珍しい組み合わせ
長らく開きました。
ノアです。
「うーん」
「髪飾りはやめといたほうがいいと思うなぁ。ネックレスもダメ。貰ったでしょ。なぁらぁばぁ?指輪か腕輪じゃない?ローズちゃんは活動的だから指輪がオススメ」
「確かにそうですね。となると……」
「青系のは結構貰ってるよ。黒はやめておきな、論外」
「ではこの白か……金も結構……」
「その二つかぁ、うーん、悩む。白だとあれかなぁ、寂しすぎる?金なら豪華な感じもするけど……」
「そうですよね、……うーん。……きん……金のにします」
「そだね、金は今までにない感じでいいかも。装飾もシンプルだし」
どうしてだか僕はこのルス神を名乗る白い男と共にローズへの贈り物を選んでいた。
この男は商品を眺める僕に対し突然横から話しかけてきて、そのまま僕は同行を受け入れてしまった。
疑問に思わず2人で買い物をしている時点で僕はおかしいんだろうか。
「え?贈り物……えぇ、そうですが。……箱とリボンの色……?えっと……ではその青の箱に薄青のリボンで」
店員へ品を渡せば、綺麗に包んで渡してくれた。ありがたい。そのまま渡すなんてかっこ悪いから。
「ね〜ぇ〜。お茶してこ。男子恋バナしよ」
「今日はこれを買うためだけに外に出てて……連絡無しにあまり長時間出歩くとシンが」
「いーよ、ボクが話付けるって。行こ。てか保護者じゃ〜ん、大事にされてるねぇ」
◼️◼️
連れられるがままに2人して店へ入り、ニコニコしているルスと向かい合って話している。
やっぱり僕はおかしいだろうか。
「恋バナも何も今目付けてるのが居なくってさぁ。聞くだけになりそうなんだけど。ま、それも楽しいからいいよね。ねね、あれからどうなの?」
「あれからって……いち、一度、王都を2人で散歩して……それからはローズが大きな依頼を他の人と受けてしまって家に帰ってくる時間も遅いし……僕の方も工房行ってて中々会えなくて……」
なんでこの人は知ってるんだろうか。神というのが本当だからだろうか。
そもそも僕は、ルス神と実際に会ったことはない。声を聞いた気はする。けれど、対面して会ったことはないから目の前の彼が本当にルス神なのかわからないし、本物だとしてどう接すればいいのかもわからない。
僕はルス神に体を使われていた。別にそれに対してはルス神のせいとは思っていない。そういう風にしたのは、あの男だから。僕らは巻き込まれただけ。
でもそれ以前に“神”だ。みんなは助けてくれたと言っていたけれど、それ以外何もわからないし、僕としては彼を信仰する宗教が暴走して大変な事になったのだから、彼もやばい神なのではという疑問が抜けない。
「デートだデート!ヒュ〜!!でもそれ以外なんもできてないんだ〜へぇ〜。ローズちゃんは恥ずかしいから避けるとかそういうことはしなさそうだからなぁ。本当にお互いの運が悪いとしか。残念だねぇ。もっと仲良くしたいもんねぇ?はじめての彼女だしねぇ〜?」
……これを神と思えるかはまた別の問題だけど。ニヤニヤが気持ち悪い。
「そう……、ですね。もっと長く一緒にいられればとは思います。せっかくシンも見逃してくれている事だし、気が変わる前にもっと……」
「……なんか真剣でボクが茶化したの申し訳なくなってきた。そうだなぁ。あ、そっか。それで贈り物なんだ。はぁ〜、お熱い事で。いいなぁ、ボクも恋したぁい」
そう言って口を尖らせる彼。なんとも表情豊かな神だ。この目の前の人物を崇めろと言うのは、シーナを手懐けろというのと同義に難しい。
ルス教の信者は知っていたんだろうか、崇めている神がこんな人間らしい神だということを。
「んっ?」
そんな事を思いながら紅茶を飲んでいた時だった。突然ルス神が背筋を伸ばし、辺りをキョロキョロと見回し始めた。
「どうしたんです?」
「騎士団ってこの辺りの見回りでもするの?それともこの時間だからお昼休憩に出掛けてるの?……違うよねぇ、この猛スピードで向かってくる感じ……あ〜見つかっちゃった」
「おいノア、お前今日は“ちょっと買い物して帰るだけ”って言ってなかったか?俺が昼上がりだからそれまでには戻るって言ってたよな?」
聞き覚えのある声に振り向けば、騎士服に身を包んだシンがこちらへずんずんと向かってくるところだった。
「すみません。無理矢理連れてこられて」
「ねぇシンくんいつこんな魔法覚えたの?ボクさっさとずらかろうとしてたのにこれなぁに?」
「神縛魔法。しかし3分の2も持っていかれるのは効率悪いな……。まぁそれはいいんだ。ノア、お前は真っ直ぐ家に帰って寝てろ。俺はコレと話がある」
「や〜ん怖い〜!置いてかないで、ノアくん!」
◼️◼️
くねくねした動きが気持ち悪くて未だに脳裏から離れない。シンに頼んで消してもらおうか?
