教祖の2〜5日
1日に収まらなかった
「え!?青いのと女神が2人で旅行してる!?なんで!?」
「旅行じゃなくて依頼な」
「青いの体悪いんじゃないの!?シンが(2つの意味で)許さないと思ったから安心してたのに!!」
クソー、出し抜かれた。私も今すぐ行きたい。いや女神が2人っきりを楽しみたいのなら邪魔する事になるけど……青いのの邪魔をできるのならいいか。女神の幸せが1番だけど、青いのの幸せは二の次だ。
それはともかくあいつは依頼を受けられるような具合じゃあなかったはず。魔法を使うなってシンが母親みたいに口酸っぱく言ってたし。
「いや普通に魔法使ってたんだよな。あれはかっこよかったな、土と闇の合体魔法みたいな。ローズが魔法撃って怯ませて、後ろから出てきたノアと交代して、ノアがその場で剣出して。振り下ろす時に黒いのが剣の周りでバチバチッ!ってなって!あれはローズの魔法だな。それでトドメだ。あれ俺もやりたい。バチバチさせたい」
男っていつもそう。かっこいいのを見るとすぐ影響されるんだから。
それにかっこよかったのは女神の魔法であって断じて合体したからかっこよかったわけじゃない。断じて剣がとかそう言うんじゃないと思う。ていうか!単体でバチバチしててもかっこいいでしょ。
私も見たかったです。
ともかく、普通に魔法使ってるってことは治ったって事だよね?女神は優しいから、もしまだ治ってなくて駄目なら絶対青いのを止めるはずだし。止めずに一緒になって魔法使ってるのならもう平気ってこと。
「……ん?アレ?と、言うことは……」
青いのは土の魔法を使える。しかも上位の。
そんでもって神の器として在り、生き延びた人間。
と、言うことはですよ。
「今の停滞を崩せるのでは……!?私は女神と会えるしハッピー!よっしゃ話つけてこなきゃ!アレク!青いのと女神を連れてきて!至急ね!」
教会復興において対立する3つの意見と様子見派。コイツらは、ようは“神”の決定でないと従えないわけです。特に熱心な信者たちが残ってるからね、そうなるのは当然のこと。
でもこっちには神が器として使った身体がある。神の言葉を彼らに伝えるのに最適なのが。
本当なら私がお迎えに行かなきゃだけど、こっちで話をしとかないと嫌な思いさせるかもだし。女神にね。それは嫌。青いのはどうせ神の器としてもみくちゃにされるのは決定事項なんだから、今2人で旅行してるのは大目に見てやろう。
「はぁ……依頼、2人が終わってたらすぐ連れてくる。終わってなかったら手伝ってからくるから時間かかるぞ。最短2日な」
「は!?なんでそんなかかるの!?」
「あのなぁ!?俺はお前と違って高速移動なんてできないんですが!」
◼️◼️
3日後。疲れた顔をした3人が私の目の前にいる。
ぐへへ、疲れてても女神のその美しさは曇っていません。
「久しぶり!じゃあとりあえずアレクは青……ノアと一緒に体洗ってきて。埃っぽいから。特に青い……ノアは髪ね!いくらでも乾かしてやれるからちゃんと洗ってね。着替えは用意させとく。女神はゆっくりお風呂で旅の汚れでも落としてね!湯船に浸かりたいでしょ?お湯張るからちょっと待ってて。もちろんそのままでもいいよ!どんな姿でも素敵だからね」
「あぁ……ノア、こっちだ」
「どうも……」
ぐったりとした2人が寄り添うように消えていく。急いでくれたアレクにはちょっと申し訳ないかも。戻ってきたら休んでいいよって言わなきゃね。
「復興がどうとか聞いて手伝いたい気持ちはあるのだけど、あんまり長くは居られないかも。一週間で終わらせるって兄さんに決められちゃって。延びると兄さんが暴れるから」
「わかった。後でシンのとこ行ってくる。ノアさえいれば良いんだけど、1人でここにいられても癪だし……。あ、この部屋で待っててね。準備できたら呼ぶよ」
それに女神も、不愉快ではあるものの神が目を止めた女性として知られてる。ま、女神は女神なんだけど。神が目を止める前にそもそも神なんだけど。
だから一緒にいてもおかしくないし、居てくれるとありがたい。……あれ?これって私女神を利用してるみたいになってる……!?き、気のせい!気のせいだよね!
