第17話 あ、そんな大きな敵の話になるんですね……。
世界の存続と、世界の漂白。
残すか、消すか。
いや残す一択だよね、これは。
「残すに決まってる。漂白って、全部消すんでしょ?そんなの嫌」
「ま、普通そうだよね。……でもねぇ、ボクの因縁の相手、しぶといよ?神に肉体はないから倒すのも大変だった。それでも消しきれてなくて残ってたわけだけど。ほんの少しでも残したら駄目なのかな……。あれもないのにどうすれば……」
それでも、私死にたくないし、無くしたくないものたくさんある。
……ん?
あれ?
今、神とか聞こえた気が。言い方的に敵は神っぽいんだけど。ルスって神じゃないの?他の神が敵?
……無理ゲーでは?
「神様が敵なの?えっと……ルス、様も神様、なんだよね?他にもいるの?喧嘩してるの?僕たちが敵う相手?」
ルフトも同じことを思ったみたい。
普通はそれ聞いたら無理だって思うよね。信仰はしてないとはいえ、目の前に神(仮定)がいる状態でその神に神が敵だよ、なんて言われたら。
「ボクがいるから大丈夫。ただ、ありがとう。キミたちに向こう側に付かれるとだいぶ辛かったから。神とはいえ、今は全力を出せる状態じゃない。ローズちゃんとも約束したしね。ノアくんがちゃんと戻れるように。確率の高いように。だからこの体を必要以上に傷つけることもできない。今ボクが全力で力を振るったらね、この体どんどん壊れていっちゃうの。全力は出せない。敵たくさん。無理。終わり。ってね。キミたちはただ、周りの者を対処してくれればいいよ。奴との決着はボクがつける。ボクの不始末だからね」
優しい表情でルスはそう言った。
ノアのこと、考えてくれてるんだ。よかった。吐いたことはなかったことにしよう。
「どうしてそんな敵がいるの。何をしたの」
「ひーみーつ。色々あるんだ、神も。神同士の交流とかすんごい面倒だよ?世界どこまで発展させました〜こんな生き物存在させてます〜って。あは、地球の……って言わない方がいい?ウン。ま、ボクは新参者でも前任押し退けてるから触れないようにしよう、みたいな扱いされてるんだよね。爆弾的な。いつ自分が倒されるかわからない!ってさ。あほくさ」
たくさん敵作ってそう。
前任押し退けてるって、倒したってことだよね。話を全部まとめると、ルスが前任の神を倒し損ねて今その神が覚醒し、敵となっている。かな。
秘密でもなんでもない。今までルスが言ってたことまとめたらわかってしまう。秘密にする気なくない?本当は知ってほしいのか。
「ねぇなんなの、もう目の前だったのに」
「……っ、だから俺もわからないって言ってるだろ。ノア……、じゃなくて、ルス神に聞けよ。言われてきただけなんだから」
「戦えなかったわ……」
兄さんたち帰ってきた。無事だったようで何より。
「おかえり、無事だね。シンくんありがとう。危なかったから。シーナちゃんたちは、ボクの敵の陣地に事前情報なしで入り込もうとしてたんだ。ボクの敵、で危険度は勘付いてほしいな」
神だもんね。
私たちじゃ敵わないよ。世界の管理者だよ?
「事前情報は何なのかしら。教えて。私、戦いたいの。どうすれば戦える?」
「うん、突っ込んだら死ぬよ。周りをきちんと見て戦えるようにならないと、戦えない。相手との戦力差を分かった上で戦えるようにならないと。何か知っただけで敵う相手じゃない。敵は、……ぁれ?…………何で……敵、は。あはは……どうしよ。何が最善手?……あ、やだ、駄目、駄目、だめ、やめて、お願い、壊さないで…………っ、ごめんキミたち、ローズちゃんとルフトくんは協力してくれるって言ったからキミたちも手伝ってもらうよ」
最初はセネルに注意しているような言い方だった。だけどそれは途中で変わり、どこか目の前じゃない場所を見つめ悲痛な表情をしたと思えば、私たちへと向き直りそんなことを言った。
答える間も無く、私たちは転移した。




