第18話 結界ですか。
「向こうが行動に出た。動いた。ねぇ君たちは、ボクがただ言う通りに動いてくれる?命、預けてくれる?」
「向こうって……その敵とやらか。そんなに戦力差がある相手、どこに残って……」
「違う、違うんだ。君は“ボクの敵”と戦おうとしてる。絶対にやめて。敵わない。奴はボクが仕留める。君たちは残りの否定派を対処してほしいな」
後ろを振り返ることなくずんずんと進むルスに早足で着いていく私たち。
あの薄暗い通路の、4つに別れた場所に転移した後ルスは迷うことなく右から2つ目の通路へと入っていった。否定派のところって言ってたっけ。
「それが最善なら私は従う。世界がかかってるなんて実感できないし、どれほどのものなのかまだ全くわかってないけどルスが勝てばノアは戻ってくる。なら何でもいい。従う。どうすればいい?」
「わかってほしいけど従ってくれるのは嬉しいな。じゃあとりあえず影に潜って奥の様子先に見てきてくれる?もうボクじゃここ全くわかんない」
「ん」
兄さんが止めようとしてか、口を開きかけていたのを見たけどそのまま私は影に入った。
ルスの歩みは早い。先に見に行くなら走らないと。
真っ直ぐに続く道を走っていく。でも、10メートル行かないくらいで進めなくなった。結界が張られているらしい。
いつもなら重くなるくらいで入れるんだけどな。術者が強いのかもしれない。壊せるかな。やってみよう。
結界に触れ、魔力を注ぎ込む。私の影の街に他人が干渉すると維持がし辛くなる。なら他の人も同じはず。
ルスがやっていたように、干渉して、掻き混ぜて。どんどん魔力を注ぎ込んでいく。しばらくやっていると、結界が脆くなってきたのがわかった。それでもまだまだ通れない。岩から少し弾性のある素材に変わったような感じ。
『あれ。ローズちゃん、いる?……いるか。そのまま続けて。悪いけど、ボクの代わりに他の人、ここに結界あるから壊すの手伝って。ローズちゃんが今やってるよ』
そんなに距離離れてなかったから、みんなもう来ちゃったみたい。
『女神と共同作業!やります!』
『俺がやる。シーナより干渉しやすいだろ』
『何人でもいいよ。ちなみに相手は5人がかりでやってるよ。魔力の発生源が5つあるから。多い方がいいんじゃない?』
上で話してるのを聴きながら、魔力流しは続ける。無駄に流してるだけじゃない。ちゃんと干渉して混ぜてる。
発生源、か。発生源なんてわからないけどそこから相手に何かできないかな?探ってみよう。わかるかもしれない。
『……濃いな』
『5人で結界維持なんてしてればそりゃ濃くなるでしょ。私たちのあそこにかけた結界もそんなもんじゃない?』
わかんないな。まあ、この結界を作り出してる人がいるんだからどこかしら魔力だか魔法だかで繋がってる人は居るはずなんだけどね。兄さんならわかるのかなぁ。
面倒になってきた。
このまま吸収使ったらどうなるんだろう。干渉したまま、全部吸い込む。
できそうじゃない?
いや、でもそうしたら干渉してる兄さんたちにも被害が及びそう。するなら伝えてからにしないとね。
「吸収しちゃうから一旦やめて」
顔だけ出して、そう言う。
どうしてだかすぐにわかってくれたようで、2人は何も言わずに行為を中断した。
「ああ、いいかもね」
ルスの言葉を聞き、影の中へと戻る。外でもよかったけど、なんとなく。
結界へ触れ、吸収の魔法を発動させる。
「おっ、いいね、きてる」
成功。結界の維持に使われてる魔力がどんどん薄くなっていってる。
途中で兄さんが薄くなった結界を壊し、吸収は中断された。




