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隠し攻略ルートは悪役の私!? 〜乙女ゲームの悪役に転生しましたがヒロインから女神と崇められています〜  作者: 絡鎖
スピンオフ!番外編!この世界の私たち。

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とある昔話7

深夜に寝ぼけて書いたのでおかしいところあるかもです。

 長い長い、色味の無い道を通って、ようやく開けた場所に出た。


 道もそうだったけど、嫌な感じの空間。


 ここに、いる。


 倒すべきものが。


 『まさかここまで自ら来るとはな。無謀な』


 耳障りな声。頭の中を引っ掻くみたいな、嫌な音。


 霧が急に晴れるみたいに、ソレは目の前に現れた。


 人の形はしている。でもこれは私にそう見えているだけで、実際はそうではないと地球の神が言っていた。『私はあえてこの姿をとっているけどね』とも。


 輪郭がボヤけていて気持ち悪い。


 さっさと終わらせよう。死ぬか、生きるかだ。私は全力で“生”を勝ち取りに行く。決して、ヤケクソなんかじゃない。


 「仇、取るから」


 『異物。自ら消去されに来たのなら話は早い。……どうせ終末の世界だからと受け入れたが……間違いだったようだ』


 「そうだね、間違いだったね。私は今度こそ人生ちゃんと生きたいって思ってたのに変なのに巻き込まれるし……でも、世界は終わらせない。こんなのキャラじゃないのになぁ!」


 フルムが動く様子はまだない。


 先に動く?いや、相手は神。この世界を創り上げた存在。動きを見ないと。下手な行動は命取りだ。


 『だからなんだ。もう終わる。この世界は消滅させる。最初から、やり直す』


 「させないって言ってんの!ここで生きられなかったら私、他で生きられないし」


 『知らん、お前のことなどどうでも良いわ』


 「あーそうでしょうね!私は勝手にあんたを倒す。この世界は消させない。存続させる」


 『話にならぬ。お前をここで消去すれば終わることだ。……そうだな。神に刃向かった愚かな行為、死にながら悔いよ』


 フルムが動く。余裕を持ったような、ゆったりとした動き。絶対に負けるなんて、倒されるなんて思っていない動きだ。


 ムカつく。


 「……【空間創造】……把握」


 小さく呟く。フルムに手の内を知られるわけにはいかない。


 『失せろ』


 「……っ」


 一言聞こえた瞬間、私は腰にさしていた刀を引き抜きそのまま目の前の空間を切り裂いた。何か認識できたわけじゃ無い、ただ直感的にそうする事が良いと思って勝手に体が反応していた。


 この刀、なんでも切れるんだなぁ。……じゃなくて。


 「私以外からの動作認識!」


 多分、フルムの攻撃は魔法とかとは違うはず。だから、魔法無効だとか威力ダウンは意味がない。なら攻撃を認識して切るのが1番だと思う。脳筋万歳。


 フルムへ向かって走りながら刀を構え直す。左手で魔法陣を認識し、次の行動へ備える。


 『…………あやつ……協定違反ではないか』


 よくわからないことを言ってるフルムに向かって刀を振る。寸前でフルムは後ろへ跳躍し、離れた所へと着地した。お返しとばかりに四方から攻撃される。


 ま、簡単に私の攻撃が当たるとは思ってないけどさ。


 それより、いつもより体が軽い。それに魔法がスムーズに認識、使用できる。頭が重くならない。この空間が原因かな。それだけは良いことだね。


 軽いからと言って簡単に相手を圧倒できる訳ではないんですけど。


 止まない攻撃を切り、時に避ける。これ一回でも当たったら終わりなんだろうなぁ。でも、私の方もこの刀を一回でもフルムに当て、切ることができれば。それで決着は着く。


 それまでが長いって話で。


 フルムに肉薄したと思えば避けられる。ずっとそうやって鬼ごっこみたいに繰り返している。


 「ああもうっ!【空間創造】、移動!」


 『なっ……』


 魔法陣を弄り、把握しているフルムの場所へと移動する。その手を読めなかったらしいフルムは、目の前の私を見て一瞬だけ狼狽した表情を浮かべると後ろへと避けながら手を私に向かって突き出してきた。


 ぶわ、と。手の前から何かが生まれる。


 丸まった白い翼が大きく開かれ、フルムの姿が隠される。何処にいるかは把握できるけど、フルムが何をするかが見えなくて怖い。


 目の前に立ち塞がった白い翼の天使。ああ、これが例の天使か。清き行いをした者は天使になるっていう教えは本当だったらしい。清き行いをした元人間なのかはわからないけど。


 「っ、邪魔……っ!?」


 天使を切り捨てようとした。フルムが私にけしかけたものだ、同じように私を殺しに来るはずだから。先に、殺さないと殺されるから。


 天使の顔を隠していた翼が動き、中が見えた。


 俯く頭が持ち上がる。


 「セリ……ス……」


 構えた刀が進路を変え、緩々と腕が落ちる。


 切るなんてできなかった。例え、これがフルムの罠だったとしてもそんなこと。


 天使の翼がバサリと動く。


 瞬きの間に目の前から白は消え、私は背後からの攻撃を認知した。それを避け、振り向く。


 とても悲しそうに笑うセリス。


 「どうして、庇っちゃったんだろう。ううん、僕はリアに生きてて欲しかった。その為なら僕の命なんて。違う、こんな事になるのなら2人揃って死んでいた方が。そんなの間違ってる、リアには笑っててほしい。だから、だから僕のした事は間違いなんかじゃない。……ねぇリア」