気を取り直して私はお風呂の準備だ。
ここは気に食わないとこも多いけど、風景が良いのと湯船が普通にあるのは実に良い所。何故か水関連の設備が整ってるんだよね。まぁ清潔なのは良いことですよ。たっぷりの水、使ってやります。
◼️◼️
「これはいつまでやらされるんですか……」
「復興するまで」
「冗談ですよね!?」
白地の布に金糸の刺繍がたっぷり施された服を着た青いの。良い布を沢山使って作られたそれは、私が青いのと女神が来ると伝えたらすぐに用意されたもの。
ここじゃあ白に金は上の位にいる者しか身につけられないもので、偉さとその量は比例する。つまり上に行くほど豪華な刺繍が施されてるってこと。
私は外部の者だしそもそも信仰が違うからそんなの断固拒否した結果、ストールと外套だけ白に金のものになった。ストールはかけるだけでもいいから絶対身に付けろってうるさいから、結果的に合う服装が限られてくるのが悲しいところ。せめてもの反抗で外套なんて着ないことにした。魔法で充分だ。
そんな私でも結構な刺繍がされているやつだったんだけど、青いのが着させられているのはもっと凄い細かな刺繍がされてる、けど華美すぎない服。結わずに下ろさせた青い髪が白に映える。
厳かで美しい、って言うのがほんとうに当てはまるやつ。あ、服だけの話ね。
引き摺るほどのたっぷりとした布を上手くあしらいながら歩いていたのは様になってたけど、重そうなのが伝わってくる。初めはそれ見てざまぁなんて思ってたんだよね。女神が大丈夫?なんて青いののとこに行くまでは。
後で服変えたろ。動きづらそうだから動きやすいのに。女神が青いのに気を取られないようなのに。
青いのを使ったおかげで、建物の修復は方向性がまとまった。意見はバラバラでも信仰するものが同じですからね、神の器がこうだ、という風に動けばそれが正しいことになるんですよ。
中身入ってないのに不思議だね。
建物はそのまま直しながら、少し新しく変えることになった。広くなった道は開けて、建物を増築して、景観を損なわない程度に荘厳に。青いのにできるかなぁ?
他の土属性の人たちと一緒になって魔法を使うと、彼らは感極まって泣き出すから青いのは後ろでそれを見てることになった。共同作業ができるなんて……っ!って泣きながら喜んじゃうの。初めは一人でやらせればって思ったんだけど猛反対された。恐れ多いってさ。そんなことないでしょ。中身は青いのなんだし。
ルスが青いのを使ってた時のことを青いのは知らないから今の状況に若干引いてるのが面白い。お前の体は信仰の一部になってるんだよ。いずれ御伽噺にもなりそう。…………私の好きな白き癒しの聖女のお話みたいになるってこと……!?嫌だな。作られる前に作って変えたろ。
「座っていいですか?この服、重くて……ローズも座ります?それとも戻りますか?休んでてって言われてましたし」
途中で私に視線を向けながら話す青いの。そうだよ、私は女神には休んでてもらいたいの。急いで来てもらったからね。こんなのに付き合わせるつもりはなかったの。そういったんだけどね、
「もう少しいる。直るの見てて楽しいから」
だって。
それを聞くなり青いのは、すでに魔法で地面から生やしていた太い蔓を伸ばして、女神も座れるようにした。
青いのと居たいわけじゃないってのがわかるのがせめてものところ。純粋に教会が直っていく様を見るのが楽しいらしい。
わかるけどね、端のほうに寄せられてた瓦礫が浮かんで壁になってくのは見てて飽きないから。
私シンのとこに連絡しに行かなきゃだしなぁ、二人っきりにさせるのは癪だからるーくん連れてこよっと。今の時間は空いてるはずだからね。
上下水道完備「ボク、熱心に信仰してくれてるとこが臭いのは嫌だからね。それより面白いね、教会の復興にあの子を使ったらそれこそ良い御伽噺のネタになると思わない?」




