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隠し攻略ルートは悪役の私!? 〜乙女ゲームの悪役に転生しましたがヒロインから女神と崇められています〜  作者: 絡鎖
スピンオフ!番外編!この世界の私たち。

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痛みと


ユーラ : ラクスの兄、シンの同僚。転性転生者。前世の知識は“知識”としてのみ知っている。

 私の予想通りノアを置いてナラルさんは旅立った。


 兄さんがいくつか魔道具を渡そうとしたけど断って、通信用の小さな魔道具だけ受け取り旅立った。


 そしてこれまた予想通り、ノアはナラルさんが旅立ったその日から体の調子を戻すべく、動き出していた。具体的には私の依頼に着いてこようとしたり、兄さんに止められない程度に運動をしたり。


 後者はいい事だ。でも前者は断った。何があるかわからないしもし戦闘中にノアの具合が悪くなって守りながら戦わないといけないとかになったら、私が対処できると思えないから。


 駄目だ、無茶はするな、って散々に言われているのに外に出る頻度を増やしたり、王都の門の外に出てみたりとあちこち動き回るけど、今のところ不調はないみたいで兄さんもそれを止めてない。というか最近の兄さんはノアに対する態度が軟化してて、ノアはとても気味悪がってる。『懐に誘い込んで油断させて消す、って事ですか……』なんて言って。


 私も兄さんの同僚さんたちもそれがわかるほどに軟化してるから、よっぽどだと思う。


 「あれ?ローズちゃん、ノアくん見なかった?手合わせしたいって言われてたんだけど」


 ユーラさんだ。しっとりとした黒髪に、明るく綺麗な水色の瞳。これがあのラクスのお兄さんだとは思えないほどに温和で優しげな雰囲気の人。ラクスも水属性の魔法を使っていたし、ユーラさんもそれは同じだった。


 兄さんともナラルさんとも違う、“大人の魅力”があってとても素敵なお兄さんって感じ。取り乱したところをほとんど見たことがない(兄さんがやらかして後始末をするのがユーラさんらしい。すごく申し訳ないから私はどうにか未然に防げないか思索中)し、いつも穏やかで余裕がある。


 しかも兄さんの同僚さん達の中で、私が闇属性という事に1番に慣れてくれた人。ラクスのことだって、私が黙ってたのが悪かったって言い出してもおかしくないのに『弟が迷惑をかけたね、キツく言い聞かせたから』って。ラクス今どうしてるんだろう。


 「見てないです。外かな」


 「それもありそう。ありがとう、探してみるね」


 そう言ってユーラさんはにこりと微笑むとその場から離れていった。外を見に行ったのかな。


 そもそもなんでノアが兄さんではなく、ユーラさんに手合わせを頼んだかというと、剣だけで見たらユーラさんの方が兄さんより強いから。兄さんの魔法が飛び抜けて強いから騎士として劣って見えるけれど、まったくもってそんな事はなく、剣単体だけを見るならユーラさんは王国一だって。兄さんも悔しそうに認めてた。


 そりゃあ平民で騎士にまでなるんだから強くて当たり前だよね。


 それはそうとノアはどこに行ったんだろう。何かを人と約束しておいてすっぽかす人じゃ無いはずだから、近くにいそうだけど。


 私も探そうとその場から一歩踏み出した時、外からユーラさんが戻ってきた。ノアに肩を貸しながら。


 「え、ど、どう……」


 「大丈夫、ちょっと足を痛めただけっぽいよ。右足の方」


 「回復魔法で痛みが取れない……」


 「……ちょっと足が折れただけっぽい」


 だけって。


 足を捻ったのなら回復魔法である程度痛みを和らげ、治すことができる。でも折れてたら回復魔法では治せない。治癒魔法じゃないと治せない。


 ノアはどうして足が折れるような事態になったのか気になるけど、とりあえず先に足をどうにかしないと。


 「ちょっとごめんね。ほいっと」


 ユーラさんがノアを抱き上げ、そのまま居間まで運んでいく。ノアが抗議の声を上げる間もなくソファに降ろされ、靴を脱がされていく。


 手際が良い。


 「じ、自分でできます。できるので、」


 「痛いんでしょ?無理したら駄目だよ。シンが帰ってくるまでは我慢するしかないけど……あ、痛み止めがあったかな。ローズちゃん、その辺りの棚にない?見てくれる?」


 返事をして、棚の中を探す。私もこの前この辺りで痛み止め見た気がする。


 それにしてもどうして怪我したんだろう。ノアが怪我する、しかも足を折るなんてよっぽどだと思う。魔法だけでも、魔法抜きでも実力は高いし兄さんとシーナに着いていけるほどだよ?そんな実力者が日常生活で足を折るって。


 やっぱり本調子じゃないからかな?


 「うーん、脱ごっか。このズボン細めだし、長いから処置がし辛い。ベルト外すよ」


 「それは流石に自分でできます!……っ、ふぅ……切られた時より、マシ……な、はず」


 「ほーら、僕に任せてくれていいから。それに痛いなら声出して良いんだよ。声出した方が痛みが散るってどこかで聞いた気がする。腰少し上げられる?支えるから。ズボンが抜けない」


 あ、これだ、痛み止め。兄さんがいるから薬の管理が杜撰な家で一つ探すのも一苦労。駄目だよね、ちゃんと管理しないと。今度整理しよう。


 私が2人の元へ戻れば、ちょうど負傷した右足からズボンを引き抜くところだった。触れて引っ張られ、それが痛いらしくて低い呻き声が時々上がる。ノアの履いてるズボン、いつも結構細めだからなぁ。ぴっちりじゃなくて少し余裕はあるけど、怪我してるなら脱ぎにくいことに変わりはない。


