20 そろそろ真面目な話になりそうですか?
すみません寝てました。
奥に進むにつれ、ルスの表情がどんどん険しくなっていく。でも何も言わないから、この先にどんなことが待っているのかわからなくて怖い。手も足も出ないような敵がいたらどうしよう。
いや前任の神って言ってたな。手も足も出ないね。
「外に出るよ。ローズちゃんもね。いい?変に手を出さないで。死にたくなければ」
邪魔するな、ってことだよね。
大丈夫です、そんなことしません。神同士の戦いなんて手出しできるようなものじゃないでしょ?
影の外に出る。近くにいた否定派の人たちが私たちに気がついて声を上げる前に、兄さんとシーナが彼らを無力化させる。手慣れてる感じがする。セネルは一歩出遅れて悔しそうだった。
「……やっぱりわからない。全く察知できない。やだな、怖い」
私はルスの呟きの意味が分からない。これは独り言でいいんだよね?
わからないまま、ルスに着いて行く。わからないことは早いうちに聞いた方がいいんだけど、それを聞いて教えてくれるような雰囲気じゃない。
少し歩いたところで見張りのように立っている否定派の敵に遭遇。
「この奥ね!わかるわ!……飛び出したら、駄目よね」
見張りは6人。揃ってルスを狙ってきている。
すぐにシーナとセネルが反応して、鎮圧した。あっという間すぎて反応できなかった。慣れてるシーナに戦いたくてうずうずなセネル。そりゃ瞬殺だよね。
「無くて大丈夫か……?いや、どうにかさせるまでとりあえず保たせないと。ボクの世界が無くなる。よし。いーい?無理だと思ったら周りを見ずに即逃げること。躊躇うと死ぬよ。奴はボクと違って情なんてもの持ってないから。……大抵の神はそうだけど。ボクが特殊なだけだから。いいね?特にシンくん」
「わかってる。大丈夫だ。俺が無理と思えば全員連れて転移する。そんな危険な敵がいるなら、粘れば粘るほどローズが危ない。躊躇う理由なんてないよ」
わかってるならいいんだ、とルスは兄さんへ笑う。ノアの顔で笑う。複雑な気分。
「とりあえず否定派の人倒せばいいんでしょ。行こ」
「駄目なのよ、危険だからみんなで動かないと。一人で突っ走るとみんなに迷惑がかかるの。私わかったわ!だからね、」
セネルが言葉を続けようとした時だった。ルスが大きく立っていた場所から離れるように動き、そこに人が現れる。
チャラ男だ。
だけど何だろう、雰囲気が違う。チャラチャラが鳴りを潜めてる感じがする。
「ルス神……。御心を害するような行為をしてしまった非礼、お詫び致します。ではお詫びを兼ねてひとつ」
頭の中で警鐘が鳴る。チャラ男の言葉が終わる前に私は魔法を発動させていた。【相殺】、相手の魔法を打ち消す魔法。
ズドンッッ‼︎
と大きな音が次の瞬間発生していた。上手くいった、けどまだ終わってない。
「っ、影よ!」
相殺の魔法はそのまま、新しい魔法を発動させ影を操る。影はチャラ男の足を這い上り、体を覆い尽くす。
もちろんそんなものでどうにかなるとは思ってない。だからほら、すぐにチャラ男は転移して隣へと移動している。
「……【奇跡の栄光を】」
光が迸る。相殺に加えて影の結界を展開する。最初に魔法が衝突した時から兄さんたちも手伝ってくれてるけど、足りない。耐えられない。
「【創造主の盾】。管理オプション、当該個体の権限レベルを最低値に。……厳しめ?ああ、同化してるからか。反映遅いな」
ルスが手伝ってくれた。結界は保ち、私たちは無傷だ。
チャラ男を見るルスの目は険しい。ただの障害を見る目じゃない。とても警戒してる感じがする。チャラ男が危険な敵なのはわかってる。ルスにとっても警戒すべき敵なんだ。
「ああ……貴方でさえ否定なさるのか。それともするべきことだから?仕方のないことだから?あぁ、あぁ……ならばそうです、俺がすぐに、すぐにお救い致しますので……っ!」
チャラ男の視線はルスのみに注がれている。狂気を含んだ熱っぽい視線。
嫌そうにルスが首を降る。
「何を聞かされたのか知らないけど……ボクがいつ何から救ってくれって言ったの?勘違いしてるよ、やめてもらいたいな」
「管理者の立場ではそう言わなくてはなりませんよね。わかってます。大丈夫です。もう、進んでいるのです。俺だって、やってますから。片付けますね」
ルスの言葉が通じてない。チャラ男の言葉はこの場の誰も理解できてない。わかりそうなルスでさえ、ね。
「創造権限発動、対象物の消去を」
シン
【奇跡の一光】
チャラ男
【奇跡の栄光を】
両方テラス・ルア
唱えてるのはテラスルアでも、考えている魔法の中身、込めるものが違う……みたいな分け方してます。
あと、この世界でオプションとか言っても「??????」てなります。一章2話にてナルシストがシンに通じなかったように。追々色々設定は明かされますので、ご想像にてお楽しみください。