言われた通りに帰ってきたはいいものの、今の時間家には誰もいない。部屋へ買ったものを置き、何をすべきかと戸惑ってしまう。
いつもなら、親父の仕事に着いて行ったりローズと依頼を受けたりしてる時間なんだけど、今日は半日つかってたっぷりシンに診てもらう予定の日だった。
「でもまだ帰って来ない、と……」
あの様子だと少し話し込みそうだし、昼食でも作って待っていようか。シンだってどうせ食べていないだろうし。うん、そうしよう。
指輪、いつ渡そうかな。まさかシンの目の前で渡すなんて出来ないし、時を考えないといけないな。寝る前に会えれば、周りには誰も居ないんじゃないだろうか。見られてたら恥ずかしいから。
しかしあのルス神を名乗る男、不思議だったな。全体的に白いのに、鮮やかで。みずみずしい白だった。シンも知っているみたいだったし、ルス神であることは間違いないんだろうな。
────『あ、そっか。ちゃんと会うのは初めてか。じゃあ改めて。初めまして、ノアくん。ボクはルス。この世界の、神だ。君の体を使ったこと、君のおかげで世界は守られたこと。とても感謝しているよ』
僕ははっきり言ってあの時のことはあまり覚えていない。ただ苦しくて、しんどくて、辛くて。自分を保つのに必死だった。
僕のものではない記憶があるのは認める。しっかりと覚えているし、それのせいで今でも“自己”が混濁する時がある。あれは、おそらく……いや確実にルス神の記憶なんだろう。
でも、出会ったルス神を見ても何も感じなかった。記憶が何か刺激されたり、具合が悪くなったりもなかった。
あぁ、でもあの時のことを思い出したら気分が悪くなってきたな。
後ろから襲われて、水槽に漬けられて。今でも後ろから声がすると身構えてしまう。これも後遺症か。
「はぁ……」
親父は、ここに留まるのが苦ではないみたいだった。だから、僕のせいで親父を留めているというわけじゃあない。
ローズは、しょっちゅう依頼を受けては外へ繰り出しているけれど、そこまで旅というのに拘っている様子はなかった。だからこれも僕のせいで何か思いとどまらせているというわけではない。
だから別に早く調子を戻さないといけない、と言うわけではないけれど。焦ってしまうのは仕方ないことだろうか。
「ため息吐きたいのは俺だ。寝てろって言ったよな?なんで台所で食材広げてんの?」
「っ!?……シン、驚いた。入ってくる音がしませんでしたが……」
台所の入り口にシンが寄り掛かって呆れた顔でこちらを見ていた。
「だってお前真剣な顔で考え事してたし。俺はちゃんと家の扉開けて帰ってきたし、お前の事も呼んだ。寝てないにしても部屋かどこかで休んでるだろって思ってたが……まさかこんな所にな。なぁ?今日は何の日だ?」
「……診察、ですね」
「だな。そんでお前は今何するべき?」
「…………シンに、従います」
「そうだな。部屋へ行け。着替えて横になってろ」
「はい……」
ノア主の話を読み返していて、ifの夢でローズに想いを伝えようと決心していたのに結局1ミリもローズへ想いを伝えられていないと言うことに気がつき、とてもノアらしいなと思っていました……。
最近Twitterでなんとなく入れて検索すると感想がとっきどき見つかるということに気がつき、嬉しいです。“かくあた”やキャラ名の組み合わせ等で適当に呟いて見てください。見つけたら喜びます。
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