている。
王都に来てからあの港町には一度も戻っていない。戻る意味がないから。
仲間であるシンたちには僕と弟の詳しい話はしてない。というか、弟がいるという話もしていない。
仕事はあの港町の頃より忙しくなったけど、楽しかった。昼間に働いて、夕方に帰って、弟へ剣を教えてから夕飯を食べる。弟は元気になって少しした後、冒険者になりたいと言い出していたから。僕はそんな死亡率が1番高い仕事を弟にやらせたくなかったけれど、考えは変えてくらなかった。
そして僕が騎士になった時には若手の冒険者として名が知れるほどになっていた。
弟は今王都ではなく、別の場所で依頼を受けている。しばらく会っていないけれど、たぶん無事なはず。
まあこんな昔話を彼らにするつもりはないし、家族の話だってなんとなくとしかしていない。
聞かないでくれてるから助かってるんだけどね。
でも僕は、今シンが大きな溜息をついて負のオーラを放っているのを見て訳を聞かない、ということはできそうになかった。
まだ続きます




