理由
1000字程度
「……っ!び、びっくりした。ローズちゃんか。服はあった?」
ユーラさんの影から出たらものすごくびっくりされた。……やば、ユーラさんの対応が普通すぎて忘れてたけど一応ユーラさん、“普通の人”で闇属性の魔法に対する忌避感はあるんでした。
だからこういう反応をするのは当然。目の前で、しかも自分の影を使われるなんていい気がするはずない。
「ごめんなさい。……服は、ユーラさんの所から。ノアの持ってる服で短いものが無かったので」
「んーん、僕こそごめんね。ローズちゃんがどういった子かは、良くわかってるのに。わかっているけど、体が身構えちゃうんだよね。シンの前では気をつけないと……うぅ」
気をつけないとなんだろう。兄さんは同僚でさえ容赦なく対応してるんだろうか。
「この痛み止めどこで売ってるんですか?すごく良く効きますね。流石に骨折だし気休めにしかならないだろうなって思ってたんですけど、今そんなに痛くな……いっ……」
「あまり動かさなければ、ね。骨折れてるのに立とうとする人ってほんとにいるんだ。そんな事するのはオーマだけかと思ってた。ノアくんって結構馬鹿だね」
辛辣だ。
いや、私でも今のは馬鹿だなって思った。なんで立とうとしたんだろう?流石に馬鹿と口には出さないけど、馬鹿だなぁ。
それを聞いたノアはムッとした顔をして、私の手からズボンを取ると自分で履き出した。仮的に固定された足を支えて、ゆっくりと。
「はい、掴まって。座ったままじゃ履けないよ」
最後はユーラさんに手伝ってもらって、今できることは終わり。あとは兄さんが帰ってこないとね。ちゃんと治してくれるかな。治してはくれるんだろうけど、文句はたくさん言うんだろうな。
さて、どうしてこんなことになったか聞こうっと。
◼️◼️
「なんで猫で骨折するんだよ。魔物に飛びかかられても平気なくせに。なんで猫」
「魔物は攻撃していいじゃないですか。でも猫ですよ?助けようとした猫が急に自分の方に来たらびっくりして落ちません?」
「いや俺木に登らなくても猫ごとき地面に降ろせるから。登ってても落ちないし。てかお前も木登らなくてよかったはずだろ」
「………………。……確かに」
「いや、おい……」
ユーラさんと対戦する前に準備運動、と家の外にいたノアは途中、木に登って降りられなくなった猫を助けて、と女の子に頼まれ木に登ったらしい。
登って手を伸ばし、今届くと言うところでその猫はノアの方へと飛びかかり、それに驚いてその木から落ちてしまったと。
そんなまさか。
まさかの結果。そんな事で怪我する?ノアが。魔物を斬って、すれ違う瞬間に体内に蔓を伸ばして心臓を潰せるノアが。
でもしてしまったのが事実でした。猫に飛びかかられるノア見たかったな。
「猫ちゃん無事でよかったね。女の子はびっくりさせちゃったけど」
「ああ、何もなかったみたいでよかった」
「僕骨折したんですけどね」
「ア?治ったんだから何もなかっただろ」
わかるようなわからないような理論だ。
「でも最後まで治してくれてないじゃないですか。まだ痛むんですけど……」
「お前はちょっとくらい怪我してた方がいい。動き回るたびに、怪我した時の状態に戻っていく呪いかけたから端っこで大人しくしてろよ」
兄さん、それは闇の魔法なのではないですか。
ノアのことを心配してなのか、嫌がらせなのかわからないけど大人しくなるのならいいことかな。たぶんね。
でもまぁとりあえず一件落着、完治するまでに落ち着いて、頭を冷やしてください。
「杖あるよ。使う?」
「少し歩くくらいなら痛むだけだ。呪いの方は足を動かさなくたって関係なく進行するからな」
「えげつない……」
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