手紙
お久しぶりです。
ノアへ、お父さん(ナラルさん)からお手紙が届きました。
ノア、体調はどうだ?シンくんの言う事ちゃんと聞いてるよな?
シンくんの魔道具は鳴っていないから、最悪の事態は起こっていないんだと毎日安心してるよ。
この手紙は船の中で書いている。新しくできた乗り物に乗ることができて、予定より早くここまで来られたよ。
最新の乗り物の快適さと比べたら船は酷く揺れるな。前に船に乗った時は、お前が居たから船の揺れなんてあまり気にならなかった。でも1人で船室にいるとこの揺れは結構気になってくる。乗ったものにはそういう魔法をかけているらしく、ほぼ揺れは無かったから特に、な。
ノアは初めて船に乗った時のことは覚えているか?出発した時は海がキラキラしてるってすごくはしゃいでたのに、何日か後に目的地へ着いた時には、地面が揺れてるってぐったりしてたな。
懐かしい。
あの時は船酔いだったのか、慣れなくて疲れたのかわからなかったがそれから船に乗っても酔いはしてなかったから、きっとはしゃいで疲れたんだろうな。
まぁ昔の話も海の話もわかりきってることだろうから、知らないだろう乗り物の話をしよう。
俺は最初、少し前から話に聞いていた機関車、に乗るつもりだった。駅員に予算と行き先、どのくらいの時間で行きたいのかを話して提示される券を買うようだったから、他の客と同じように駅員の前に並んでこれがいいと教えてもらった券を買った。案内の通りに機関車(だと思っていたもの)に乗って指定の席に座り、出発を待っていたんだ。
券に書いてなかったのか、って思うよな。確かに今思えば書いてあった。行き先と、時間、座席の番号、そしてその最新の乗り物の名前だ。俺はそれが機関車のことを指していると思っていた。通称名と、正式名称みたいなものかなと。だから特に気にしていなかったんだ。
そしてようやく、『本日はご乗車いただきありがとうございます。こちらはプレリエ行き魔導列車となっております』なんて音声が流れてきてこれは機関車じゃあなさそうだなって気がついた。でも、そもそも機関車も話に聞いただけで乗った事はない。だからこの乗り物と機関車がどう違うのかもわかっていないから、まぁ些細なことだよな。
その乗り物は、馬車の荷台がいくつも繋がっているような形で、馬の代わりに魔力で動かしているらしい。道が整備されているから、その用意された道の上を船と同じかそれ以上の速さで移動するんだ。通る道と車輪が触れ合うことで反応する大きな魔道具になっていて、ほとんど揺れない。滑るように動く景色は見ていて飽きなかった。
機関車とは動力と速さが違うだけらしい。形はほとんど同じだった。着いた所で機関車もちゃんと見る事ができたんだ。話には聞いていたが、実際に見ると迫力があったな。
船よりいい値段だったが、払う価値はある。それに安めの区画と高めの区画を分けているみたいで、客は富裕層だけじゃなかったな。少し余裕のある俺のような冒険者の移動にも、旅行客の移動にも使われているみたいだ。
とても、良い経験をした。帰りに同じ道を通ればまた乗るかもしれない。楽しみだ。
ノアは最近何かあったか?面白いこと、些細なこと、何かあれば教えてくれ。おそらくこの手紙が届くのは2週間くらい後だろうから、そこから返事を書いてこっちに届くのは1ヶ月後くらいだろうか。最近は海を挟んでも早く届くようになったらしいからどのくらいで届くのかわからない。
まぁ大体そのくらいなら、おそらく順調に行けば目的地に着いているはずだ。返事をくれるのなら前に泊まった宿、覚えているだろう。そこに送ってくれ。
では、また手紙を書く。シンくんの言う事をきちんと聞くんだぞ。ローズとも仲良くやりなさい。
元気でな。
前回の投稿からまだ1年は経ってないらしいです。
あと2日遅ければ……




