第30話 いつも通りのぐだぐだ。
最初だけシーナ
出ていくつもりだったってどういうことなの!?
そんなのストーリーになかったんだけど!
どうなってるの?最初からバッドエンドは決まっていたの?
私の穏やかな、女神との生活はどこへ消えたの!
●●
「行ってしまいましたね」
「そうだね」
『あり得ない!なんでそんな嘘言うの!』
というような言葉を言った後にシーナは大声で奇声をあげながら走って行ってしまった。いつも通りにおかしい。なんか慣れてきたよ、シーナの奇行。
せっかくかわいいヒロインに転生したんだからもっとまともに生きれば……いや、まともに生きられると私がバッドエンドになる可能性が大きくなるのか。他人を犠牲にするみたいだけど殺すわけじゃない、シーナは今のままでいてください。
「いつ伺えばよろしいですか?」
「え?あ、ああ、聞いてみる」
家にくることか、シーナのことがあったから一瞬なんのことだか理解できなかった。
たぶん明日あたりいけるんじゃないかなぁ。
「緊張ですね、ローズのご両親とはまだ話したことないんです。父は行ったのですが、僕はまだ動きがギクシャクしていたから。お兄さんとはたくさん話す機会があったんですがね」
兄さんは最後の方ずっと私の側にいたからね。
そういえば兄さんからの連絡はいつ来るんだろう。連絡するの伸ばして私の出発を遅くするとか……ありそう。自惚れているつもりはないけど、今の兄さんなら普通にやりそうだ。
「そう」
私から連絡するべきかな。いや、うーん。うん、兄さんを信じよう。駄目なら駄目、いいならいいって言ってくれると。
「ローズは、あまり感情を表に出しませんよね。……いえ、思ったことはきちんと口に出すのですが、それが端的というか余計なことを言わないというか……言い表しづらいな、なんだろう……気を許した人と、許していない人との差、ですかね」
「……よくわからない」
話し方のことかな?
シーナの前ならきちんと“ローズ”の話し方をできるんだけど、兄さんとか、最近だとノアの前でも崩れちゃうんだよね。
急にどうしたんだろう?
「わからなくて大丈夫です。僕は、ローズのそのような所も好きですし、ローズが素っ気なくてもそれは相手を嫌っているからではないということもわかっているので」
ノアは優しい笑みを私に向けてきた。穏やかな夜の月明かりのような笑顔。見ているだけで落ち着く笑顔だ。
推しの、笑顔だ。
「…………ローズ?」
顔が暑い。ノアが笑顔のまま首を傾げる。
絶対、顔赤くなってる。違う、ノアへの気持ちは恋愛感情じゃない。推しに対する興奮。
「やだ……何このイケメン……死ぬ……」
過剰摂取すると正常な判断ができなくなるというデメリットがあります。
●●
我に帰った私はシーナのようにノアの前から慌てて走り去った。
「……荷物置いて来ちゃった」
出していた荷物は全部木の下。あそこ影だし、離れた所から入れられないかな。
「物は試し……!【収納】っ!」
うん。そんなうまい話ないか。入った感じはしない。
目に見えてないと無理かな。ノアが居なければそのまま収納できるんだけど、いたら隠れて荷物だけ見ながらやろう。できなかったらいなくなってから、だね。今は会えない。恥ずかしい。
戻るか。
こっそり戻って、黒く大きくなった木が見える家の陰からそっちの様子を覗く。
あ〜、います。私の置いていった荷物を手に取って眺めてる。そんななんでもないことなのに様になるイケメンって何?
「と……そんなことより荷物荷物」
荷物だけに集中して、魔法を使う。
「【収納】」
上手くいった!
ズ……と木の影が蠢き、荷物だけが沈みはじめた。ノアは突然起こったその状況に驚いて辺りをキョロキョロと見回している。見つからないように慌てて私は隠れる。
荷物が仕舞われている感はするし、もういいよね。見つからない内に帰ろう。
明日からどんな顔して会えばいいのかな。
昨日は投稿できずすみませんでした
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