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隠し攻略ルートは悪役の私!? 〜乙女ゲームの悪役に転生しましたがヒロインから女神と崇められています〜  作者: 絡鎖
第1章 悪役の私がバッドエンドを回避するまで。

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シスコン騎士と私

続きです

「……まあ、そう、だよなぁ……こんなの気持ち悪いって思われても仕方ない。嫌われたり……嫌われる……?ローズに?……い、いやそんなことあり得ない。好きって言ってくれたじゃないか。あれは嘘じゃない。大丈夫」


揺れる声。言い聞かせるように、大丈夫、大丈夫、と繰り返す。


大丈夫なのかしら。


ここまで来ると流石に引くわね。ローズに転生した子がかわいそうになってくる。


「守るのも大切なことですが、それでなんの経験もせず、身の回りのこと以外知ることもなく、一生を終わらせてしまうのは悲しいことだと思いますわ。何の経験もさせないことがシン様の愛なのね」


それでいいと言う人もいるでしょうね。


でも私は嫌だわ。こんな面白い世界なんだもの、もっと見て回りたい。そのためにも力を付けて何をしても口を出されないようにしないと。


ローズにとってもそれは同じなのでしょうね。自分から村を出たいと言い出した。地球とは違う、この異世界を。


「ローズにとって、それはいいことなのか?」


「自分から言い出したことなのに、良いか悪いかをシン様が判断してはならないですわ。もう子供ではないのでしょう?自己判断ができる年齢なのだからそれは、ローズさんが判断するべきことだと思います。過保護もいいですが、相手の未来を思うのならシン様が譲歩すべきでは?」


「……そっ、か。そう……だよな。俺がローズの成長を止めることになったらいけないんだ。ローズが成長するため、経験するため、だから。あいつに譲ったわけじゃない。よし」


決心したような声でそう言うと、騎士は立ち上がった。


地面に付いて汚れた服が淡い光を放つ。光が収まると汚れは綺麗に消えていた。


やっぱり便利よね、魔法って。彼が規格外と言うこともあるけれど、一瞬で汚れを落とすなんて地球なら考えられないことよ。私はまだこの騎士のように簡単に使えない。でもいずれ超えて見せるわ。


「ありがとう、決心が付いた。引き止めて悪かったね。今度何かお礼をさせてもらいたい。都合の良い日はある?」


曇りない笑顔で笑いかけてくるシンは、もうさっきまでの暗いオーラはない。


「大丈夫ですわ。【光の騎士】様が【魔女】などと馴れ合っていては悪い噂が立つでしょう?」


私はもう何を言われても動じないわ。慣れてしまったもの。でもこの騎士に悪い噂が立つのは嫌ね。私はこの世界で起こる恋愛模様を見守りはすれど中に入り込むつもりはないのよ。


「……さっき話しかけたの、もしかして都合悪かったか?」


「人目のある場所で私にシン様から話しかけるのは出来るだけ辞めていただきたいですわ。自覚が無いようですが、シン様は良い意味でも悪い意味でも目立つこと、お忘れなきよう」


よくある、周りを考えず見ることも出来ない自己中心的なキャラではないことが救いね。彼は言えばなんのことかわかってくれるもの。


自分の置かれている立場を客観的に見て判断できる人よ。


「大変だね、貴族の世界は。俺は気楽でいいや。……そうでもないのか。わかった、考えて話すよ。悪かった。で、それも含めてやっぱりお礼したいな。都合のいい日は?」


私の言葉、ちゃんと聞いてたのかしら。


「ですから、私がシン様とこうして話していると言うことだけでも何を言われるかわからないのですから、わざわざ時間を割いていただく必要はありませんわ。お話は終わりね?では、失礼させていただきます」


これ以上この場に留まっていたら絶対に押し切られる気がしてきたわ。彼は今までこうしてきたのね。頑固だと有名な方といつの間にか仲良くなっていたりするのはそういうことだったの。これも見習うべきだわ。会話術は大事だわ。






●●







後日、家に1つの魔道具が届いた。


シンからだった。


差出人がこの王国の誇る光の騎士であったから、両親も使用人達もとても驚いていたわ。両親は同じ魔法を使う方と仲良くなれたんだな、と言って喜んでくれたのよ。


正体は度を越した気持ち悪いシスコンなのに。


魔道具は一応、ということで危険がないか調べられたけれどもちろん何も無かったわ。


作られた魔道具に呪いや攻撃性のある魔法がかかっていたら大変だから、いくら親しい仲でも貴族では一度検査するのが当たり前。名を騙って送られてきて何かあったら大変だものね。


一緒に送られてきた手紙には、こう書かれていたわ。



『この前は本当にありがとう。妹は村を出発したよ。沢山の加護付きの道具を持たせたから何も無いはずだ。憎いあいつにも、渡した。あいつになにかあればローズにも何かあるってことだから。

感謝と共に君にも1つ魔道具を作った。使ってくれると嬉しい。ああ、作った余りってわけじゃない。君に1番合うように設計したから。

でももし、“貴族の厄介ごと”があるのなら使わなくて構わない。

送り返さないでもらいたいな。

では、次に会えた時にこの魔道具の感想を聞かせてくれ』



魔道具は、ネックレス型だった。金の蔓が巻き付く透明な石。その中に魔法が込めてある。


温かく、安心感のある魔法。


浄化の魔法と……何かしら、他の魔法も組み合わさってるのね。




私はきっと、次に彼に合う時にはこのネックレスを付けている。



見守るだけなんて、無理なのかもしれない。

次は主人公視点に戻ります

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