この騎士がシスコンで気持ち悪い
前の続きです
駄々をこねる幼い子供のように地面に座り込んだまま立とうとしない騎士。
大の大人が、しかも男が女の前でこんなことをして恥ずかしいとは思わないのかしら?私、もうそろそろ帰りたいのだけど。
「うー……やだぁ、許可したくないぃ……俺が一緒に行きたいよぉ〜」
言葉まで子供っぽくなってきたわね。彼、一応この国の騎士なのだけど。【光の騎士】なんて呼ばれてたくさんの女性を惚れさせている騎士の1人なのだけど。
この王国には様々なゲームの攻略対象たちがいて、派閥なんてものができてしまっているの。王子や貴族だと婚約者がいるから敵わないけれど、この騎士や貴族の護衛、使用人ならもしかすると、があるものね。
アイドルを見るファンのようなものかしら。政権なんて関係なく王子派、第2王子派、なんてあるのだから笑ってしまうわね。一目を気にせずその言葉を言えて話せるって凄いことよ。
「経験するのもいいことだと思いますわ。シン様が関わらない所で成長するのも経験、でしょう?」
「俺が見ていない所でローズが変わるなんて嫌だ」
重症だわ、この騎士。
シスコンにも程があるわよ、どうにかしてる。
他の場所じゃそんな素振りちっともないんだもの、擬態がお上手なことで。
「シン様が全て関わることで、伸びるものも伸びないかもしれません。妹さんがシン様に頼りっきりになってしまえば、成長は望めませんわよ」
「頼りっきりになればいい。俺が面倒を見る。ローズは家で好きなことをしていればそれで良いんだ……俺が帰ってきたら笑顔でお疲れ様、兄さんって言って抱きしめて欲しい。飯は俺が作る。俺が作った料理を食べて、美味しいね、兄さんって言って……夜は一緒に寝る。ローズの小さい体を俺が抱きしめながら寝る。ローズの寝息を聞いて、俺は日中の疲れを癒す。休日はローズとのんびりするんだ。一緒に料理作ってもいいな。ゴロゴロしてもいいな。俺が武器の手入れしてるのをローズが隣で見てるのもいいな。ああ、そんな日々があればいいのに……」
ああ、この話さっさと終わらないかしら。
膝に肘をついて楽しそうに話す彼。話している内容に聞かなければ、確かにただのイケメンなのよね。後ろにかきあげられた銀髪、整った顔立ち、柔らかい光を放つ新緑の瞳。
何かこう、数多くの攻略対象にも埋もれない“光”があるのよ。
「……私から言えることは1つ。自分から言い出したことを、シン様が嫌だからという理由で反対するのは良くないですわ。ええと……自発的行動を抑制すると本人に良くないんです。将来的に溢れてしまうとか」
「……抑えられたから爆発するってことか?」
「そういうことですわ」
騎士の周りにさっきまであった楽しそうな雰囲気は吹き飛び、またズーンとしたオーラが辺りに漂うことになった。
ごめんなさいまだ続きます…




