第19話 だから緊張感が感じられないんですよね。
「神の器が!儀式は終わっているはずだ、中身は我らの乗り越えるべき支配者だぞ!向かえ!倒せ!」
結界を壊したからか、異物が入り込んだからか、私たちはすぐに見つかり戦闘になってしまった。
1番狙われるのはルス。ノアの見た目に中身は神、というのは否定派の中で知れ渡っているらしく、知らない侵略者じゃなくて、あれは神だ!って向かってくる。
「ボク人気者だなぁ。……奴に何を言われたんだか。君たちを殺したいわけじゃないからなぁ。例え殺そうと向かってきていても」
「何を!フルム様を追い落とした偽物の神が!」
フルム?新しいの出てきた。
これはアレだな、前任の神。ルスが倒したと思ってた敵。それが、否定派と組んでる。
「ボクは正しいことをしただけ。どこにいるの?ボクは来たよ、前のように倒してあげるから出てきなよ。今度は全部消し去ってあげるからさぁ」
ルスはほとんど動かない。真っ直ぐに歩んでいるだけ。だから、ルスの周りを守るように私たちが襲いかかってくる否定派の信者たちを対処してる。
「数が少ない。めが……ローズちゃん。本当に本当に申し訳ないんだけど、奥の方見てきてくれない?何かありそう」
「了解」
敵陣にいるにしては確かに敵の人数が少ないんだよね。想像と違うってやつ。でも内部に入り込んでたシーナが言うんだから間違いない。
影に入って、敵の妨害無く前へどんどん進む。
「真っ直ぐでいいのかな?」
脇道少ないけどね。細い道がいくつかあるの。どこに繋がってるんだろう。奥に何があるのか気になる。けどとりあえず今はこの大きな道を進まなきゃね。
と、歩みを早めた時だった。影の街を維持する魔力が大きく増える。
「うぁっ!?」
急に魔力を持っていかれて、気持ち悪い。意図しない魔力消費だからなのかな。なんか背筋がずぞぞ〜ってした。
なんだ、と思って周りを見れば、後ろにルスたちがいた。
「入れたね。これで邪魔無しに進める。ごめんね、ここの負担は負えないや。大丈夫、ローズちゃんの魔力量なら賄えるから」
ルスの力で入ってきたのか。もしかしたら、試したら誰でも入れたのかもね。やったことないからわからないけど。
みんなが戸惑っている中、ルスはそれを気にすることなく奥へと進み始めた。
「ローズの、影の中……なんだよな?」
「そうだけど……」
「思ってたより明るい。どこでも行けるじゃないか……転移みたいな感じだな」
そうかもしれない。
転移は好きなタイミングで指定の場所にどこでも行けるけど、代償がある。ここは影のある場所ならどこでも行けて代償もないけど、そこまで自分で影の街の中を歩いて行かないといけない。
いいところと悪いところが両方ある。
こっちの方が転移より使い勝手悪い気がするけどね。
「女神の影の中……見て回りたい……けどルス追いかけなきゃ。もうあんなとこまで行ってる!」
「こんな風になってるんですね……凄いです!あっ、待ってくださいシーナさん!」
「私あのままで良かったのに。これじゃ戦えないわ。でも、でも仕方ないものね?」
「文句を言いながらも周りに合わせるお嬢様。そうです、集団行動では自分1人の意見を押し通してはいけませんからね」
「……帰りたいなぁ。アレクにぃと交代したい……」
思い思いにみんな色んなことを言いながらルスよ後を追う。
敵陣で戦っているという緊張感が感じられない。逼迫感がないよね。……こんなもんなのかな?
人数が多いからか、魔力消費がいつもより早い。まだまだ無くなる気配はないけど、あんまり使い過ぎると敵陣真ん中で動けなくなるとかありそう。
「兄さん、ルスを追いかけよう」
「そうだな」




