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隠し攻略ルートは悪役の私!? 〜乙女ゲームの悪役に転生しましたがヒロインから女神と崇められています〜  作者: 絡鎖
第1章 悪役の私がバッドエンドを回避するまで。

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第21話 終わりました。

「ローズぅ〜!!会いたかった!」


「ぐふっ……に、兄さん。私も会いたかった」


私を目にするなり兄さんは飛び付いてきた。勢いが凄い。


仕事終わりにそのまま来たのか、騎士服を着て髪をかきあげた状態の兄さんは新鮮さがあっていい。かっこいい。青と白が主で、金の刺繍がしてある服。


「そういうのいいから!あいつ診てよ」


兄さんはノアとノアのお父さんの泊まる家の前まで来ていた。「俺から行くから、絶対に村から出るなよ。危険だからな」って言われてお迎えは無し。家の扉を開けた途端飛び付かれて、横にいたシーナが不機嫌な顔をした。


「そ、そう、兄さん。ノアを……」


「うう……離れたくない。王都に戻るんじゃなかった。ローズに会えないのがこんなに辛いとは思わなかった」


私を抱きしめたまま離れる様子がない。首筋に顔をぐりぐり押し付けてくるのやめてほしい。くすぐったい。


「何よこれ……」


「目の前で僕がいつも見させられていた光景です」


「……拷問ね」


「ええ、そればかりは同感ですね」


ノアとシーナが何か言っている。兄さんは私にしっかりと抱きついて離さない。


「兄さんそろそろノアのこと……」


「あんなのどうでもいいよ、ツバでもつけとけ。闇に飲まれろ。……いやそうなるとローズと同化したみたいだから嫌だな。じゃあ俺が直々に手を下してやろう」


兄さんは突然そんなことを言って私の体を離すと、前に魔物を消した時のようにノアに向かって手を軽く振った。光が迸る。待って手を下すって、魔物みたいに消すってことなの!?


「えっちょ」


「うわっ」


光はノアの足に当たるとモヤを侵食し始めた。黒いモヤと光は拮抗していたけど、だんだんモヤが押されてきた。


少しするとモヤは全部消え、覆っていた光も黒く変色した足に染み込むように消えた。


「……なんだか暖かいです」


「俺が浄化してやったんだ、感謝しろよ」


変色したままだけど、モヤは消えてる。


なんだ、良かった。まさか兄さんがそんなことするはずないよね。


「で、ローズ。俺に何か言うことあるだろ?」


「へっ?兄さんに……?」


もうノアのことは頭にないのか、私だけを見ている兄さん。笑顔だけど怖い。え、これ以外に何かしたっけ私?……あ。


そもそもこれを起こした原因は木を切ってたこと。


「ごめんなさい、危ないことはしないって言ったのに……」


「やっぱり無理にでも目の届く範囲に置いておくべきなのか……?落ちたんだろ?……落ちる時に抱きつかれてるから……上書きしないと」


独り言なのか話しかけているのかわからないことを言った兄さんはまた抱きついてきた。


シーナは諦めたのか深いため息を吐いてるし、ノアは苦笑しながら体を起こして足をさすっている。もう動くようになったらしい。






村長と父さんと母さんと少し話した後、兄さんは王都に戻ってしまった。明日も朝早くから仕事なんだって。


帰り際に言われたのは、



「実はさ、あいつには軽い浄化魔法しかかけてないんだ。本当の浄化魔法なら一瞬で治せるから。あ、ローズが弱いって言ってるわけじゃないぞ?今回のは軽いものだったからさ。木ももう大丈夫だ。ま、あいつしばらく碌に歩けないだろうな。足がガクガクで」



ってことだった。






●●






本当にしばらくノアは家から出てこなかった。歩けなくて。


兄さんが戻ってきた日から私に頼まれる仕事は極々軽いものになっていた。小さい子の面倒を見る、話し相手になる、家の掃除をする、壁の塗り替えを手伝う……。絶対兄さん何か言ったよね。


その分シーナに回る仕事が多くなったらしくて、シーナになぜかありがとうございますと言われた。なんでもその分たくさん食料を分けてもらえるからだそう。それにしてはものすっごく感激してたんだけど……そんなにシーナたちは食べる物に困ってたのかな。……なんか申し訳ないな。


「ローズおねえちゃん、みてみてー!」


村の端、本当に小さな花畑がある。


そこで花かんむりを被り、笑顔を向けてくる女の子。リリスちゃん。明るい茶色のふわふわした肩までの髪と、ピンクの花がとてもよく似合っている。


「わ、可愛い。お姫様みたい」


「おひめさまー?リリス、おひめさま!じゃあローズおねえちゃんはおうじさまね!」


男ですか。いや中性的な顔だって自覚はありますけど。ほら、女性的な部分だってあるよね?……ないな、胸とか皆無だもん。まだ成長途中なだけですけどね!


「いやそこは侍女とかお世話する人じゃない?」


「んーん、ローズおねえちゃんはおうじさまなのー」


なぜだ。解せぬ。


「なんでかな」


「リリスがおひめさまなら、ローズおねえちゃんがおうじさましてくれないとおひめさまなれないの。ローズおねえちゃんかっこいいよ?」


そうか、男っぽいからじゃなかったのか。よかった。


「なら、リリス姫」


リリスの前に跪くと私は手を差し出した。


「はぁい、おうじさま」


「私と一緒に踊って頂けますか?」


「ちがーうー、おうじさまはね、リリスをつれてっちゃうの」


何かのおとぎ話かな。お姫さまを連れて行ってしまう王子様。ありそうだ。


「どこへ?」


「ちかのくに!あくまとか、まものがたーくさんいるとこだよ!そこでね、おうじさまはわるいおうさまにわるいまほうをかけられてるの。おひめさまをつれてこい、って!」


なんて話だ。私は操られた王子か。


「じ、じゃあ……姫、着いてきてもらおうか」


「きゃー!」


楽しそうだな。笑顔で私に引っ付いてる。これじゃ自分から着いて行くことになるけど……。


「それでねそれでね!ちかのくにについたおひめさまは、おうじさまにかけられたまほうをとくためにおうさまとたたかうんだ!」


普通逆じゃない?それ。でも連れていくのは王子であるから……うーん、難しい話だ。


「おうさま……おうさまいないときはどうやってまほうとくのかなぁ?」


「王子は渡さぬ!」


響く女の声。


「おうさま!!おうじさまのまほうをといて!」


「ならぬ。王子は永遠に地下の国で儂の言いなりになって生きるのじゃ」


シーナ。いやなんでいるの。仕事は?


「そんなのだめー!おうじさまをかいほーしなさーい!」


「うっ……純粋さにやられる……くそぉ、王子ぃ!」


リリスがシーナの胴体をポスポスと叩く。やられたシーナは倒れ、リリスが踏ん反り返ってそれを見下ろしている。


「まほうがとけたおうじさまとリリスはこれから2人でおうさまをたおしてしあわせになるの!ちかのくににひかりをもどすの!」


「代わって……そこ代わって……」


私抜きで話は進んでいった。





「女神の仕事を変わりにできるなんて!ありがとうございます!ありがとうございます!」

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