第27話 それでも心配なものは心配なんです。
転移先は外かと思ってたんだけど、室内だった。
「この死体どうにかしなきゃな。復活されたら困るし……」
「死体が復活ってゾンビみたい。……じゃなくて。この人たち最後に見た時よりぼっろぼろなんだけど……兄さん何したの?」
「そんなことない。まだピンピンだろ?壊すところ有り余ってるし……」
「捉え方がおかしいよ兄さん……」
床に折り重なって倒れる3人の男女。ルス教幹部ですね。
服や髪はボロボロ血だらけ、ピクピク動いてるから生きてはいる。治癒はしてたみたいで生傷は見当たらない。ルスがグロいって言ってただけあるよね。血の量半端ない。
「冗談はさておき。早くしないと下の余波きそうだしな。とりあえず門まで行ってナラルさんとアレクに現場説明しよう」
全然冗談っぽくなかった。
●●
「闇に破れ囚われるなど!くっ!殺せ!」
「このっ、もうっ!解くか、位置をずらすかしてくださいます!?胸が苦しいの!」
「ぜーんぶ失敗か。……洗脳する?」
様々な反応で騒ぐ幹部3人。
聞いてるだけでお腹いっぱい。
兄さんはナラルさんとアレクに今までのこと話してるし、これは私に話しかけられてるってことだよね。反応すべき?して平気?
「殺さないし胸の形崩れて欲しいし洗脳の仕方わからないし。くっコロってあれだよね、女騎士のエロ漫画導入みたいな……やだなぁ、なんで私こんなの覚えてるんだろ。ていうか胸が苦しいとかパワーワードすぎない?そんなの経験したことないんだけどどんな感じなの?で、全部ってどこからどこまで?神を降ろすのは成功してるでしょ、それでも全部失敗ってことはそれ以降のことってこと?」
ルス、大丈夫かなぁ。まだ私たちが生きてるってことは世界は大丈夫なんだろう。でもルスが負けてるのか勝ってるのかはわからないな。気になる。大丈夫かな。
でも私たちがルスのこと信じないとだもんね。大丈夫。ルスは大丈夫。
「胸への当たり強すぎませんこと!?親の仇みたいな目で見ないでくださいまし!」
こんなのがルス教幹部なんて信じらんない。
「胸の心配ばっかりしてる場合?私と君たちは敵同士、そういう捉え方してたんだけど間違いだったかな」
そう、忘れそうになってるけどこの人たちは最大の敵であり、乗り越えた敵。負けて捕まってるのによくこんな態度取れるよね。逆の立場ならたぶん殺されてたんだろうな。
私たちが命取りそうにないから舐められてるのかな。……確かに殺す気はないけどさ。
「そうだ!闇と馴れ合うわけがない!くっ殺せ!」
「……もう飽きたよそれ」
「ははーん、嫉妬ですわね?自分に無いからって嫉妬してるんですの?」
「……偽乳疑惑ある人に言われたく無いなぁ」
「神はどこ?他の者は?」
「教えないよ」
兄さんたちの話、そろそろ終わるかな?この人たちの相手飽きたな。私も早く探しものしに行きたい。必要ないものだとしても、何もしないより何か行動していたい。
ちょうどよく兄さんがこっちを見た。終わったかな?
「そいつら壊して平気だぞ?」
「なんでよ」
にっこり笑ってそんなことを言われた。
だからほら、後ろがうるさくなったよ……。やっぱり洗脳!殺せ!胸!闇!って。兄さんじゃないんだからそんなことしないよ、私。
「兄さん行こうよ、私たちも探しに行こう?何かあってからじゃ遅いし……」
「ああ、行くよ。ただ、さっきから向こうがやけに静かっていうか。もう少しだけ待ってくれ。魔力もちょっと心許ないし」
静か?向こうって、……どこだろ?うるさかった場所なんてないし、ここで音って考えたら待ちの方?
もしかして、ルスの方?戦闘音?でもここまで聴こえてなかったよ?それが正しいとして、静かってどういうこと。終わったってこと?全部?終わったのならルスが無事か確かめに行かないと。
「ルスの方?わかるの?終わったの?ルスは無事?」
「ああ。でもまだわからない。聴こえなくしたのかもしれないし。だから少しだけ待とう。様子見て、このまま何も無かったらそれはそれでいい。アイツが勝ってたら世界は消え去るんだろ。何も無いってことはルスは無事だ」
無事ならいい。そっか、何もないなら無事。そうだよね。ルスがチャラ男をどうにかしないとこの世界は消えて無くなる。
残ってるってことは、まだ大丈夫ってこと。
あと少しだけ…あと少しで終わりなので……!