 伏せられた視線が私の方へと向く。それを認識した次の瞬間には目の前にセリスの顔があって。


 「ごめん、ごめんね。僕、もう僕じゃないみたい。体は勝手に動くし、リアがとても憎い。誤解しないでね、これは僕の思いじゃないよ。そういう風に、変えられちゃった。……ねぇ、リア。僕、これから酷いこというね」


 歪んだ顔でどうにか笑みを作り、セリスは言葉を捻り出す。


 「全力で殺す。全力で殺して?リアを殺すくらいなら、リアに殺されたい」


 セリスの言葉が終わると同時に胴体へのダメージがきた。詰まる息を吐き出し、セリスから距離を取る。


 殺して?無理だよ、私にはそんなこと。できっこない。


 白く光る多くの矢が、私へと殺到する。避け、刀で落とし、けれど反撃なんて絶対にできない。


 「無理、むりだよセリス……私、そんな……」


 「もう、僕は一度死んでるんだよ。だから悩む事ない。リアがよく言ってた……そう、死体蹴りってやつだよ」


 いや合ってるような合ってないような。


 セリスは死んだ。私の目の前で、私を庇って。だから今目の前にいるセリスは、セリスじゃない。……そう思わないと。私、死んでしまう。それはセリスも望んでいないから。


 だとしても決心と行動は伴わないもので。


 再開されたフルムの攻撃とセリスの矢。両方を相手しながら両方を倒すなんてできない。


 今、こうして神と神の使いの2つを相手できていることが不思議なんだ。奇跡でしょ、こんなの。ただの人間の私が。


 地球の神が何かしたのかもしれないな。それ以外に私の今の状況を説明できるものがない。


 「【空間創造】!」


 ずっと防いでるだけでは何も変わらない。1つ間違えれば一瞬で死が訪れる。そんなギリギリを、いつまで続けていられるか。



 いつもよりも鮮明に認識できる“空間”を、把握する。私の手でこの空間を全て掌握する。


 私の空間創造は、そんな大それたことは出来ない。簡単に言えばその場所で、現象を起こすだけ。箱の中で物を荒らすしかできない。だからその箱の形を変えたり、潰して無くしたりなんかはできない。それに、その中にいる人物の能力を制限したり動かしたりなんかもできない。せいぜい空間の中で妨害するだけ。自分は出来るんだけどね。


 これはいつもならのこと。


 でも、今なら。今なら、この空間自体を変える事ができる気がする。私のテリトリーへと。


 「目標を、特定地へと移動」


 空中に光る矢を背に、私へそれを落とそうとしているセリスを捉える。顔は、向けない。


 セリスを目標とし、フルムの背後へと移動させる。


 「……ぁは、」


 微かに聞こえたセリスの声。直後、フルムへとセリスの矢が降り注ぐ。私は迷わずその中へと飛び込んだ。


 『欠けた魂風情がよくも……っ!?』


 フルムはセリスへと気を取られたらしい。だからなのかこれも地球の神のお陰なのか、手の中で薄青に光る刀身はフルムの首を(かす)り、切り傷を作る事に成功した。


 切り落とせなかったのは、途中で避けられたから。


 ああでも、結構切り込めたっぽいな。だからもう一度、チャンスを作れれば。


 『ぐっ、がぁ……っ!!』


 次へ動こうと構えたけれど、フルムの様子がおかしくなった。


 刀がつけた傷口を抑え、蹲っている。


 今チャンス?いや、なんかボヤけてた輪郭がもっとボヤけてきたし黒いオーラみたいなの出てるし危険っぽい。どうしよう。


 私が考えるために止まった数瞬後、何かの動きを認識した。でもセリスは空中に浮かんだまま黙ってフルムを見下ろしていて、フルムは蹲ったまま。なら何の動きだろうか。


 「……あれっ。もう決着ついてるのか。まだまだ時間はあるとばかり思ってたんだけど。君を見くびりすぎていたみたいだ」


 地球の神だった。


 悠々と歩き私の横までくると、微笑む。


 「よくやったね」


 「…………え?終わり?決着?」


 「そうだ。その刃で、少しでも斬りつければ神は弱体化する。大きな傷ほど大きく、ね。弱体化なんて(・・・・・・)した事のない神(・・・・・・・)にとって、その感覚はとんでも無く不快で、苦痛だ。抜けていく力を抑えるので精一杯。だから、今の私でも対処できる」


 人型に見えていたフルムは、もう人型では無くそのあたりに漂う濃い靄になっている。なんかだんだん規模も小さくなっている気もするし。


 あれ?神は、って言った?てことは地球の神も例外ではない、って事だ。そんなものを私に渡して、信用して背を向けている……フルムを倒すためとはいえ、もし私が斬りつけたらどうするんだろう。


 しないけどさ。


 「呆気ない……もっと死闘みたいなの起こると思ってた。……いや、充分死と隣り合わせだったけどさ。なんか、実感ない……」


 「そうか。君はそうかもしれないが、彼はそうでもなさそうだよ?」


 彼、と言って地球の神が視線を向けたのはフルムではなく、地面に降りたセリスに向けてだった。

感想、誤字報告毎度ありがとうございます!

多分次で終わりかな?



補足として

・セリスの話は次話

・天使の話は昔話の2か3に

・地球の神はリアンに力を分けているのですでに弱体化経験済み(それ以外でもきっと遊んでいることでしょう)

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― 新着の感想 ―
[気になる点] >私が考えるために止まった数巡後 考えを“巡らせ”る場合なら数巡後でも良いと思うんです。 でも考えるために動きを止めたのなら、数“瞬”後かなー? と思ったので、誤字報告の方にブッ込ん…
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