締まらない女子会
オチも何もないです。ただ駄弁ってるだけ。
「この2人のこの……なんていうんだろう、関係性?お互いを想っているのに、想っているからこそ口に出せないこの焦ったい感じっていうかしんどい感じっていうか……最高じゃない?」
「わかる!そこの関係性やばいの!最新刊読んだ?やばいよ。もうね、もう読めない。辛い。あんな……あんな……っ!」
「もう出てるんだ!さっすが〜、お早い執筆速度で。後で買いに行こ」
「あ、ちゃんと買うんだ。特権でもらってるかと」
「いや、一読者としてそれはできないよ。いくらボクがあの子に力授けたとはいえさ……」
薔薇だらけの中庭、白いテーブル、その上に並ぶたくさんのお菓子。
ただいま女子会中です。それではメンバーを紹介します。ルス教改革中のシーナさん。この世界の神であるルスさん。そして私、ローズです。以上、今回の女子会のメンバーでした!
……いやなんでルスがいるの。
やぁ、なんて言いながらやってきて、白い柔らかな光が辺りを包んだと思ったら転移していて。あっという間にこんなことになっていた。私依頼の途中だったんだけどな……あの魔物、瀕死のまま放置ってかわいそうなことした。こんなことになるなら一思いにやるべきだった。
「なんで私にはないの?なんか欲しかったなー、よくあるチート能力!」
「だって君、思考が異常……ゴホンゴホン。ボクさ、よく地球にお邪魔してるんだけどあの子の作品大好きで!この世界じゃ地球みたいな紙ないし。ボクが頑張るしかないじゃん?」
「異常って言った!?ねぇ何異常って!ねぇ目逸らさないでよ!酷くない!?私の女神への思いを否定するなら神でも容赦はしない!私は、私の正義を貫く!同志とか思ったのが馬鹿だったー!」
「その女神信仰が異常とは一言も言ってないよ〜?そう言われたと思ったってことは異常って認めるの?」
「う〜っ!なんなのこの神!これが神!?信じらんない!」
「いや、信じられなくても神なんでーす」
……紅茶、美味しいなぁ。このケーキに合う。
ギャーギャー言い合う2人の声を聞き流しながら、用意されたお菓子の数々をどんどん食べていく。
うん、言いたいことは沢山あるんだ。でもとりあえずクッキーだ。ケーキだ。美味しいぞ。2人はずっと話してばっかりで食べてない。もったいない。
「ねぇめっ……ローズちゃん!私おかしい?」
「ねぇローズちゃん、ボクちゃんと神だよね?」
「おかしいしちゃんとはしてないね」
●●
気を取り直して。
「神って普段何してんの?」
言い合いはとりあえず収束し、お茶を飲みながらシーナがそう言った。
「んー、最近はこの世界の修繕かなぁ。あんなことがあったし、メンテ必要っていうかぁ?他のは知らないけど」
「じゃあなんで今ここにいるの」
「気分転換?」
なんで疑問形なんだ。
「ねぇ、聞きたかったんだけどなぜ地球から私たちやゲームの設定なんて持って来ることができるの?地球の神が貰ってーって言ったから、みたいなのは聞いた気がするのだけど」
もう会わないみたいな雰囲気でお別れしたのにまたきた理由はわからないしもうそういうものなんだって思うことにするけど、こっちは気になるから知っておきたい。
神は複数いる。普通なら人の譲渡なんてしない。でもルスはした。普通ならってことは地球の神も普通じゃない。
「地球のと仲いいんだ。あ、これボク達の基準で、ね。暇な時遊びに行ってさ。一緒にゲームするの。ちょっと色々あって、日本によく行くんだ〜。だから貰うのも日本人ばっかりだし、世界に埋め込んだのも日本のゲームばっかり。あのね、乙女ゲームだけじゃないよ。色んな設定貰っちゃった。著作権?利益ないし……駄目?」
日本好きなのかな。色々あったってなんだろう。
著作権はともかく、この世界で出会った転生者は日本人ばかり(セネルに、シーナ。たぶんルッカもそうでしょ)だったね。
それに他の設定もあるって。探せば自分の知ってる物語が存在してるかもってこと?気になるな、探そう。動く推しを見たい。
「その設定ってさぁ、何?ゲームの登場人物を存在させてもその通りの環境が無きゃ設定の通りには進まなくない?」