 「痛み止めありました。水持ってくるね。ついでにズボンも持ってくるから、ノアの部屋のとこ漁るけれどいいよね」


 ユーラさんが水属性で水を出せるけれどわざわざ水を持ってくるのは、どちらにせよコップは使うからコップだけ持ってくるより水を持ってきた方が効率がいいから。


 「お願いします……緩めのズボン……あったかわかりませんが……」


 「無いのなら僕が以前履いていた部屋着があるよ。膝丈のやつ。入って直ぐのとこにかけてある。捨てようか迷ってて。ほら、早く行ってきな?……お互いあんまりこういうの見たく無いし見られたく無いんじゃない?」


 下着姿のことを言ってるのだろうか。


 確かに普通なら見ないようにしたり見られないように隠したりするんだろうな。声をあげて赤くなるやつ。よくある話だ。


 でも私たちは長くは無いけど短くも無い時間を一緒に旅した仲。ノアは獣に服全部盗られたことあるし、実は私なんて木に擬態する魔物を見抜けなくて根っこを踏んじゃって、何度も逆さ吊りになってズボン脱がされかけたし。


 今更なんだよね。ノアの下着姿だって見るのはこれが初めてってわけでも無い。お互い見慣れてるというか。恥じらいの時期をもう過ぎている……。


 「見慣れてるんで」


 「見慣れられてるので」


 「……そ、そうなんだ。とりあえず水と服よろしくね……。僕は添え木になるもの探してくる。確かオーマが骨折した時のがあったはず……」


 あ、これは誤解された。絶対そう。


 年頃の男女が下着姿を見慣れてるって、そういう事でしか無い。あぁほら、ユーラさんが微笑みを深くして添え木を探しに足早に居間から出て行ってしまった。


 ノアは気にせず顔を歪めながら折れた方の足を見てる。……誤解解くべきだよね。


 「ローズ、先に水だけ持ってきてもらえますか?捻った上に折るなんてほんとツイてないな……」


 ほんと何も気にして無いな……。もしかすると誤解されたっていうのは私の気のせいかもしれない。ユーラさんと同性(・・)のノアは現に気にして無いわけだし。言った本人だから、ってのもあるだろうけどあまり気にしなくてもいいかもしれない。


 わかった、と返事をして台所に行って水を汲みそれをノアに渡してから、替えのズボンを探すためにノアの部屋に入った。案の定箪笥の中身はほとんどなくて(この前兄さんにダサい服全部捨てられたって言ってたな)、今履けそうなのは見つからなかった。


 長いのはやめといた方がいいよね。脱ぐのも履くのも大変そう。ユーラさんの部屋にお邪魔しよう。


 「えーっと、確か兄さんの隣だから……ここだ。お邪魔しまーす……」


 中に入ると、めちゃくちゃ綺麗な部屋が目に飛び込んできた。整理整頓されてるだけじゃなくて、青と黒で統一されたすごくお洒落な部屋。家具の選び方も、配置の仕方も全部のセンスが良すぎる。


 部屋に入り込んだ自分が異物みたく思えてくる。お洒落すぎて。


 言ってた通りにズボンは入って直ぐのところにかかってた。それを持って居間に戻る。


 「は!?してません!してませんよそんなこと!どこからどうしてそうなるんですか!?」


 「なんだ〜!慣れてるとか言うから何度もしてるのかと思ったよ。誤解だったみたい」


 うわ。これはアレの話だね。


 やっぱり誤解されていたらしい。さっき追いかけて言えばよかった。ノアは気がついて無かったわけだし、言わなきゃ気がつかなかったはずだよ。


 「どこからそんな誤解が生まれるんですか……欲求不満なんですか?」


 「適度に発散してます〜。ノアくんこそどうなの?ローズちゃんいるのに。やっぱりシンにバレないように何もできてない感じかな?進んで無い?」


 「それもある……んですけど。こういうことの経験が無さ過ぎてどう行けばいいのかわからなくて……進展なしです。飽きられなければ良いのですが……」


 「わからないんだ。ふふ、かわいいね。そうだ!もし良かったら僕に相談してよ。シンには絶対に言えないだろうし、他に身近に話せる人、いた方が良くない?僕も聞きたいし話したいし」


 「いいんですか?プレゼントとかも悩んで悩んで渡してて……苦手なので相談できるのなら心強いです。……え、話したいってことは」


 「片想いなんだよね……でも話したい。シンは恋愛なんて知らん、ローズ命!だし、残り2人に話すような感じでもないからもやもやしてたんだ」


 しまった。


 入るタイミングがない。この話の内容でとても入りづらい。聞いちゃったし私はなんて顔して入ればいいんだ。


 どうにか話題の切れ目でスッと行くしかない。


 いや、いっそ影から行こう。部屋からそうやって移動しました風を装えば声が少しでも聞こえたと思われないから普通に対応してくれるはず。よし。


 思いついたら即行動。影の中に入り込んで2人の下まで移動する。


 ユーラさんの影から出ようっと。

今回の木に擬態した魔物を見抜けないことや、本編での蜘蛛の糸の罠に引っ掛かってしまうなど、ローズはそういうのが苦手です。


そして“そういう事”がわからないあなたは純粋です。

大丈夫です。そのままでいましょう。



続きます。ノアが怪我をした理由などは次回に。

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― 新着の感想 ―
[一言]  この回は間違いなく、どっかの「アッーー!」好きな漫画家さんが近くに居なかったことを、激しく悔やむ回ですね。  怪我の処置の為に脱げと迫る男と、脱がされるのに抵抗する男。  属性次第だけど…
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