シスコンでも一応仲間を思う気持ちはあります。
「わかった。お前がそうなら俺は容赦しない。大怪我しても俺のせいじゃないからな」
「どう考えてもシンのせいだよね!?」
ユーラの悲鳴にシンは返事をしなかった。
光が迸る。
白が空間を埋め尽くし、目が眩む。
「っ!卑怯だ!やっ、やめっ」
光が収まりユーラの目が回復した時にはその場からシンの姿は消えていた。
「ああもう!許さないー!許さないぞ!」
いくら叫ぼうとも、シンが戻る気配はない。
だがユーラが屋根裏へ突撃し、シンを止めることはできない。なぜならユーラは光魔法で両手両足を拘束されていたからで、ユーラの実力ではシンのこの魔法を解くことができないからだ。
「解けよー!ああっくっそアイツ絶対許さねぇ!」
普段なら絶対にしない言葉遣いをし、どうにか解くことができないかと体を捻る。
「くっ、んっ、あっちょやだっわぁぁぁああ!?」
足は一纏め、両手は背中で括られている中体を無理に捻ればバランスを崩すのは当然のことで、ユーラは顔から床に向かって倒れていく。
「ひゃぁぁぁあああ!」
「うるさいな」
「ぐへっ」
床に倒れてしまう直前にユーラの服の襟が掴まれ、顔を床に打ち付けてしまうことはなかった。
首が締め付けられるということはあったが。
「シン!これ解いてよ!……それより魔法は」
「お前は、何も知らなかった。それでいいんだ。ほら」
シンはユーラを床に座らせ、ポン、と手の拘束魔法に軽く触れる。ただそれだけの動作で手の魔法はもちろん、足の魔法もすぐに解けた。
自由になった手足を動かし、ユーラはシンを睨みつける。
「家にこんな結界張るくらいなら転移魔法なんてしなきゃいいのに」
「悪い、必要なことなんだ。迷惑は絶対にかけない」
今ユーラが何を言おうと、シンはすでに転移魔法を設置し終えている。だからもうそれを解除するなんてことはしないだろう。
家に結界を張り今の騒ぎが聞こえないようにし、屋根裏にも結界を張っている。そんなことをしてまでバレたくないのなら、そもそもしなければいい。ユーラはそう言っていた。
「なんでそこまで……」
転移魔法に拘るのか。
シンならば短い時間で長距離を移動するなど大したことではない。転移魔法を使った速さよりは遅いが、そんな長距離を素早く移動しなければいけないことなどそうそうない。
「何かあったら困るから。後悔はしたくない。なら俺にできる最良のことをすべきだ。そうだろ?」
「いや……そうだろって言われても……」
睨んでいたはずがいつの間にか困った表情になっているのに気がつかず、ユーラは目線を屋根裏の扉へと向ける。
なんの変化もない扉の先には、見つかれば自分の人生を全て無くしてしまうほどのものがあるのだ。
「大切なものがある。すごい、大切なんだ。絶対に失えない。傷つけたくない。だから俺は、守るためならなんだってする。国なんて知らない。どうでもいい。大丈夫だ、もしもがあったらお前ら国外に逃がすくらい簡単にできるよ」
簡単に言うが実際にできてしまうのだろう。
シンのその言葉を聞き、扉の先にある転移魔法を思いながらユーラは苦笑するしかできなかった。
感想いただきました!ありがとうございます!!
話の統合をしたので話数が変化しています、すみません。
シン編、まだ少し続きます。




