こうなるんじゃ無いかって薄々思ってたんだよね
シーナとローズの旅最終話です。
女神が部屋から居なくなった後で部屋の隅々まで堪能させてもらった。もちろん私は常識があるので机の中を漁ることだけはしなかった。プライバシー保護だ。ベッドの下を覗いても少し埃があるだけで何も置いてなかった。……むぅ。
「マットレスの下覗いてない!どうだっ!……ん?紙?」
バッ!とマットレスを捲った勢いで風が起こり何やら一枚の紙が飛び出てきた。これは見ていいやつ?
何か色々文字が書かれてる。
これは……
「女神の使う魔法だ!?なにこれ見たことないのも書いてあるけど使ってくれないかな!へぇ〜!」
魔法の名称と、女神から見た効果が記載された紙。見たことあるやつも書いてあれば、見たことないのもある。使ってないだけだろうけど。見たことある魔法でも書かれてないのもあるから、この紙は最初に魔法を使い出したあたりでまとめるために書いたんだろうなぁ。初期魔法だ。
でもこれはあんまり見ない方がいいよね。書かれてない魔法も使えるとはいえ、他人に手の内細かく知られるのは私も嫌だ。こっそり元の場所に戻します。
「ん〜じゃあ目ぼしい収穫は無し、と……そんなもんかぁ。ベッド下に何も無ければ本当に何も無いんだろうな……。品行方正な女神!素敵です!」
これは私の経験則なんだけど、大抵見つかりたく無いものは机よりベッドの下に隠す。机でも本が並んで置いてある裏あたりも怪しいけど、自分の部屋にベッドがあるのならそこに隠す。マットレス下も怪しい。
アレクだって今の部屋のベッドにリウの国で買ったらしいえっちな絵(ビリビリに破かれた服を着た黒髪の女の子が、植物に絡みつかれて動けなくなってる絵だった。アレクが拘束好きってことよりリウの絵柄だったから、めちゃくちゃえっちな新規絵見られて嬉しかった。今度私も買いに行こう)隠してるの知ってるし、マットレスの下にはアダルトな小説隠してるのだって知ってる。暇な時に読みに行く。るーくんに見せたら赤くなってた。か〜わいい!
るーくんの方はベッド下にもマットレスの下にも何もなかった。机の上に私が適当に描いたアレクとるーくんの似顔絵が置いてあって、恥ずかしかったけどなんだか心臓のあたりがむずむずした。それ見てからはるーくんの部屋に入り込むのはやめた。私の行動が恥ずかしいよ。
これらの事からわかる。女神の部屋には見つかって困るものは置いてない。
「部屋荒らしはこのくらいにしとくか〜。ベッドを堪能するのは後でにして……そろそろ家族団欒に入ってもいいかな」
そう、私が女神の部屋に留まっていたのはひさしぶりに会えた家族でわいわい話すかなって思ったからで。そこに私がいるのもなんだかなぁ。だし。
気まずいからとかじゃない。ウン。一応まだ他人な私がいて話せないこともあるだろうしね。声が聞こえちゃわないように結界も張ったくらいだもん。私、配慮の塊!素晴らしい!
結界を切って、部屋から出ようとドアノブに手をかける。
『だろ!アイツ、そこら辺は絶対ちゃんとするからな。一応信用してるんだ』
聞き覚えのある男の声。
ドアを開ける。
銀髪が増えてる。
「あ、出てきた。何してたの?……なんとなくわかるけれど」
「なんで……」
「なんで俺が居るかって話だろ。ここは俺の実家だ。家族みんなが集まるのに俺だけ仕事って悲しいだろ?近くに設置した転移魔法もあるし、来ないって道はない。で、今に至る」
シンがいた。
◼️◼️
本当の家族団欒に私はお邪魔してしまっていて、完全アウェイ状態。女神もご両親も、シンでさえとても話しかけてくるけど申し訳なさが勝つ。
だってねぇ!久しぶりに実際に会う家族でさ!家族だけでさ!普通話したいよね!部外者入れずに!
いやね、邪魔だよって雰囲気は全くないよ?これっぽっちも。私歓迎ムード。でも申し訳なくなってしまうのは何なんだろう。
そんなの気にしないのが私では!?
「さっき村長と会ったけど、アレクはどうなってんだ?戻るのか?アルカーナにとどまるのか?」
「え、えっと、それは本人に聞かない限りはわかんない。戻りたいのならそれでいいし、残ってくれるのはありがたいし。判断はアレクに任せる」
この村も大変。次期村長はどうなることやら、だもんね。
アレクを連れて行ってしまった私にも責任はあるので悪いと思ってます。戻ってって言った方がいいかな。それはそれでここまでついてきてくれたアレクを使い捨てするみたいで嫌だけど。
「少しは戻ってやれって言えよ?勝手に出てってんだから」
うん、それくらいは言おう。
休みくらい取れるしね。私みたいに。簡単に。
「もちろん。私がいればアレクの仕事くらいできるし〜。休みなんて簡単に取れるからね!」
と、言い切った後だった。家のドアを叩く音がした。
「は〜い。どなた……あら。確か……えーっと。シーナちゃんといた……」
「ルフトです。えっと。しーちゃ……シーナが居ると思うのですが」
「るーくん!?どうしてここに!?」
ドアを叩いたのはるーくんだった。どうして。
髪が乱れてるから、たぶん魔法で加速してここまで来たんだ。急いで来るような用事があったってこと?私を呼びに来るほどの。
「あのね、アレクにぃが熱出しちゃって。でもああいう病気は本当に酷くなるまでは魔法使わない方がいいでしょ?自分の力で治さないと。だからね、しーちゃんに戻ってきてもらわないと人が足りなくて」
「え、つまり……」
「うん。強制送還だよ。かえろ?お仕事が待ってるよ」
…………………………。
…………やだぁ。
帰省編は以上になります。
次回は王都に戻ってからの話の予定です。
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