「主役の先祖から設定は始まるからね、設定作りさえすれば後は生まれてくれる。周りの人とかさ。出来るだけおかしくならないように配置して。詳しくは教えられないけどね。だってローズちゃんとか、非人道的だとか言い出しそうだもん」
いやわかってるなら言わないでよ。でもそうだよね、ゲームとかの設定が元の人たちは、全部ルスに作られた人生を歩んでるってことでしょ?私はだいぶズレてるけど両親や村の人たちはそう言うことになってしまう。
ルスが神で、私たちを存在させてくれているのであってもそれはなんだか、嫌。村の人たちが私たちの存在のためだけのひとって言われたみたいで。
「でもそうじゃなきゃ今の私はいない……ルスのことに納得はできない。でも、文句も、言わない。じゃなきゃ生きてられないから……」
飲み込むしかない。村の人たちにはきちんと自我があったし、きちんと考えて暮らしていた。それを私が、作られた存在だからと怒るのは間違っている。
それこそ酷いことだし。
「ただそういう設定を与えても、その通りにきちんと進むかと言えば答えはNoなんだよね。NPCじゃないし、ちゃんと個人個人の思考を持った人間だから。この世界、“闇属性”へのあたりが強いでしょ?だからあの村の人たちもそうなっておかしくないはずなんだ。でもローズちゃんは村の中で迫害されなかった。シンくんがいたからでもなんでもなく、ボクがそう設定したからでもなく、あの村の人たち自身がローズちゃんを受け入れていた。セネルちゃんの場合もそうでしょ? 周りの人は受け入れなかった。ゲームならあそこまでのものはなかったからね。ヒロインだって残っていたし。……ボクは場を生み出しただけ。考えて、動いて、生きているのは人間たち。そんなに酷いことしてないと思ってるからさ。責めないで?」
語尾にハートマークが付きそうな調子で私へそう言うルス。今のルスは長く白い髪の儚げ美人の女性姿だ。女の私でも見惚れそうになるくらいの美人。あとすごくむかつくのは、ぼいんなこと。
だとしても、ね?
中身が中身だからなんとも言えないよね、この変な感情……。
「いい話風に言ってるけど結局さ、私とあなたたちは違うんですよ〜、生きさせてあげてるんですよ、崇めてください〜って言ってるのと同じだよねー。この神こわーい」
「だって事実だもん。いいんだよ、地球に戻してあげても。さすがに殺すなんてことしたらあの悪神と同じになるからしないけど……もちろん戻る時は君1人だけどね?大好きな女神様とはお別れだ」
「わーい神様素敵!さすがです!許して!」
結局どっちもどっちなんだよなぁ……。
ルスは、神としての立場を見せつけることはあれど、人の感性にとても近いものを持っているように感じる。ただ人の姿を持っているからってだけかもしれないけど。
何も言われずに会ったとして、神ですなんて思えるわけないもん、ルス。もっとこう、偉大な感じがなきゃね。
じゃあなんでチャラ男はあそこまでルスに執着していたんだろう……という疑問は残るんですが。
「君たちさぁ、ボクに対する扱い緩いよねぇ。この世界に転生させてあげたのボクなんだよ?色々助けてあげたのボクだよね?もっと崇めていいと思うなぁ」
「無理」
「無理だわぁ、雰囲気からしてこのままでいいって感じする。あ、強制送還はごめんです!」
「ショックですボク」
仕方ないと思う、だってルスだもん。そういう態度で接して欲しいなら、まず自分の態度から変えなきゃ。もう今更だけど。
ていうか帰りたいな。今何時だろ、そこまで経ってない気がするけど依頼終わらせないとだし、あんまり遅いと兄さんに怒られる。
勝手に消えてるのは私だし、ノアの様子も気になるし。
「そろそろ帰っていいかな。依頼の途中だし、兄さんも心配するだろうし」
「そうだねぇ、ショック抜けないし話逸らされた感凄いけど時間たってるし、シンくんうるさいから帰るか〜。ついでにノアくんも見ていこ」
「えぇ……寂しいけど私も結構やることたくさんなんだよね……何もなければついていけるのに……。残念。また女子会しよね!」
最後の最後までよくわからない会合だった。
次回!
『苦労人座談会』
全編通しての強い想いを彼らに語って頂きます!
お楽しみに!




